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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
218/226

これからの話

No218

これからの話




 氷雪季も終わりに差し掛かると頃、ついにハルジオンコロッセオの興行がハルジオンの街で宣言された。

 ハルジオンコロッセオの宣言式は街を上げて大々的に行われた。宣言式の日取りが各ギルドから発表され商業ギルドを筆頭に錬金術ギルドと冒険者ギルドが協力して行われた。


 宣言式には前領主のエリックさんも出席し現領主に変わって演説した。(現領主は現在公務で王都にいる為に不在時はエリックさんが代理として一時的に街を治めている)


 俺とマダラ、リリアーナはハルジオンコロッセオでエリックさんの演説を聞いたあとは、ハルジオンコロッセオの観客席でチェスの対戦を観戦したり露店巡りをして旨い料理を探したり雑貨屋や服屋、武防具屋などにも顔を出して花風季に向けての準備を進めた。


 数日に一度は街中や街外の依頼を冒険者ギルドで受け資金調達の意味も込めて、体を動かしていった。

 良さげな依頼が無い場合は、各自の判断で自由に過ごしたりした。リリアーナとマダラはギルドの食事処でビルドさんの依頼を受けることが多い。

 俺はブラブラっとする事が多く、街中をブラついたり知り合いの冒険者と通常のハルジオンチェスをしたり馴染みの雑貨屋を巡ったりした。


 もちろん、ハルジオンコロッセオにも行ったりする。ハルジオンの街ではハルジオンチェスが流行し、いたる場所で通常のハルジオンチェスの対戦を見る。商業ギルドや細工師組合がずいぶんと頑張っているようで通常のハルジオンチェスはかなりの売れ行きをしている。(商業ギルドのマクベルさんからの話だと、ウハウハっだって言ってたからな)


 ハルジオンコロッセオでは毎日誰かしらが対戦をしてるので、いつ行っても観客席で対戦が見れる。対戦を見るにはコロッセオの入口で銅貨二枚を支払い入場料を取っている。これは、一律誰でも一人銅貨二枚の入場料がかかる。さらに、ハルジオンコロッセオでのチェスの対戦は銀貨一枚が必要になる。これは、対戦者一人に対して銀貨一枚なので一度の対戦で銀貨二枚が支払われる。

 ハルジオンコロッセオの周囲には数々の露店が軒を連ね、チェスの対戦を観に来た客に料理を売り込んでいる。ハルジオンコロッセオでのチェスの対戦を観に来る客だけを狙った販売だ。観戦する人の数はそれなりの人数がいる為に露店の売り上げもそれなりになっているが、売り上げの一部利益を商業ギルドに支払い場所代としている。

 さらに、露店の開店は三日と決まっていて、露店の開店は毎回抽選となっている。なお、抽選を一定数連続で外れた場合は救済処置として五日の開店が認められる。


 冒険者ギルドではハルジオンコロッセオ周辺での警護の依頼があったり、清掃の依頼だったりとチェス関連の依頼も増えたりしていた。


 ハルジオンチェスとハルジオンコロッセオが出来たことによって、ハルジオンの街は活気つき賑やかになっている。


▽△▽△▽▽△


「--ほんの一季節でずいぶんと街の雰囲気が変わって新しい施設がよく出来たもんじゃ」

「そうですね。たくさんの人たちの尽力のおかげですよ。特にハルジオンコロッセオがそうですね」

「じゃな。急ピッチにこの寒い氷雪季でよく完成させたもんじゃよ。それと、各ギルドもよく動いた。特に錬金術ギルドは新しい技術の開発もしたしのぅ」


 俺はテーブルに置かれたお茶を飲みながら頷いた。


「あれには私も驚きですよ。さすがは錬金術ギルド、さらにギルバートさんですね。あの技術が上手く使われると良いですね」

「そうじゃな。使い方次第では技術革新になるしのぅ。まぁ、ワシの方から釘はさしておくがあとはギルド次第じゃなのぅ」


 エリックさんはそう言って用意されたお茶を飲んで一息ついた。

 俺はエリックさんの屋敷に来ていた。氷雪季もほぼ終わりに差し掛かり暖かい日が出始めた。ハルジオンチェス関連が形となり初軌道に乗り始めすでに俺に出来る事はこうやって世間話ついでに報告するぐらいとなっていた。


「して、今日来たのはそれが本題ではないんじゃろ?」

 エリックさんがお茶の入った器をテーブルに置くとそう言った。


「えぇ、以前話したお願いをしに来ました」

「ふむ....セイジロウのお願いと聞くとどうしても気構えてしまうのはなぜかのぅ.....まずは話を聞こうかの」

 エリックさんはソファに深く座り話を聞く態勢になる。


「その辺は私と関係ないと思いますけど(前の世界の知識を元にした事を言えば突拍子のない事を言ってる風に聞こえるのかもしれないかなぁ)....そろそろ氷雪季も終わるのでまた違う場所に行ってみようと思ってます」

「....街を出る、という事じゃな。まぁ、冒険者なのだからそれは分かる。が、街をに留まることは考えんのかの? せっかく、フローラとの間も進展し関係を認める味方もつけたんじゃ。領主...ワシの息子が王都から戻れば一席設けて話もできるじゃろ? それに、エリーザとの面識もできたんじゃし」


 エリックさんは俺とは別の考えを言ってきた。もちろん、街に留まりこのままハルジオンを拠点にして活動しいづれはフローラさんと結婚して生活をしていく選択もある。互いに年齢も無理をするような歳でもないし、家庭をつくってのんびりするのも悪くない。金銭的な問題も解決する手立てはいくつもあるし。


「やはり、エリーザさんの事を知ってますか。エリックさんがエリーザさんに私たちに接触するように話をしたんですか?」

「明確には言っておらんよ。フローラ自身がエリーザにセイジロウの事を話しておるから興味を持ったんじゃろ? ワシはちょっとしかしておらんよ」


 ちょっと何をした? 何を話したんだよ?


「そんなニコニコっした笑顔で言ったら何かしたのは見当つきますけどね。まぁ、内容まではわかりませんが....面識が出来たのは確かにありがたいと思ってますよ。話しに聞くとフローラさんの事を相当大事にしてるようですしね」

「そうじゃな。息子もおるがやはり娘は可愛いのじゃろうな。ワシも可愛いと思うしエリーザもそうじゃろう。息子も妹は可愛く思っておるが接し方は普通じゃよ。ただ....あやつはのぅ...はぁ、ちと可愛がり過ぎなとこはあるのは否定はせんよ」


 こっちの世界でも娘を溺愛する父親はいるのだと理解し、また厄介な問題だとも同時に感じた。


「エリックさんやエリーザさんが私たちの事を認めてくれてるのはとてもありがたい後ろ楯だと思ってますよ。あとは、領主の息子さんが認めてくれればフローラさんの父親、領主を説得できる....かは分かりませんが可能性は高くなります。が、それはまたの機会に話しましょう。それで、話は戻りしますが」


「うむ、すでにセイジロウの中では決まっておるんじゃろ。ワシは無理に止めたりせんよ。セイジロウが決めた事じゃし、考えもあるんじゃろうからな。じゃが、フローラはどうする? また、この街に置いていくのかの?」


「そこでお願いですね。フローラさんには俺たちのパーティーに入ってもらいます。最初はルインマスの街に一緒に行きたいと思います。以前、約束しましたからね。そこから次の目的地へと出発して氷雪季になる頃にはまた戻ってきます」


「ふむ........」

 エリックさんは俺の話を聞くと腕を組み目を瞑り思案した。

 俺はお茶と焼き菓子をつまみながらジッと待った。


 少ししてからエリックさんが話し始めた。

「フローラを無理に連れていかなければそれはそれで良いが.....連れていく理由はなんじゃ? それと、フローラが男と街を出て旅をすると知ったあやつの感情は言わなくてもわかるじゃろ。帰ってきた時が大変じゃぞ?」


 確かにね。でも、今回はフローラさんが必要になる。俺の得た情報通りなら橋渡しとなるフローラさんが必要だ。


「今回はフローラさんの立場が必要になると考えています。フローラさんには冒険者ギルド職員として私たちのパーティーに参加してもらいたいのです。まぁ、少しは公私混同も入ってますし、領主様には悪いですけど先に実績、既成事実を作ってしまうのもありかと」


「ほぅ、ほっほっほ! 孫が見れるのも近いようじゃなっ!」

「いや、そこは流れのままで。それに既成事実とは言いましたけど、中身はそっちじゃないですからね。領主の娘と旅をするだけの仲だと言うのを知ってもらいさらに、それを認めている家族がいるという事実を作る為の事ですよ?」


 領主からの怒りの矛先をエリックさんとエリーザさんに向けさてつつ、俺がいない間に俺たちの事を認めさせる方向で説得してもらい、ついでに帰ってきた時の為に手土産を用意する計画だ。

 すでにハルジオンの街にはハルジオンコロッセオとチェスを造り出した実績があるがさすがにそれだけじゃ少し弱い。一冒険者が作った実績にしたら相当なものだが。


「なんじゃ、ワシらを盾にするのかの? 年寄りと女を盾にするとは.....セイジロウもひどいのぅ」

「いや、そんな事を思ってるような顔をしてませんよね? ニコニコっし過ぎですからね?」

 エリックさんは言葉とは裏腹に嬉そうな顔をしていた。


「ほっほっ、そうかのぅ。いやなに、ちとあやつの顔を浮かべたら楽しくなってきてのぅ。フローラがいなくなるのは寂しいがかわりの楽しみが出来たと思ったらの。エリーザと一緒に暇が潰せそうじゃ。ついでに、ハルジオンコロッセオの件もあやつに丸投げじゃしの。ほっほっほ」


 あー、それね。今は領主の代理でエリックさんが処理してるけど、まだまだ整備や改良する点は多々あるし。商業ギルドとの兼ね合いもより詳細な話し合いが必要だろうな。

 花風季になれば人も増えてさらに、情報が広まれば......まぁ、そこはしょうがないよね? 書類仕事は領主の勤めだから。うん。


「....顔に似合わず腹黒いですね。こっちに飛び火しないようにしっかりと盾役をお願いしますよ? じゃないと孫が出来た時におじいちゃんの話は黒い話ばかりにしますからね」

「なっ!? それはないじゃろっ! お主の方が黒いではないかっ!」

 エリックさんは身を乗り出しながら言ってきた。


「エリックさんの対応次第で孫の存在の有無が変わると言っても過言じゃないですから。それに、私とフローラさんが駆け落ちでもすれば孫に会える機会は極端に減りますし、孫も率先して会おうとはしないですよ」

 と、まだ結婚もしてないし孫も産まれてないなのそんな話を盾にエリックさんを抑える。


「むぅー.....孫の名付けをワシにさせてくれるなら、全力を尽くそう。それがワシがセイジロウのお願いを聞くかわりの見返りじゃ。どうじゃ?」

 お願いに対して見返りを要求するのはどうかと思うが.....その程度で厄介な面倒が無くなるとまではいかないが、手の中に収まるぐらいになるのなら悪くないと判断した。


「まぁ、候補には入れますよ。私はともかくフローラさんがエリックさんが付けた名前を採用すれば名付けましょう。なるべく、エリックさんが付ける名前を採用する方向にも動きます。確約とまでは言えませんが、私に出来るのはそれぐらいでしょうから」


「うむ。今はそれで良いじゃろう。なら、旅の間ぐらいならこっちはどうにかしておこう。エリーザもおるからまぁ大丈夫じゃろうな。で、それはそれでそっちも仕込める時は仕込むんじゃぞっ! せっかくの旅じゃ、場が盛り上がる時もあるからのっ!」

 下世話な話が出た所で適当に話を切り上げ、その後は通常のハルジオンチェスを何戦かしてからエリックさんの屋敷をでた。



 俺だってフローラさんとイチャイチャっしたいさ。こっちに来てからご無沙汰だし、娼舘はあるけど何だかんだと行けないし.....はぁ....

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