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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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理想と現実と笑顔

こんにちは、紫煙です。ここまで読んで下さってありがとうございます。ブクマ、評価、感想はわたしのモチベーションにもなります。随時、お待ちしてます。

No65

理想と現実と笑顔





 マダラについての噂を聞いてから数日が経つが良い考えは浮かばなかった。今夜は、フローラさんとの夕食の約束があるのに気持ちは沈んだままだ。


 フローラさんとの待ち合わせはギルドの食事処だ。陽が暮れる少し前だからそろそろ身だしなみを整えて向かうか....


 冒険者ギルドにマダラを連れて歩き向かった。中に入りフローラさんを探すと、私服姿のフローラさんを見つけた。


 今夜のフローラさんは、白のブラウスに青色のグラデーションがかかったスカートで涼やかな服装だった。


「フローラさん、お待たせしました!」

「ふふ、待ってないわよ。さっ、混み始める前にいきましょうか、セイジロウさん」


 フローラさんと創作料理店ノクティスに向かって歩きはじめた。行きながらに最近の近況を互いに話し、季節の話やマダラの話、フローラさんの服の話などをした。


 すでに自分の中で馴染みの店となってるノクティスさんの店の扉を開けて店内に入る。マダラには店に入る前に影の中に入ってもらった。


 扉のドアベルが鳴ると同時にシーナさんの声が俺達を出迎えてくれた。

「いらっしゃーい!!...っ、フローラ達ね!今日も仲良しね、テーブルはこっちよっ」

 と、最初のジャブを受け流し案内された席に腰をおろす。


「今夜は何にする?オススメはキリングスネークの香草焼きとローストポークよ。あとは野菜スープかしら?定番メニューもあるわよ」


「わたしは、ローストポークとスープにするわ。セイジロウさんは?」

「私は、キリングスネークの香草焼きとスープ、それと赤ワインを。フローラさんは飲ますか?.......じゃ、赤ワインを2つお願いします」

 フローラさんの赤ワインも一緒に頼んだ。


「分かったわ、ではごゆっくりね」

 注文を受けたシーナさんはすぐに移動した。少しして、ハンナさんが赤ワインを2つ用意してくれた。しばらく、フローラさんと話をしてると、注文した料理をエンリさんがテーブルに並べてくれた。


「料理も揃いましたから、いただきましょうフローラさん」

「はい、いただきましょうか」


 俺はキリングスネークの香草焼きから食べる事にした。名前を聞くと手を出しにくい料理名だが、こっちの世界では至って普通だ。


 見た目はチキンソテーにハーブを刷り込んで焼いた風に見える。キリングスネークの肉にナイフを入れると程よい固さだ。特に強い抵抗は感じずに肉が切れる。


 切り分けた肉に付け合わせのソースを絡め口に入れる。すると、最初に感じるのはソースの酸味だった。数種類の果実を合わせて作られたソースとキリングスネークに刷り込んまれた香草と程よい肉汁が口の中で合わさり絶妙な味を楽しむ。


 特に骨があるとか筋があるとかは無く、まるでチキンソテーを食べてるような感じだ。2口目は、ソースを絡めずに食べるとさらに感じた。臭みもないし、味は淡白だがサラッとした肉汁に塩と胡椒に香草が口の中に広がる。


 次は野菜スープだ。こちらも一口飲むと驚きで目を見開く。スープの具材は少なく見えるが、スープの味は多数感じる。数十種類の野菜に塩と胡椒を始め、たくさんのハーブの味が合わさりきちんと1つの味を作り出していた。


 分かる味もあれば初めての味もある。舌の上でスープの味を確かめようとするが、胃が早くよこせ! と催促するかのように、口の中のスープが喉の奥に流れ込み胃へと運んでしまう。


 そんな料理を食べつつ、フローラさんが注文したローストポークの味を聞き想像しながらも、キリングスネークの香草焼きと野菜スープを食べる。


 夢心地の食事に一息付き、フローラさんと自分の赤ワインの追加注文をしてから今日の話の本題に移った。


△▽▽△▽▽△▽△


 俺は、先日ラム爺から聞いた話をフローラさんに話し、どうすれば良いのかを相談した。

「--それで、少し上の空だったのね。セイジロウさんが何か考えてる、悩んでいるのは何となくわかってたわ」

「....すみません、なるべく表には出さないようにしていたんですが....」


「別に責めてる訳じゃないわ....ただ、ちょっとだけ寂しさを感じただけよ。今は、話してくれて嬉しく思うわ。わたしが悩みを打ち明けても良いと、セイジロウさんの中で認められたんだから」


 ああ、こういうとこがフローラさんの魅力の1つだよな。女性は、顔が可愛く美人であるのも魅力だけど、内面的に魅力を感じる事が出来る人は少ないからな...


「えぇ、フローラさんだから悩みを話しました。私の中でフローラさんは大切で頼りになる女性ですから」

「....面と向かって言われると....少し恥ずかしいわね..オホンっ。それで、街中で上手くやる方法というか行動を悩んでるのね?」


「はい。マダラの見た目が怖いのも街で暮らす人からの視線も今では分かります。そういう視線をなるべく少なくしたいと私は思ってます。なんというか...自然な感じが良いんです」


 今までは意識しなかったけど、街中でマダラを見る視線や俺を見る視線はどこか差別的に感じるものもあった。前の世界でも見た目の差別や価値観の差別はあったが、見たり聞いたりすると嫌な感じだと、心の中でずっと思っていた。


「セイジロウさんは、きっと誰もが楽しく笑顔が溢れる街がいい、とそんな風に考えてる。それに近い事を思ってるのは分かるわ。わたしも笑顔が少ない街よりそっち方が良いわよ。でも、世の中はそんなに甘く優しくはないとも思ってるわ」


 俺もそうだと分かる。でも、初めて来た世界、今までは想像でしか無かった世界に俺はいるんだ。そんな世界に来てまで厳しい現実を感じたくない。もっと夢と希望が溢れるファンタジーだと.....


「でも、セイジロウさんがソレを受け入れる必要は無いわ。あなたがそうしたいならやればいい。誰もが楽しく笑顔が溢れる街が良いなら、わたしは一緒に手伝うわよ!.........だから、そんな悲しい顔をしないで....そんな、冷たい涙を流さないで....わたしはあなたの笑顔が見たいわ。あなたもわたしの笑顔が見たいでしょ? なら、笑って....一緒に笑いましょ?」


 俺は笑えてるだろうか?


 俺の涙で濡れた顔はちゃんと笑えてるだろうか?


 俺の目の前にいる女性の笑顔と言葉は生涯忘れる事はないだろうと思った。

今作は、カクヨムサイト、アルファポリスでも掲載してます。改稿版ですが、内容には変更ありません。誤字、脱字を修正したものです。ここまで読んで下さりありがとうございます。面白いと思いましたら評価をよろしくお願いします。

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