昨夜はお楽しみだったの?
No224
昨夜はお楽しみだったの?
翌朝の目覚めはスッキリしていた。心も体も軽かった。隣に視線を向けると、安らか寝息をたてて寝ているフローラさんの顔があった。
しばし綺麗な寝顔を見ていると、フローラさんが起きて俺と視線が交わった。
「.....ずっと見ていたの?」
「そう長くは見ていませんでしたよ。少しだけですよ、少しだけ」
「二回言うところが怪しいわね。女性の寝顔をマジマジ見るのは失礼よ」
「綺麗な顔で寝ている人を見るのは彼氏の特権では? それにこういう日はこれからも続きますし」
「シレッと恥ずかしい事を朝から言わないのっ! でも、こうした日が長く続くのはとても重要で大切なのは同意するわ。今度はわたしが早く起きてセイジロウさんの寝顔を見るわ」
「はは、わたしの寝顔を見ても面白くも何ともないですよ」
「そのセリフはそっくりそのまま返すわ」
俺とフローラさんはしばらく朝のベッドの中で過ごすと、俺はフローラさんの為に先に身支度を整えて部屋を出た。
宿の女将であるロゼッタさんを見かけると声をかけた。
「おはようございます、ロゼッタさん」
「おはようさんだね。今日は起きるのが遅いねぇ。先にお嬢ちゃんが待ってるよ」
「はは、少し寝過ごしましたかね。ロゼッタさん、わたしの部屋にお湯桶をお願いしたいんですけど」
「んっ? お湯桶を? ははぁん! それでだねっ! まったく....すぐに持っていくよ。朝食はそのあとに準備するから待ってな」
ロゼッタさんは俺が頼んだ意味を理解して特にからかう事もせずにお湯桶の準備をしに行ってくれた。ロゼッタさんにお礼を言ってからリリアーナが座るテーブルへと座った。
「リリアーナ、おはよう。待たせたね」
「セイジロウ、おはよう。先に黒茶飲んでゆっくりしてたの」
「そっか、俺も黒茶を飲みたいけどロゼッタさんにちょっと用事を頼んだから今はいないんだよな」
「なら、わたしと一緒に飲む。まだ、温かい」
「ありがとう、リリアーナ。でも、気持ちだけでいいよ。それはリリアーナが飲みな。俺は大丈夫だから」
「そぅ.....フローラはまだ寝てる?」
「いや、フローラさんは起きてるよ。今は支度をしてると思うからもう少しで降りてくるよ」
「そう。二人はお楽しみだったから起きるのが遅かったの」
俺はリリアーナから発せられたセリフに驚き目を見張った。
「えっ!? どこでそんな言葉を覚えたのっ!? ってか、何で知ってるの!?」
と、少し声を上げてしまったのは恥ずかしいが、突然の事だったので仕方ない。よもやリリアーナの口からそんな事を言われるとは思っていなかったのだから。
「朝、ロゼッタに挨拶したらロゼッタが言っていた。セイジロウたちはお楽しみで起きてきてないって」
ロゼッタさんっ! あんたかいっ!
「アハハ....ロゼッタさんがねぇ....」
「セイジロウはフローラと何を楽しんでいたの? わたしだけを仲間はずれにするのはヒドイ。ちゃんと理由を聞かせて、わたしも一緒にまぜるの」
なんて言われても話せないしまぜるなんて持っての他だ。
俺はそこまで欲望的にはなれない。中には幼女の外見をした女の子に性的な興奮をする人はいるだろうが.....
エロ漫画の世界ならありな展開だろうが、現実でそんな展開になりそうな事が起きるとは .....
「いや、あのねリリアーナ。確かにフローラさんと楽しい....フローラさんと二人で夜を過ごしていたけどリリアーナを仲間はずれにしたわけじゃないんだよ。これは、大人の事情で詳しくは話せないけど、リリアーナがもう少し成長したら話をするよ」
「大人の事情.....リリアーナをセイジロウは子供扱いするの。わたしはセイジロウの仲間で同じパーティーメンバーなのに....」
リリアーナはそう言って俯いてしまった。
「いや、別にリリアーナを子供扱いしてないわけでは無いけど....まだ、リリアーナが知るには早い話であって.....」
俺は子供に対する経験がほぼゼロなので、どう接していいか分からなかった。普段のパーティーでの接し方なら特に何も問題無いのだが、こうしたデリケートな部分に関しては不得手だった。
そして、リリアーナに対してあたふたしてると最良のタイミングでフローラさんがやって来た。
「遅くなってごめんなさいね。少し支度に時間をかけ過ぎた...わねって、どうしたの?」
「フローラさんっ!」
俺はすぐにフローラさんに事の起こりを話した。するとフローラさんが、
「見た目が子供でも精神的には女性なのよ。セイジロウさんはもう少しその辺を理解してもらう必要があるわね。まぁ、リリアーナの相手はわたしがするから、先に朝食を食べてしまいましょう」
と、言ってリリアーナに声をかけると二言、三言の会話をした。
すると、俯いていたリリアーナが顔を上げて、
「朝食を食べたら女子会をするからセイジロウは部屋で待っていて」
と、言ってきた。
「えっ? 女子会?」
「そう、女子会。フローラと一緒に女子会をするの。セイジロウは男だから女子会には参加出来ないの」
「そうね、セイジロウさんは男だから参加出来ないわね。仲間はずれになっちゃうけどこれは仕方ないわ。女子会だしね」
「女子会だから、仕方ないの」
なにやらリリアーナは女子会という言葉が気にいったのか、誇らしげな顔を言ってきた。
「そっか、なら仕方ないかな。私は部屋で待ってますよ」
「それは平気よ。今日は、別行動にしましょう。わたしはリリアーナと女子会をしたら街中を一緒に見て回るわ。セイジロウさんは今後の為に行くとこがあるでしょ? そっちを優先してもらえるかしら」
俺はそう言ってきたフローラさんの顔を見るとフローラさんが片目を瞑り、ウィンクしてきた。察するに、リリアーナを任せろといった感じか。
「そうですか、分かりました。今日は別行動にしましょう」
俺は素直にフローラさんの意見を採用した。
そんなタイミングで話が纏まると、ロゼッタさんが三人分の朝食をテーブルに用意してくれた。俺たちはロゼッタさんにお礼を言ってから朝食を食べ始めた。
朝食を食べてる最中は適当な雑談と女性が好きそうな店の場所をフローラさんとリリアーナに伝えた。
「リリアーナがフローラを案内してあげる」
「そう、ならリリアーナにお願いするわ。わたしは街中を知らないから」
「んっ。リリアーナに任せて」
朝食を食べてる最中にはこんな会話も聞こえた。
朝食を食べ終えたあとフローラさんとリリアーナは、リリアーナの部屋で女子会を。俺は身支度を整えて宿を出た。
「さてと、なんか久しぶりな気がするな」
『何がじゃ、セイジロウ?』
「こうしてマダラだけで行動するのが」
『お主が忙しく動くからじゃろ? それより、どこへ向かうんじゃ?』
「そうだなぁ.....市場にでも行くか」
『ほぅ、それは名案じゃなっ! なら、さっさと行くぞ!』
俺とマダラは市場へと向かった。