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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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塩漬け依頼と内緒話

No71

塩漬け依頼と内緒話




 "餌付け亭"でマダラの朝食を受け取ってから、メイン通りを歩き冒険者ギルドに向かった。

 朝からすでに人が多く見られる。目立つのはルインマスの街に住む住人に船乗り人、商人、冒険者達、着用してる服はハルジオンの住人とは違い全体的に薄着に感じるのは気温が上がってきてるせいか....


 歩きながら街中の服装を見ながら考える。


 冒険者達はあまり変わらないが、肌着は薄い服を来てそうだな。俺も、何着か買おうかな? 交易が盛んだから服もそれなりにあるだろうし.....


 お上りさん丸出しで軒を連ねる露店や商店を横目にしながら冒険者ギルドについた。

 昨日、手続きをしてくれた受付嬢のエミリアさんの列が空いていたので要件を伝える。

「おはようございます。実は、従魔の事について聞きたいのですが?」

「はい、伺います。何でしょうか?」


「従魔を連れて歩いても大丈夫ですか?前の街では少し....迷惑はかけてないのですが、あまり印象は良くなくて...」

「そうなのですか....ルインマスでしたら平気ですよ。知っているかは分かりませんが、マーマン種やバードリ種、他にも召喚師の方で従魔を連れてる人もいますから」


「そうですかっ! 良かったです」

「ですが、注意は必要になりますよ? 従魔が起こした問題は従魔登録者の責任になりますから」


「はい、分かってます。それと手紙を出したいのですが....」

「分かりました....配達先と料金が必要になります」


 フローラさん宛の手紙をエミリアさんに渡し料金も支払い手続きをしてもらった。


 俺は依頼板に向かい今日の仕事を探す。


 冒険者ギルドの依頼提示板は、ランク毎に分けられて貼られている。俺は、Dランク冒険者だからG、F、E、Dランクまでの依頼を受ける事が出きるのでそれぞれを見ていくが....あまり良さそうなのはなかった。


 内容で多いのが漁船場での手伝いと漁猟の依頼、あとは、倉庫整理や採取系、討伐もそこそこある。しかし、どれも目を引くのはなかった。


 俺は影の中に入ってるマダラに思念で話かけた。

『どれも魅力は少ないかな....マダラは討伐系をやりたいか?』

『ワレはセイジロウに任せるが、たまには討伐依頼を受けてもらいたいのぅ。あとは、地形の把握は済ませたほうがいいじゃろ』


『そっか.....地形に関しては夜にマダラがやってくれ。隠密的な行動は得意だろ?』

『ふむ、わかった』


 それにしても.....清掃や整理系が目立つな....新しい街に来てまで掃除とかしたくないし.....エミリアさんに聞いてみるか....



 受付嬢のエミリアさんの所に向かって他に目ぼしい依頼がないか聞くことにした。

「エミリアさん、実は依頼提示板に張り出されてない、または面白そうな依頼は無いですか?」


「えっ?....何か気に入らなかった事がありました?」

「いえ、そうじゃ、無いんですけど.....せっかく新しい街に来たので珍しい依頼とか無いかなぁと思いまして....」


「そうですか...う~ん....」

 と、考えながら資料棚から資料の束を出して捲り始めた。


 お手数かけてすいません。ワガママな冒険者だと思いますよね? いや、分かってますけど....まぁ、食わず嫌いみたいな感じ何ですよ...はい。


 少しの時間を待っていると、

「コレなんてどうですか? "倉庫整理(魔導具)昼食あり(魚多め)!! 報酬は魔導具、または魔導具製作依頼費半額!!" いかがですか?」


 いや、何だろう....あまり良い予感はしないんだけど....


「他にはありますか?」

「他はですね....."漁猟の助手を求む! 報酬は昼食(魚介類)食べ放題! ついでに、お土産有り(魚介類)!!" はどうでしょう?」


 何だかなぁ.....魚、押してくるよな....


「もしかして、報酬は魚ばかりですか?」

「えぇ、ほぼそうですね。金銭の報酬じゃない物を依頼板から外してますから....金銭が欲しい冒険者達は依頼板から依頼を受けますが、魚介類を欲しい冒険者は、こちらの依頼を受けますね」


 俺がそれを知らなかったのは、ルインマスの街に来てひが浅い事と、この"報酬が魚介類" の依頼は特殊依頼扱いな為に、表たって依頼板に張り出す訳にはいかないのが理由だったと受付嬢のエミリアさんは話してくれた。


 さらに、この特殊依頼はルインマス特有であり、"報酬が魚介類" ばかりの依頼を冒険者達が受けてしまうと貨幣が動かず、さらに魚介類の値付けが不安定になり、街中及び海上貿易にも下手したら支障が出てしまう事にもなりかねないが為に取られた処置だと。


 話が壮大になりすぎかとも思うが、内陸で高級かつ貴重な魚介類がただの倉庫整理やお手伝いで手に入るとすれば、情勢が傾きかつ思わぬ火種にならないとも限らない。


 もちろん、魚介類を保存または腐食を軽減する魔法や魔導具がある為に考えすぎもあるが、報酬が金銭でない特殊依頼は基本的に張り出すべきではないと決められたわけだ。


 「--そうだったんですね....まぁ、確かに"珍しい" 依頼ですね。分かりました、では倉庫整理の依頼を受けます。宿で食べた魚料理が美味しかったですし、報酬も魅力的ですから。あとギルドの食事処の給仕依頼も受けます。金銭も欲しいですから」


「分かりました、ありがとうございます。....ですが、セイジロウさんならもっと報酬が高い依頼も受けれますよ? 討伐依頼なら従魔がいますし.....」


「まぁそうなんですが、私自身が若くないので、あとはのんびりしたい性格ですから...ハハハ」

「また、返答に困る返事ですね....では、依頼を受理します。よろしくお願いしますね......それと、頑張ってくださいっ!!」


 えっ? 何その、フラグが立ちましたよ的な掛け声.......うわぁ、マジすか.....


△▽△△▽▽△


 受付嬢の内緒話


 セイジロウが冒険者ギルドで依頼を受理して出ていったあと、受付嬢のエミリアと隣の席に座る受付嬢がこんな話をしていた。


「ちょっとエミリア....聞いてたわ、【あの依頼】 を受けさせた事」


 なんとも怪しい言葉が出てきた。【あの依頼】 さて、どの依頼なのか耳を澄ませて聞いてみよう。


「えっ....聞いてたの?....でも、選んだのはセイジロウさんですよ? わたしはただ、こんな依頼がありますって言っただけだし、受けさせたなんて人聞き悪いよ」


「だって【あの依頼】 は、ここ何年も塩漬けでしょ。たまに、受ける人がいてもすぐに違約金を払って依頼を解除しちゃうし」


 どうやら、セイジロウが受けた依頼は塩漬け依頼だったらしい。その依頼をサラッと言葉巧みに、意味ありげな風に説明する受付嬢エミリアは、詐欺師に転職した方が良いのでは?。


「それは、受けた冒険者の役不足だったからよ。しかも、受理したのは冒険者の意思だし。わたしは、ただ選んで提示しただけで進めてもいないし、強制もしてないよ。冒険者は自己で責任を取るんだから」


 何とも、物は言いようである。だが、冒険者にはすべてにおいて自己責任なのは言葉通りである。


「あなたは....今さら言ってもしょうがないか...あのセイジロウって冒険者が出来るとは思えないけど」

「いえ多分、依頼は完了するよ。あの人は他の冒険者とかちょっと違う気がしたから」


 エミリアと話してる受付嬢はその言葉を聞いて、セイジロウの資料を手に取り確認した。

「えっ?....でも、資料では......まぁ、依頼達成率はかなり高いわね。それに、要所の砦の立役者か....でも、黒白狼だっけ...従魔の力が大きい感じがするけど?」


「そうかもしれないけど.....知ってる? その黒白狼ってマダラって言うんだけど、召喚獣らしいよ? さらに、ハルジオンのギルドマスターの懐刀らしい....みたいな?」


「はっ!?.....ちょっと、あなたどこでそんな情報を仕入れたの! 資料に記載されて無いわ.....」

「それは秘密よ....冒険者の情報漏洩は厳守なんだから」


「いや、わたしに喋ってるからね。すでに、漏洩違反だし、冒険者を詮索するのも許可いるから....どうせ無許可で調べたでしょ?」


「........秘密よ」


 とんだ受付嬢も居たようだ。冒険者ギルドの受付嬢と言えば、容姿端麗で冒険者達または依頼人からも人気が高いギルドの花形だ。


 その受付嬢がまさかこんな....だが、見方を帰ればかなりの特殊な受付嬢だ。セイジロウがルインマスに着いたのは2日前だ。たった2日でマダラの事とハルジオンのギルドマスターとの繋がりを知ったのだ。


 そう考えるとその情報収集力は神業かと思わせる程だ。一介の受付嬢と思うのは無理がある。


「......それと、依頼提示板の依頼説明が不足してたわよ。"ギルドの食事処が開店休業状態" を説明してないわ」


「だって依頼書にはそんな記載は無かったよ? ただ、手伝いが欲しいって書いてあるだけだし、報酬も大銅貨7枚なら悪くないじゃん?」


「あんた、その依頼の注記を教えなかったでしょ?」

「注記? そんなのどこにも......別紙参照? 別紙ってどこにあるの?」

「アレよ」


 エミリアと話してる受付嬢が指差す方向を見てみると、その依頼書が貼られていた場所にもう1枚の依頼が貼られていた。どうやら、その依頼書は"2枚1組" だったみたいだ。


 エミリアが席から立ち上がりもう1枚の依頼書を読むと、顔を青くしながら席に戻ってきた。

 そのもう1枚の依頼書にはこうかかれていた。


 【現在、食事処は開店休業状態である。なので報酬は後払いになる。なお、料理人も給仕もいない状態なので、この依頼を説明する時に忘れずにする事】



「....どっ、どうしよ? 普通、2枚1組の依頼なんてないよ? しかも、わたしが知らないなんて....」


「それは、あなたが面白い半分に受付嬢をしてるからよ。昔は流行ってたらしいけど、今ではあの通りよ。別に流行らなくても問題は無いけど、ギルドとしては食事処は収益の1つだし」


「知ってたなら教えてよー! そんな意地悪しなくて良いじゃんっ!!」


「別に意地悪した訳じゃないわ! わたしだって知らせたかったけど他の冒険者の相手をしてたし、気づいたのだってあのセイジロウって冒険者が帰ってからだし....大体あなたが依頼内容を把握してないのが悪いのよ?」


「だってぇ....うぅ....どうしよ? わたし、罰則かな?」


「とりあえず夕方にはセイジロウって冒険者が食事処に来るから、そのときに話してみたら? 違約金に関してはあなたが出せば丸く収まるんじゃない?」


「う~~....わかった。そうしてみるよ....」

「なら、コレに懲りて心を入れ替えて仕事に励むのね! 副ギルドマスター様!」


「も~~、シンちゃんはやっぱり意地悪だよー!!」


 なんとルインマスの冒険者ギルドの副ギルドマスターだったとは......何ともはや、だが、冷静に考えて見てれば思い付く点は幾つかはあったが.....


 セイジロウもとんだ依頼を受けたようだ。【あの依頼】 とは一つではなく二つの依頼をまとめて言っていたとはの。


 まぁ、面白いから良いがの。

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