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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
215/226

フローラとの買い物



No215

フローラとの買い物




 俺はいつものように目を覚ますと身支度を整えて宿の食堂へと向かった。空いてるテーブル席で黒茶を飲みながらリリアーナが起きてくるのを待っている。

 黒茶を飲みつつ今日の予定を考える。今日の久しぶりにフローラさんと出かける事となっている為、いつもより気持ちは晴れやかだ。



 さて、今日はどんな所に行こうかな。って、言ってもそれほど考えるような場所はないんだけど......やっぱり雑貨屋や服屋を見て買い物が一番かな?



 そんな風な事を考えてると、テーブルの対面にリリアーナが座った。

「リリアーナ、おはよう」

「セイジロウ、おはよう。何か楽しいことがあったの?」

 と、リリアーナに言われた。


「ん? なんで?」

「セイジロウ、ニヤニヤしてるから」

「えっ、顔に出てたかな....今日はフローラさんと久しぶりに出かけるからかな。それはそれで朝食を頼もうか。リリアーナはいつもの黒茶を頼む?」

「んっ」

 俺は女性給仕に朝食と黒茶を頼んだ。


 リリアーナと一緒に朝食を食べつつ、今日は別行動となる事を話した。リリアーナは特に何の変化も見せずに"わかった"っと言っただけだった。

 朝食を食べ終わると俺とリリアーナは冒険者ギルドへと向かって歩いていく。俺は待ち合わせをギルドの食事処でしている為に最初だけはリリアーナと一緒に行動した。


 冒険者ギルドに着いてからしばらくすると、フローラさんがやって来た。

「お待たせ、セイジロウさん」

 と、氷雪季でまだ肌寒くフローラさんはコートを羽織っている。が、やはり女性な為に地味だが地味なりに細部にはあまり目立たないが幾つかの刺繍がされていた。


「おはようございます、フローラさん。特に待ってませんから気にしないで良いですよ。何か温かいものでも飲みますか?」

「そうね、いただこうかしら」

 俺は、ビルドさんに言って温かいお茶を頼んだ。


「今日はどこへ行きますか? 私なりに考えましたがフローラさんが行きたいと場所があればそちらに一緒に行きますよ?」

 俺はそう話を始めた。


 俺の前の世界での経験や経験談によると、デートは男がリードするが女性の意見を聞かないわけではない。要は、行動の最初だけは男から踏み出すが行動内容は女性の意見を尊重するべきだと。

 自分の考えは持っている事を伝えつつ女性の意見を尊重した上で行動するのが正解だと。


「そうね、午前は花風季に向けての服を少しみたいの。氷雪季もすでに半ばを越してきて暖かい日も増えてくる頃だから。それから午後はちょっと違う場所に付き合ってもらいたいかな」

「なら、そうしましょうか。私も一緒に何か目ぼしいものがあれば買い備えておきたいですし」

 と、フローラさんとの予定を話してるとリリアーナが注文したお茶を持ってきてくれた。


「リリアーナ、ありがとう。今日はセイジロウさんを借りるけどお土産を買ってくるから許してね」

「んっ。荷物持ちは男の仕事。それに、セイジロウはフローラとの買い物を楽しみにしていた」

「ふふ、そうなの? なら、しっかりと役にたってもらわなきゃねっ!」

「最近は運動不足だから丁度良い」

 などと、そんな会話を苦笑いしながら聞いていた。


『おぃ、セイジロウ。ワレにも土産を忘れるでないぞ。珍しい料理や旨そうな料理があれば買ってくるんじゃ。その代わり、リリの面倒はワレがしっかりと見ておるからの』

 と、最近はめっきり影が薄くなったマダラがさりげなく思念を飛ばしてきた。


『分かったよ、そっちは頼んだからな。それから、あまりツケ食べすぎるなよな。この間、溜まったツケを払ったらずいぶんな額になったんだから....』

 マダラのツケは金貨二枚ほどにまでなっていたのだ。

 家族四人が一月で暮らす金額が金貨三枚程と考えればどんだけ食べたかが分かるだろう。


『分かっておる。すでにリリがその辺に手を回してツケでは食わしてくれんからのぅ。まったく、リリはワレに厳しすぎじゃ。なので、セイジロウだけが頼りじゃぞっ! 良いな、土産を忘れるでないぞっ!』

 見た目に反して残念な従魔との思念を適当に終わらせ、俺はフローラさんと買い物に出掛けた。



 俺とフローラさんは腕を組ながら通りを歩き服屋を目指しながら話をした。

「それで、どこの服屋に向かうんです?」

「ジュリーのお店よ。花風季向けの服を売り始めたからって連絡がきたの」


「そうなんですね。どんな服があるのかたのしみですね」

「そうね。セイジロウさんからいただいた服は素敵だったんだけど....氷雪季には少し肌寒いし....それに...ねっ?」

 と、はにかみつつ恥ずかしそうな顔をして俺を見ていた。


 ルインマスの街で買った衣服をフローラさんにプレゼントしたがどれも氷雪季向けではなくお披露目もしていない。

 もともと火水季の季節で着る服な為なので氷雪季で着るには生地が薄いのだ。しかも、俺好みな為に少し露出も高めだ。


 フローラさんは露出が高い服は恥ずかしいのか、受け取った時には苦笑いをしていたがまるっきり嫌がってはいない様子だった。

 いつか二人きりの時にはプレゼントしたルインドレス(前の世界でのチャイナドレス風)の服を来てもらいムフフっな事をやるのが密かな願いだ。



 自分に可愛い彼女や綺麗な彼女が出来たら一度は着せてみたい服を幾つかの想像するだろう? 俺はチャイナドレスにミニスカとニーハイの組み合わせ、白シャツに短いタイトスカートに網タイツ。個人的な趣向は自由だな。うん。


「きっと似合いますよ。プレゼントした服を着たら私に見せてくれますか?」

「そっ、それは....恥ずかしいから、二人きりの時でいい?」

 少し顔を赤くしつつ上目遣いでみあげて言ってくるフローラさんはとてもエロかった。


「えぇ、二人きりの時に、ですね。楽しみにしていますよ」

 と、言ってフローラさんの腰に腕を回して自分の方に抱き寄せた。

「っ! もぅ、セイジロウさんは強引ね。でも、嫌いじゃないわよ?」

「なら、二人きりのその時はもう少し強引にいきますね」

 と、通りを歩きながら少しだけイチャイチャ感を出しながら歩いていく。


 しばらくそんな感じで歩いていくと目的の服屋にたどり着ついた。

 俺とフローラさんは店の扉を開くと備え付けの鈴が乾いた音を鳴らし店内に来客を知らせた。


「あら、今回はずいぶんと早い登場ね。彼氏まで連れちゃってっ!」

「良いじゃないっ、それにたまたま予定が丁度よかったのよ」

 と、店主のジュリーさんとフローラさんが店内に入ってそうそうやり取りをした。


「どうも、お久しぶりです」

「えぇ、久しぶりね、セイジロウさん。今日は来てくれてありがとう。女性服しかなくて退屈だと思うけど我慢してね」

「いえ、そんな事はありませんよ。色々と見させて楽しませてもらいますよ」

「ふふ、気を使わせたかしら。まったく、フローラにはもったいない男よね」

 その一言を聞いていたフローラさんがジュリーさんに反応した。


「ちょっと、どういう意味よっ? 確かにセイジロウさんは優しくて気遣いが出来る人よ。でも、わたしだって....」

「分かってますよ、フローラさん。フローラさんは優しくて気遣いが出来て、さらに可愛くて綺麗な女性だというのは私がしっていますから。そんなに気持ちを高ぶらせなくても。さっ、服を選びましょう、せっかく買いに来たんですから。きっとフローラさんに似合う服がありますから」

 と、ジュリーさんとの会話に素早く入り込んで仲裁する。

 女性の買い物はほぼほぼ長い時間がかかるのだ。なるべく早めに終わるのが望ましい。それに、だいたいが女性同士の会話が原因で長くなりがちになる。しかも、買い物は一件ではまず確実に終わらないのか定番だ。なので、一件一件での買い物時間を短縮していけば結果的に早く終わるわけだ。


「そっ、そうねっ! わかったわっ! わたしも服を選ぶけどセイジロウさんもわたしに似合う服があったら教えてねっ!」

 と、フローラさんは服が飾ってある場所へと向かった。


「ずいぶんと慣れた感じじゃない? しかも途中から惚気が入ってたしね」

 と、ジュリーさんが隣で話しかけてきた。

「まぁ、多少は心得がありますからね。男の嗜みの一つですよ。それに、惚気るのはカップルの特権ですよ?」

「まったく、フローラはずいぶんな男に惚れられた、いや惚れているのかな? どちらでも構わないけどこれからもフローラをお願いね、セイジロウさん」


「はい、もちろんですよ。では、わたしもフローラさんに似合う服を探しますね」

 俺はジュリーさんとの会話をそこそこに約束した通りにフローラさんに似合う服を探しに向かう。


 約束というには一方的だったが彼女がそういったらすでに約束事になってる場合が大半だ。例えば、~~をお願いね、とか、~~しといてね、と軽い感じで言われたことでこちらも軽く返事をして忘れていたり冗談だと受け取りそれをしなかった場合、ほぼ確実に彼女もしくは奥さんの機嫌が確実に悪くなる。

 女性にとって自分から言い出したお願いや約束は間違いなく、やれといった指示だ。軽いとか重いとかじゃなく先に言ったような言葉が女性から言われたやらなければ後が怖いことは間違いない、と俺の経験や経験談からの推測だ。


 フローラさんは自分に似合う服を探してと俺に言ってきた通りに、俺はフローラさんに似合う服を幾つか選んだ。

 フローラさんは飾られている服を見つつ他の服を物色中だったので俺はタイミングを見ながらフローラさんに選んだ服を見せた。

「フローラさん、こんな服はどうですか? 私の好みが多少は入ってますがフローラさんに似合うと思いますけど」

「ありがとう、セイジロウさん! なら、こっちに服と一緒に試着して来るから見てくれる」

 そう言ってジュリーさんとは違う店内の店員に試着室を貸してもらうように頼んだフローラさんは試着室で着替えをした。


「本当に楽しそうに買い物をするようになったんだから。前はあんな風に服なんか買わなかったのよ。淡々とした感じでこっちが進めた服や飾りをただ買っていくだけだったのに」

 俺たちのやりとりを見ながらタイミング良く話かけてきたジュリーさん。


「そうなんですか? 前はというと、私と出会う前の事ですか?」

「そうよ。まぁ、冒険者ギルドで働き始めて少したった頃からね。仕事が忙しいのか現実が分かり始めたのか、どんな心境の変化があったかはわたしには詳しく話してくれなかったけど、自分を飾る事に興味が薄れていった感じなのかな」


「そうなんですね。私が始めてフローラさんに出会った時は外見的には今とあまり変化はないですよ。もちろん、良い意味ですよ。可愛く綺麗なフローラさんですよ」

「はいはい、分かってるわよ。ちょこちょこそういうの入れなくても雰囲気で分かるから大丈夫だから」

「そうですか」


「そうよ。女性はそういう雰囲気や空間的な判断が敏感なのよ。もちろん、男の視線にも敏感よ。だから、女性との初対面はあまりジロジロと見ちゃいけないのよ」

「そうですね、それは昔に良く聞きました。ですが、女性は男性をそれなりに見ますよね?」


「女性は良いのよ。やましい視線やイヤらしい視線を向ける訳じゃないんだから。ただ、自分に害がないかの本能的な確認をしてるだけよ。男は大半以上がよからぬ視線なんだから」

「はは、確かに魅力的な女性には視線がいってしまいますね。私も確かによからぬ視線ではないですが、無意識に視線は送ってるとおもいますしね。なんででしょうかね?」


「そこを聞かれても困るけど....まぁ、本能的な事なんじゃないの? イヤらしい視線は別よ」

「えぇ、分かってますよ。おっ、フローラさんの着替えが終わった見たいですね」

 と、ジュリーさんとの会話をしてると試着室からフローラさんの声が聞こえて、着替えを終えたフローラさんが出てきた。


 俺は試着室から出てきたフローラさんの服を良く似合うと誉めた。するとフローラさんは照れつつも嬉しそうにまた試着室へと入っていった。

 それを数回繰り返し、俺が選んだ服とフローラさん自身が選んだ服を買ってからジュリーさんの店をあとにした。

 もちろん、代金は俺が支払い代わりに昼食はフローラさんの驕りになった。

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