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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
212/226

プロジェクト完遂

No212

プロジェクト完遂





 俺は冒険者ギルドに戻るとアンナさんと分かれ、フローラさんと一緒に冒険者ギルドを出てエリックさんの屋敷に向かった。

(エリックさんは、ハルジオンの街の前領主でフローラさんのお祖父さんだ)


 メイン通りをフローラさんと一緒にあるきつつ、改良版の【ハルジオンチェス】の話をした。

「フローラさんにも見せてあげたかったですね、ハルジオンチェス」

「わたしも見たかったわよっ! でも、アンナさんが"先にわたしが見てくるから、あなたはセイジロウさんと一緒に完成してからゆっくり見てきなさいねっ!" って言うから....でも、一緒に見に行ける日を楽しみにしてわ!」

 と、フローラさんは笑顔で言ってくれた。


「えぇ、そうですね。近いうちには完成しますし、一緒に見にいきましょうか。観客席も以外と広いですからゆっくりと観戦できますからね」

「そうね、楽しみにしてるわ。それで、改良版のハルジオンチェスはどんな感じだったのかしら?」


 俺は見てきた光景と自分なりの意見と驚きをフローラさんに伝えた。さらに、錬金術ギルドの高い技術力と細工師たちの繊細な技術力などをありのままに伝える。


「--それは、見るのが楽しみねっ! きっとハルジオンの街が大いに賑わいをみせるわね。氷雪季が終わったら忙しくなりそうねっ。」

「そうなると良いですね。たくさんの人達に見てもらったり対戦してもらったり、今からその光景が目に浮かびますよ」


 そんな話をしながらエリックさんの屋敷に着いた。屋敷に着くと執事の人と挨拶を交わし、フローラさんがエリックさんとの面会を伝えるとすぐに対応してくれた。

 俺とフローラさんは客間へと案内され用意されたお茶と焼き菓子をいただきながらエリックさんを待った。


 しばらくして客間へとエリックさんが現れ俺とフローラさんは簡単な挨拶を済ませてから本題へと話し始めた。

「エリックさん、今日は改良版の【ハルジオンチェス】について報告に来ました」


「ほっほ、何やら最近は街中が騒がしかったようじゃからの。そうじゃとは思ったよ」

 さすがはエリックさん。領主を辞めたとはいえ街中の情報はそれなりに把握してるみたいだな。


「えぇ、ずいぶんのたくさんの人達や各ギルドの方達が動いて下さいました。その人達がいなければプロジェクトは完成しなかったでしょう」

「ほぅ、ではプロジェクトは完遂したと?」

「はい。改良版の【ハルジオンチェス】は完成しました。現在は、錬金術ギルドと細工師の人達が微調整を行っています。もちろん、試運転も確認しました。かなりの出来映えだと私は思ってますよ」

 俺は、自信をもってそうエリックさんに伝えた。


「セイジロウがそう言うならかなり期待して良いかのぅ。して、どんな感じになっているんじゃ?」

 と、エリックさんは興味津々で尋ねてきた。


「わたしも気になりますっ! ここに来る道すがら聞きましたけど、もっと詳しく聞きたいわっ!」

 フローラさんも俺の顔を見ながらそう言ってきた。


「そうですね、別にもったいぶるつもりはないですが、少しだけ詳しく話しましょう。あとは実際に体験していただければと思います」

 俺は改良版のハルジオンチェスの概要と仕様を話し、今後の展開や予想できる事を二人に話していった。


 エリックさんとフローラさんは一喜一憂しつつ、俺の話を聞いていた。時折、エリックさんは思案するような顔をしながら聞いていた。

 

「--と、こんな感じですかね。どうでしょうか、エリックさん?」

「ふむ。ワシが思っていた以上に今後が楽しみになるような事ばかりじゃのっ! あとは実際に見てからじゃが、まぁ問題ないじゃろうな! うむ。良くやったと言わせてもらおうかの」


「ありがとうございます、エリックさん」

「セイジロウさん、おめでとうっ! それから、お疲れ様」

「ありがとう、フローラさん。フローラさんもお疲れ様でした。フローラさんを始め皆さんがいたからこそ出来た事ですよ」

 と、俺とフローラさんは互いに称え合った。


「ふむふむ。二人の関係も仲良くあって良いもんじゃの。さて、ここにプロジェクト完遂はなったわけじゃが、報酬の話をしておかんとの。して、セイジロウは何を求める? ワシの裁量で出来る限りの事はするつもりじゃが」


「それに関しては幾つかあるのですが....」

 と、厚かましい考えではあるがやはり見返りは必要だ。


「ふむ、話を聞こうかの」

「まず、プロジェクトに関わった人達に何かしらの報酬をお願いします。各ギルドはもちろん、細工師の方達に舞台を設置してくれた建築士の人達に。そして、今回の一番の功労者である錬金術ギルドのギルバートさんとその仲間達にも。その人達がいなければ完成は無かったと私は思います。なので、これが私が望むものになります」

 と、以前から考えていた事をエリックさんに話した。


「セイジロウさん。それだとセイジロウさんに対する報酬がないですわ。今回はセイジロウさんの発案でプロジェクトが開始され完遂したんですから、セイジロウさんもきちんと報酬を受けとるべきです」


「いえ、私は特に何もしてませんよ。せいぜい、各ギルドとの繋ぎを少々しただけです。魔石に関しても冒険者ギルドで依頼を受けて報酬ももらっています。それに比べてプロジェクトに関わった人達は仕事とはいえ微々たる金銭でここまでの物を造り上げたのです。称賛されるべきはその人達ですよ」

 と、俺は伝えた。


 前の世界でもそうだが、サラリーマンと言うのは会社の歯車、駒の一つのような扱いを受けてる場合が多い。

 会社や社会に貢献した偉業を成し遂げても表舞台に出てくる事は限りなく少ない。出てきたとしてもせいぜいチラ見程度だ。あとはプロジェクトの担当者や会社や企業が功績をさらっていく。


 俺はそのような事を理解はしてるが納得はしていなかった。一番頑張っているのは現場で汗をかき動いてる人達だと、各方面で細かい調整をしながら一生懸命に動いてる現場の人達がいたからこそ、偉業というのは出来上がる。


 だからこそ、プロジェクトの発案をしただけで多大なる報酬や称賛を浴びるのはどうかと、疑問に思う。が、発案がなければプロジェクトが生まれなかったのも事実だ。なので全部が全部、現場が一番と言うつもりはないが、プロジェクトに携わった人達が平等に称賛されるべきだと俺は思う。


「まぁ、セイジロウの言う事も一理あるがの。じゃが、やはりセイジロウがきちんと報酬を受け取る、称賛をうけねば他の人達も素直に喜べんじゃろ」

「そうです。セイジロウさんの言う事は理解できますし納得もできますが、それでも何も受け取らないのはどうなのですか?」

 と、エリックさんやフローラさんはそう言ってくる。


「....では、改良版のハルジオンチェスの永久無料券とか下さい。商業ギルドが興業化するでしょうから、その無料券があればいつでもタダで遊べますからね」

 と、伝えると二人は呆れた顔で俺の顔を見てから溜め息を吐いた。


「はぁ.....良いじゃろ。あとはワシが考えておくかの。その方が良いじゃろ」

「そうですね、お祖父様に任せますわ。セイジロウさんはこういう人だと改めて思い出しましたわ」

 と、何やら二人で通じあっていたので俺は温くなったお茶を飲んで口を潤した。


「さて、これで一段落したわけじゃが、今後はどうするんじゃ?」

「そうですね....正直今は考えていませんね。しばらく忙しかったので少しのんびりと過ごそうかと思ってるぐらいですかね」

「わたしはいつもと変わらないので、特に何もありませんよ?」

 と、エリックさんの質問に答えた。


「そうか、ならしばらくはハルジオンにおるわけじゃな。なら、少し落ち着いたら食事でもせんか? これからハルジオンチェスについて少しばかり各ギルドと調整を行うのに時間を割くことなるんじゃが、それが落ち着いたらどうじゃ?」


「えぇ、私は構いませんよ。フローラさんはどうですか?」

「わたしも平気よ。セイジロウさんと一緒なら良いわ」

「なら、追って連絡しよう。しばらくはゆっくり過ごしておいて待っていてくれ」

 と、話も一段落しあとは適当に雑談をしてからエリックさんの屋敷をあとにした。


 それから、俺は錬金術ギルドと商業ギルドに立ち寄りエリックさんの屋敷で話した内容を伝えた。フローラさんは、冒険者ギルドへと戻りアンナさんに話を伝えてもらった。



 こうして改良版のハルジオンチェスのプロジェクトは無事に終わりを告げた。

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