シーバル遺跡調査・1
No55
シーバル遺跡調査・1
フローラさんとの買い物の日から数日が経ち、錬金術ギルドから正式に冒険者ギルドを通して指名依頼が入った。
依頼内容はあの遺跡調査だった。俺は、その以来を承諾して錬金術ギルドに返事をした。
2日後に遺跡に向けて調査隊の同行を言い渡された。
そして現在、街の門で出発を待っている。
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ハルジオンの街の近くにある遺跡に向かって調査隊を乗せた馬車は、街道を走っていた。通常なら徒歩で行軍するのだが、遺跡での詳しい調査を行う為、資材や荷物、食料が多くなった為だ。
徒歩だと、約1日で着くが今回は馬車を借りている。さらに、街道の脇から遺跡がある場所までの道をすでに錬金術ギルドが作ったそうだ。
錬金術ギルドが調べるにもある程度の資材の搬入もあり、わざわざ森の中を歩くより木々を切り倒し道を作った方が今後の為になると思っての行動だそうだ。
もちろん、道を作ったのは遺跡研究の為であり費用は錬金術ギルドが出し、木こりや道を作るための作業員なども集めて作ったと、隣に座るギルバートさんが説明してくれた。
「なんか、話が大事になってませんか?」
「そんな事ないですよ。良い機会なので錬金術ギルドが本腰を入れただけですよ。まぁ、研究成果がどうなるかわかりませんが、そこはわたし達の腕次第ですから」
なんとも、研究者とは....前の世界でも研究畑の人は視野が極端に狭くなる人がいたし、何事にものめり込めるだけでそれは1つの才能なのかもしれないな....
「で、あの遺跡....そういえば遺跡に名前とかあるんですか?」
「公式な名前は存在しませんよ、錬金術ギルド以外は『ハルジオンの遺跡』とか『森の遺跡』とかで呼んでますが、わたし達錬金術ギルドの中では、【シーバル遺跡】と呼んでます。シーバルとは、喚ぶと言う意味があって、そこから取りました。マダラが喚ばれた魔法陣が発見された場所ですし」
ほぅ、だってよマダラ...お前の事がきっかけで名も無き遺跡に名前がついたぜ。
まぁ、嬉しくも何とも無いと思うけどね...
「それで、そのシーバル遺跡で具体的には何をして調査をするんですか?」
「まずは、遺跡を中心とした夜営地を築き拠点を作ります。そこから、周囲の警戒及び魔物の排除。さらに遺跡のあらゆる物を克明に記録します。地下の魔法陣の再発動。ですかね」
「....うん、1つだけ嫌なことが入ってますね....」
「セイジロウさんには、魔法陣の再発動を行ってもらいます。あのマダラを召喚した時の再現ですね。大丈夫ですよ、戦力は十分に用意しましたから!」
なるほどねぇ....馬車が3台なのはそれで...荷物にしては多いなとは思ってたけど、錬金術ギルドが用意した戦力が乗ってるわけね。
「それは.....出来ればやりたくないですけど....マダラに聞いたんじゃないんですか?」
「聞きましたよ、マダラは成功しないと言っていました。根拠となるには弱い発言でしたよ。何かすでに役目を終えたとか....言ってましたけど、やはりやってみてからじゃないと」
「はぁ....そう言ってたんですか...」
なんだろ?マダラに遺跡については詳しい話とか俺も聞いてないから、分からないけどマダラが成功しないって言うならしないと思うけど.....
でも、研究者や科学者は言っても聞かないんだよね。良くも悪くも結果がすべて!とは、言わないけど出来る事で有りながら、推測や推論で時間を割くよりやるべきと考えるからね...
「それで.....血を垂らせと?」
「いえ、自傷行為をさせるつもりはありませんよ。小瓶に輸血用の管を使って血を抜いてもらい、それを魔法陣に垂らします。先に、魔法陣の調査をしてからですから、数日後になるとおもいますよ」
「分かりました。他に私の役目はありますか?」
「重要な役目はそれぐらいですかね。あとは自由にしてもらっていいですよ。たまに声はかけると思いますけど、基本は自由行動で問題ないですから」
なら、特に気負わずに出来るな....マダラにも自由にしてもらって適当に狩りでもさせれば文句は言わないだろし。
ハルジオンの街を出てギルバートさんと話をしながら半日程でシーバル遺跡に着いた。
馬車を降りて凝り固まった腰を伸ばし、軽く辺りを見回した。他の馬車に乗っていた冒険者達や錬金術ギルドの研究者達が荷物を下ろして、早速今夜からの夜営地を作り始めようと動いていた。
さて...どうするか?
『セイジロウ、ワレは体を動かしたいぞ!』
と、マダラが影から現れた。
「って、言っても勝手するのはなぁ....ちょっと挨拶をしてからだな。」
マダラと一緒に夜営地を作ってる集団に近寄って声をかけた。
「あのー、すいません。ちょっと相談がありまして、このグループのリーダーとかいますか?」
「あっ?...おっ!!...ちょ、ちょっとまっててくれ!!」
冒険者らしき人に話しかけたら、少し驚いたあとに走っていってた。少しして、話しかけた人と一緒に数人がやってきた。
「おぅ、あんたがセイジロウだな!話は聞いてるぜ、俺は今回の護衛を任されてるレグリットだ。こっちが、セリーナだ」
「初めまして、冒険者のセイジロウと言います。レグリットさん、セリーナさん。実は、マダラを少し動かせてあげたいんですけど.....」
「わぁ....大きいわね...」
「ああ、従魔だったな.....マジマジ見るのは始めてだが....これがなぁ。で、動かすって言われてもなぁ....魔物の警戒もしなきゃ出し、テントとかも作らなきゃだから出来れば大人しくしてくれると助かるんだが?」
やっぱりそうだよな....下手に動き回って周りの人達を刺激するのは良くないよな...
『セイジロウ、周囲の魔物はワレが狩ってこよう。ついでだからのぅ』
と、マダラからの思念が飛んできた。なら、狩ってきた魔物の素材を提供すれば...
「周囲の魔物狩りついででどうですか?狩った魔物の素材をある程度の提供しますし、その間は夜営地の作業も人手をさけますし?」
「それは構わんが.....」
「レグリットさん、マダラはあの緊急討伐で活躍したと話は聞いてます。実力は問題ないでしょう。心配ならわたしが周囲の警戒に入りますから大丈夫ですよ。素材もらえるなら他の人達も文句は言わないでしょうし」
セリーナさんがレグリットさんを説得してくれる発言をしてくれた。
「話は聞いた事があるが....まぁ良いだろう。なら、そうしよう。あとはセリーナに任せたぞ」
「マダラもわかった?とりあえず、動いて良いらしいから狩った魔物は保管しておいて。人は傷つけたらダメだから」
『わかっておる、日暮れまでには戻るからの!』
と、すぐに走り去っていった。余程、窮屈なのか退屈だったのだろう。
「ずいぶんと聞き分けのいい従魔ですね。さっきの指示はちゃんと理解してるのですか?」
「はい、セリーナさん。大丈夫ですよ、マダラとは意志疎通ができますから心配しないでください。それと、助言ありがとうございます」
「別にいいわよ。警戒する人手が減って夜営地の設置効率が上がったし、魔物の素材ももらえるんだから。改めてわたしは、カーディルのセリーナよ。レグリットがカーディルのリーダーね。あと3人いるけどまたあとで紹介するわ」
「えぇ、少しの間ですけどよろしくお願いします。セリーナさん」
それから、互いに情報交換やカーディルの残りのメンバーを紹介してもらった。
カーディルのメンバーは、リーダーがレグリットさんでセリーナさん、フレーナさん、レガスさん、ガッソさんの男3人と女2人で構成されたパーティーだ。
ハルジオンの街を中心にいくつかの街を渡りつつ依頼を受けていて、今回はわりの良い護衛依頼で参加したとセリーナさんが話してくれた。
俺はマダラの事を話した。この遺跡で召喚して錬金術ギルドが遺跡に興味を持ち、今回の遺跡調査に同行した事を大まかに。
そして、夕方近くになりマダラが帰ってきた。
マダラから周辺で狩った魔物を影から出してもらい、解体しつつ使える素材や魔石を分配した。カーディルのパーティーや今回の護衛を受けた残りの冒険者やパーティーにも少ないが分配した。
夜の食事は、マダラが狩ってきた魔物の肉を使った料理と持ってきた食料で賄った。今回の遺跡調査の参加者にマダラを紹介して、従魔の説明をした。もちろん、ちょっかいを出したらそれなりの反撃を受けるかもしれない事も伝えたが、以外と反応は悪くなかった。
夜の見張りは、護衛依頼を受けた冒険者達がしてくれるそうなので俺やマダラ、ギルバートさんや研究者の人達は明日からの本格調査の話し合いをしてから就寝した。
今作は、カクヨムサイト、アルファポリスでも掲載してます。改稿版ですが、内容には変更ありません。誤字、脱字を修正したものです。ここまで読んで下さりありがとうございます。面白いと思いましたら評価をよろしくお願いします。