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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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交渉と昼食

No74

交渉と昼食




 冒険者ギルドで受けた依頼の倉庫整理で新事実が分かった。その原因はサッちゃん! 名をサーシャといいルインマス冒険者ギルドのギルドマスターだと、アンリエッタさんは言った。


 その新事実を聞いた俺は、アンリエッタさんに依頼報酬の交渉を持ちかけた。


 依頼報酬の内容は【必要な時に必要な魔導具を必要なだけ。魔導具作成依頼は無料。ただし、必要な素材はマダラが提供する。最後に、食事の提供で魚料理を望む】


 と、この内容をアンリエッタさんに伝えた。


「なかなかな報酬ですよ? セイジロウさん。さすがにコレは....食事の提供は別に平気ですけど、あと、マダラちゃんが素材をくれるのも....でも、魔導具の必要な時に必要なだけって.....」


「もちろん、無理を言ってるのは承知してますし、金額換算したらいくらになるかは分かりません。もしかしたら、金貨数枚かも知れないですし、何十、何百....何千かも知れません。まぁ、そこまでにするつもりは今はありませんよ」


「ですが....もう少し何とかなりませんか?」

「譲歩はしてますよ.....マダラが。ですが、これでは余りにもアンリエッタさんが可愛そうですし得がありません。せいぜい、倉庫整理の時にちょっとだけ触れるくらいです。しかも、私の許可があればの話ですが」


 やべぇー! アンリエッタさんが涙目だし、俺はメチャクチャ楽しいけどっ! アンリエッタさんから見た俺って悪魔に見えるんだろうなぁ.....でも、悪魔には甘い汁があるんですよ?


「そこで、私からマダラにお願いをしました。そして、マダラもアンリエッタさんが可愛そうだと言ってました。なので、こうしてはどうかと言ってましたよ」


「ふぇ? マダラちゃんが....わたしを気遣ってくれたんですか?」

「はい、マダラがアンリエッタさんを可愛そうだと言ってました。そして、こう言ってましたよ......【食後の休憩時間なら触ってもいい】と」


「わぁーー!マダラちゃーーん!ありが--」

 パンッパンッ!!


 俺はすぐに柏手を打ちアンリエッタさんの暴走を止めて話を始める。

「ただし、こちらの報酬条件を飲むならです」


「はいっ! はいはい! 飲みますっ! よろしくお願いしますっ!」


 はい、あざーース! アンリエッタが釣れたドーー!


 シバスさんがアンリエッタさんの後で、手を額にあて顔を左右に振っていた.....すいません、シバスさん。悪いようにはしませんから.....多分ね。


 その後は、アンリエッタさんに依頼内容と報酬の内容を改めて明記してもらい、アンリエッタさんのサインと俺のサイン、そして、立会人としてシバスさんのサインを明記してもらった。


 コレを後でギルドに提出して再手続きをしてもらう。


 何だかんだ話をしていて時刻も少し早いが、昼食にしようと提案した。昼食が出来るまでの間と、昼食後の休憩時にマダラを触っていい旨をアンリエッタさんに伝えると、


「わぁーい! マダラちゃーん!」


 と、かなりのはしゃぎっプリだ。ちなみに、シバスさんにアンリエッタさんの年齢を尋ねたら○○○歳だった。マジで異世界ファンタジーだったよ....


▽△△▽▽▽△▽


 アンリエッタ邸での昼食は期待以上だった。昼食は、焼き魚にホーンタロスのステーキ、新鮮な野菜、果汁ジュース、野菜スープなどが大きなテーブルに並べられた。


「これは....スゴいですね。どの料理も美味しそうです」

「はい、どれも美味しいですよ。うちの料理人が腕を振るいましたから....さっ、いただいて下さい。マダラちゃんもたくさん食べてねぇ!」


 俺とマダラは、アンリエッタ邸の料理人が腕を振るった料理を食べることにした。


 マダラを見ると、ホーンタロスのステーキ肉にかぶりついたようだ。なら俺は魚料理から行こうか....


 "餌付け亭" で食べた魚料理を脳裏に思い出して期待してしまう。目の前にある焼き魚もあの料理のように旨いのだろう?


 パクリッ......?!


 うまーいっ! 魚肉を口に入れて咀嚼すると、今まで食べてきた魚料理は何だったのかと思うぐらい旨い。もちろん、前の世界での魚料理だよ。


 まずは匂いだ。魚特有の青臭さや生臭さが限りなく少ない。代わりに焼き魚特有の香ばしい匂いに食欲をそそられる。


 ナイフとフォークで魚に切れ目を入れて魚肉を切り裂き、その身を口に入れ咀嚼すると魚とは思えない肉汁が溢れだし、同時に海の香りが口内から鼻を通る。


 "餌付け亭" でも魚料理を食べたが、なぜこんなにも魚肉から肉汁が溢れるのか?そして、魚とは思えない程の旨さは何だろうか? 食べながら考えるがすぐに考えを放棄した。今は、食事に集中しよう。


 次に食べるのがホーンタロスのステーキだ。こっちは見た目通りだと思いナイフとフォークでステーキ肉を切りソースを絡めて口に入れる。すると、数回の咀嚼だけでステーキ肉がとろけて無くなってしまった!


 何とも驚きだった。まるで最高級牛肉を食べたような....いや、それ以上かも知れない。今度は、先程より厚めに肉を切り口内に運んだ。


 ゆっくりホーンタロスの肉を噛みしめる。最初に肉汁が口内に溢れるがすぐに喉へと流れ込む。そして、噛むたびに消えていく、溶けていく肉を必死に咀嚼する。肉特有の味を感じるが、その中に果実の瑞々しさも感じた。ステーキ肉を食べてるとは思えないような肉だ。


 テーブルに用意された新鮮な野菜も美味しかった。見た目からは想像できない色や形に目を見張り食すと、口内に広がるのは瑞々しさに甘さと酸味が絡みあい、野菜自体の旨さがあった。


 甘酸っぱい野菜があれば、何故か香ばしく感じる野菜もあった。さらに、果実を食べてるような甘さの野菜も。どれもハルジオンでは食べたことが無い物ばかりだ。


 野菜スープも旨い。どんな風に調理されたのか分からないが、野菜スープを口に流すと魚の味と肉の味が広がる。本当に野菜スープなのかとアンリエッタさんに聞いたが、

「はい、野菜スープですよ。美味しいですよね」

 と、普通の回答が返ってきただけだ。


 食後に果汁ジュースを飲む。これは普通....まぁ、普通だと思う。数種類の果実を絞り混ぜ合わせたものだと俺でも分かる。以前にも飲んだ事があったからだ。


 自分の食事ばかりに夢中になっていたのに気づきマダラを見るが、すでに食事を終えたのか前足に顔を載せて寛いでいた。


 マダラが食べたと思われる料理皿を大量に片付ける給仕の姿が目に入った。どうやらマダラも昼食には満足したようだと俺は思った。


「アンリエッタさん、美味しい昼食をいただきありがとうございます。料理人の方達にもお礼を伝えて下さい」


「はい、分かりました。伝えておきます....そっ、それで食後の休憩にマダラちゃんを...」


「はい、分かっていますよ。マダラに触りたいんですよね。裏庭でいいですか?」


 食後は裏庭に向かいアンリエッタさんはマダラの毛並みを触りつつ交友をふかめ、俺はメイドのメイリーンさんが入れた紅茶を飲みながら、執事のシバスさんに倉庫整理の話を聞いていた。

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