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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
222/226

一触即発っ!?

No222

一触即発ッ!?



 俺はフローラさんはアンリエッタ邸へとやって来た。執事のシバスさんにフローラさんを紹介し、俺とフローラさん、マダラとリリアーナはシバスさんの案内に従い裏庭へと案内された。


 案内された裏庭にやって来ると、そこには優雅に読書を楽しむアンリエッタさんがいた。

 執事の執事シバスに気がついたアンリエッタさんは顔を上げて俺たちに気がついた。シバスさんはアンリエッタさんの傍に近づきなにやら小声で説明をし、それが終わると立ち上がって挨拶を始めた。


「お久しぶりですね、セイジロウさん。お元気そうでなによりです。それに、リリアーナちゃんも元気そうですね。少し背が伸びたように感じます。マダラちゃんは相変わらずモフモフしてますねっ! マダラちゃんのオヤツを準備させますから一緒に食べましょう。そして.....セイジロウさんの婚約者さんですか。初めまして、アンリエッタと申します。しがない魔導具師ですがお見知りおきを」

 アンリエッタさんは各個人に挨拶をしてくれた。若干、フローラさんに対してちょっと距離感を感じたのは気のせいだと思いたい。


「お久しぶりです、アンリエッタさん。アンリエッタさんもお元気そうでなによりです。それと、突然の訪問を失礼します」

「いえ、セイジロウさんならいつでも歓迎しますよ」


「そう言ってくれるとありがたいです。それと、婚約者のフローラさんは初めてでしたね」

「改めまして、フローラ・フェイ・ハルジオンです。この度は突然の訪問失礼します。以後、お見知りおきを」

 と、フローラさんはそう言って丁寧な挨拶をした。


「さて、立ち話もなんです。テーブル席にお座り下さい。シバス、マダラちゃんのオヤツとリリアーナちゃんのオヤツを準備して下さい」

「かしこまりました、アンリエッタ様」

 シバスさんは丁寧なお辞儀をすると屋敷の方へと向かっていった。それと、入れ違うようにメイドのメイリーンさんがお茶を用意してくれた。


「メイリーンさん、お久しぶりです」

「お久しぶりです、セイジロウ様。お元気そうでなによりです」

 お茶を用意するメイリーンさんにもフローラさんを紹介した。

 ちなみにメイリーンさんは去り際にマダラを撫でていった。


「さてと、セイジロウさん。今日はどんなお話で来たのですか? また、ルインマスの街で何かするのですか?」

 挨拶も終わり、話の口火をアンリエッタさんが切った。


「またって....別に私は特にしてま...すかね? でも、ルインマスにとっては良い結果になってると思いますよ。まぁ、それはそれでいいかと。実は、エルフィンの里に行きたいんですよね。アンリエッタさんは、ギルドマスターと一緒でエルフィン種ですよね。そのエルフィン種が作ってる穀物に興味があって」


「サラッと、自分を流しましたね...まぁ、セイジロウさんですからね。それと、エルフィンの里に穀物ですか....サッちゃんから聞いたんですか?」

「えぇ、ギルドマスターから聞きました。里の場所は聞いてませんが、穀物の話はしましたね」


 そう、まだルインマスの街にいるときに冒険者ギルドのギルドマスター、サーシャさんとの会話の中でエルフィンの話になりその時に聞いて行きたいと思っていたんだ。


「セイジロウさんがどんな事を考えてるのか分かりませんが、エルフィンの穀物は大したことないですよ。わたしはずいぶんと食べてないですが、今も食べたいとはおもいませんよ?」

 アンリエッタさんはそのエルフィンの穀物に良い思い出がないのか、特に興味無さそうに言った。


「サーシャさんも言ってましたよ。味が簡素で食べても美味しくないって。でも、火に炙ってタレをつけると悪くないとも言ってましたよ」

「まぁ、それは味に変化がついただけで、穀物自体の味は大した物ではないとおもいますが......ありがとう、シバス」


 ここでシバスさんがマダラとリリアーナのオヤツを持ってきてくれた。

 マダラはさっそくアンリエッタさんの隣で寝転がりながらオヤツを食べ始めた。


「アンリエッタ、ありがとうっ」

「どういたしましてっ! まだあるからたくさん食べても大丈夫ですよ。マダラちゃんもたくさん食べてねっ!」


『うむ、なかなかやるではないか、アンリ。久しぶりに塩気のある魚介類を食べると旨く感じるのっ! 褒美に昼寝の時はワレに寝そべる事を許すぞ』

「えへへ、ありがとうっ! マダラちゃんっ!」



 あー、アンリエッタさんがメッチャ喜んでる。マダラが何か言ったんだろうけど....まぁ、アンリエッタさんが喜んでるなら問題無いけどさ。



「セイジロウさん、アンリエッタさんの雰囲気がさっきと全然違うんだけど....」

 フローラさんはアンリエッタさんの様子を見て小声で言ってきた。


「あぁ、アンリエッタさんは可愛いものが好きでその好きな基準の中にマダラが入ってるんだよ。それで、マダラに会うたびにあんな感じになるだよ。今の様子もマダラが思念でアンリエッタさんに何か言って、それで嬉しくなっちゃったんだろうね。普段は慎ましくて綺麗な人なんだけど.....」

 俺は簡単な説明をフローラさんにした。


「そ、そうなのね....まぁ、人それぞれ色々と趣味趣向は多岐に渡るから.....(優秀な魔導具師なのに.....ちょっと残念よね)」

 俺とフローラさんは少しの間、苦笑いを浮かべながらアンリエッタさんの姿を見ていた。


「アンリエッタ様、お話の途中だったのでは? セイジロウ様たちがお待ちしてますよ」



 さすがはシバスさんだ。この場の空気を読んでアンリエッタさんに言ってくれた。



「えっ? あっ、そうだったわ。ごめんなさいっ! つい、マダラちゃんが嬉しい事を言ってくれたからっ! えっと....エルフィンの穀物だったわよね。それで、セイジロウさんはそのエルフィンの穀物を食べに行きたいのだっけ?」


「そうですね.....まぁ、食べるのはもちろんなんですが、エルフィン種の方たちとの繋がりがほしいのが一番ですね」

「その感じだとすでに何か考えがあっての事ですね。しかも、橋渡しもして欲しいと顔に出てますよ?」



 あれっ!? そんな顔してた....いや、アンリエッタさんならそれぐらいは読めるか。


「はは....手厳しいですね。でずが、力添えがあると嬉しいですね。私には頼れる友人が少ないのでどうしてもアンリエッタさんやサーシャさんたちの助けが必要なんですよ」

 俺はニコリっと笑顔を浮かべながら言った。この笑顔は愛想笑いとかじゃなく、純粋は笑顔だ。


「ふふ、そう素直に言われると面と向かっては断れませんね。わたしの方で少し動いて見ます。ですが、一つだけ約束してもらいます。エルフィン種は他の種族とは違い世間との考えがズレてる部分があります。それは長命種特有の考えといいますか、活動的な考えを持ってる人が少ないので多少の考え違いがあるのです。その辺は理解してくれると助かります。わたしやサーシャとは違うと思ってください。なので、セイジロウさんがどのような試みをしようとしてるのかは分かりませんが、エルフィン種に不利益または危害を加えないと」


「もちろんです。それは約束します。わたしは決してエルフィン種に危害を加えないと」

「まぁ、セイジロウさんですからその辺の心配はしてませんが念のためですかね」

 アンリエッタさんはそう微笑みを浮かべながら言った。


「では、それはそれとして.....(セイジロウさんの婚約者ですか)...フローラさんと言いましたね。ルインマスの街は初めてですか?」

 アンリエッタさんは、俺との話が一段落するとフローラさんに視線を向けて言った。


「そうです。今回は、セイジロウさんのパーティー加入と同時に冒険者ギルドの交渉役として同道してます。セイジロウさんの右腕として、将来のパートナーとしてサポートしていきます」

 フローラさんはニコリっと、稀に見る素敵な笑顔で"将来のパートナー" という部分を強調した。



 将来のパートナー....普通に聞いたら凄く嬉しい言葉なんだけど、なぜか今はそうかんじないんだよなぁ....なんで?



「将来のパートナー...ですか。あまり、御自分を過信しない方が良いですよ。でないと、足元を掬われますから。まぁ、自信があるのは分かりました」

 アンリエッタさんは含みのある言葉を吐くとお茶を飲んだ。


「ずいぶんな言い方ですね....まぁ、まだ若輩ですから。若輩なりの自信はあります」

 フローラさんは、若輩と言う部分を強調して言うとお茶を飲んだ。



 なんか、話のやりとりがマズイ方向に向かっている気がするのは俺だけだろうか? 


アンリエッタさんの後ろに立ちシバスさんの顔を見ると......視線をそらされた。


 えっ? そこで視線を反らしますか、シバスさんっ!



 女性同士の会話は終わらずにまだ続く。

「若輩.....確かに生きてきた年数で言えばわたしの方が若干、若干ですが多いですね。ですが、その若干の差があるだけで色々と違うものですよ。例えば、去年はセイジロウさんとルインマスの街で色々とやりました。それはもう色々とね。おかげでルインマスの街はさらなる発展の兆しを見せ今年は賑やかになるでしょう。下準備もある程度整っていますし」


「なんでしょう? なにやら仰りたい事があるように見受けられます。若輩なわたしに分かるように言ってもらえると助かります。人生の先輩からのお言葉は貴重ですから」


 場の空気感がヒリヒリっとしてきたのを俺は感じ、このままではマズイと思い仲裁する形で声を発するが、

「そうそう、思い出した事があり--」


「「今は黙っていて下さい(ちょうだい)!!」」


「あっ、はい.....」

 仲裁は出来なかった....


 アンリエッタさんがフローラさんに向かって話を再開した。

「良いでしょう。なら、教えてあげましょう。先ほどセイジロウさんのパートナーと

言っていましたがあなたにはそれが務まるとは甚だ疑問を感じます。わたしにはセイジロウさんと一緒にルインマスの街を発展させた実績があります。あなたにはそれがありますか? まぁ、聞いた所によればハルジオンに【ハルジオンコロッセオ】が出来たと聞きました。領主の娘であるあなたが動いたのも知っています」


 アンリエッタさんはここまで言うとお茶を飲んで口を湿らす。

 フローラさんはその光景を黙って見ている。

「........」


 アンリエッタさんはお茶の入ったカップをソーサーに戻すと再び話し始めた。

「ですが、それは領主の娘という肩書きとセイジロウさんが土台を整えていたからこです。あなたはその磐石な土台の上をただ歩いたに過ぎません。仮にあなたの力が無くてもセイジロウさんの事ですから幾つか次善策があったはずです。ねぇ、セイジロウさん?」



 ここで、振ってきますぅ!? 空気読んでっ! 空気っ!


「えっ、い、いや....まぁ....はは」

 俺は口を濁らし苦笑いを浮かべつつ、お茶のカップを口に寄せてうつむき加減で飲む。



「照れ隠しですか。謙遜するところは以前と一緒ですね」


 いやっ! 照れてないし謙遜もしてないからっ! 空気がっ! 何とかしてよ、シバスさんっ! って、いつの間にか居ないしっ! どこ行ったの?


「まぁ、そうは言ってもルインマスでの土台もセイジロウさんが作ったんですけどね。ですが、それでもハルジオンよりかは磐石ではなかったですよ。互いに出来る事を成せたからこそルインマスが発展できる土台になったんです。あなたにはそれがありますか? セイジロウさんのパートナーとして胸を張れるだけの自信がありますか?」


 アンリエッタさんはフローラさんの顔を見ながらそう言った。

 フローラさんはアンリエッタさんの言葉に何かを言いかけてやめていた。固く口を閉ざしている。


「少し言い方がキツイかもしれませんが、セイジロウさんのパートナーと言い張るなら仕方ありません(あまり言いたく無いけど、あなたの事を思ってです。ごめんなさい.....)」


 それから少しの沈黙がながれ、次に声を発したのはフローラさんだった。


「若輩なわたしにご指導ご鞭撻ありがとうございます。真摯に受けとめさせていただきます」

「......フローラさんには言い分はあるでしょうが.....」

「いえ、アンリエッタさんの仰る通りです。わたしはハルジオンチェス、ハルジオンコロッセオの事でどこか慢心していたのは事実です。確かに、わたしの言葉が無くてもセイジロウさんなら結果を出していたと思います。セイジロウさんですから」


「そうですね。セイジロウさんですから」

 互いに俺を認めてくれる発言をしてくれるのは嬉しく思うけど.....素直に喜べない自分がいます。はい。


「一人の人間として、そして、一人の女性としてこれからも慢心せずに精進して下さいね.......わたしも一人の女性としてこれからも精進しますから」

「はい。これからもよろしくお願いします、アンリエッタさん」


 アンリエッタさんとフローラさんはそう言って笑顔になっていた。一時はどうなるかと思ったが.....何事もなく終わった。


 のか?.......



 その後は、現状のルインマスの街の話を適当にして昼食をアンリエッタさんと共にいただいたあと、アンリエッタ邸をあとにした。


 ちなみに、シバスさんはアンリエッタさんとフローラさんの話が終わったあとに替えのお茶を持って戻ってきた。あのなんとも言えない空間から避難していたのか、それともただお茶の準備をしに行っていたのかはシバスさんのみぞしる。

 さらに言えば、メイドのメイリーンさんはアンリエッタさんとフローラさんとの話が始まった直後に居なくなったのを俺は確認している。女性の勘ともいえる作用が反応したのか......分かっていたのなら教えて欲しかった。

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