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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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プロジェクト開始・2

No203

プロジェクト開始・2




 改良版のハルジオンチェスに関してのプロジェクトが始まりまずは錬金術ギルドへと俺は足を運んでいた。

 冒険者ギルドでの繋ぎ役はアンナさんが担当し、前領主であったエリックさんにはフローラさんが担当する。

 俺は、錬金術ギルドのギルバートさんと商業ギルドのセブリスさんを担当する事になった。


 リリアーナとマダラには事情を説明してしばらくパーティーとしての活動は休止し、各個人で動く事になった。ただし、情報や状況の連絡は出来る限り共有する事と決めた。


 さっそく錬金術ギルドの一室でギルバートさんと話を始めた。

「--という話を先日冒険者ギルドから話を伺いました。もちろん、喜んで返事をさせてもらいましたよ」

 と、ギルバートさんは言ってくれた。


「ありがとうございます。錬金術ギルドの協力なくしてこのハルジオンチェスは完成しないですからね」

「完成....させたいですねぇ。ですが、やはり難しいですね。素材を変えたり魔力回路の仕様を変化させてみたりしたんですが、思うようにいかないんですよね....」

 ギルバートさんは苦い顔をしながらそんな事を言った。


「やはり難しいですか.....他の技術者たちの意見とかはあったりしますか?」

「えぇ、親しい仲間には相談したりしたんですがやはり一番の問題は指示の伝達ですね。駒自体に判断能力が無い為にどうしても単純な行動しかさせられません」


 やはりそこが一番の難所か......こっちの世界にはプログラミングがない為に起こる事だな。


「では、逆に駒をこちらの指示通りに動かすにはどうすれば良いと思いますか?」


 ギルバートさんは少し思案したあとに話を始めた。


「そうですね.......個人が用意した魔石、要は自身の魔力を込めた魔石を駒に付属させてなおかつ、個別に魔力回路を複数刻めば可能かと」

「それは....また....」


 確かにその方法をとれば可能かも知れないが、そうなると遊びの範疇を越えてしまう。誰もが遊べる物でなくなってしまう。


「やりようはありますが、それはセイジロウさんの本意ではないですよね? もちろん、わたしとしてもそこまでしたいとは思ってません。手軽に誰もが遊べる遊戯だからこそ娯楽ですからね」

「確かに、それでは本末転倒ですから。しかし、これは根本から考え直さないといげせんね」


 それから数時間ほど、ギルバートさんと話をしたが結局良い案が浮かばなかったのでこの日お開きとなった。


 俺は錬金術ギルドを出るとメイト通りを歩きつつ考えを巡らした。


「まさか、チェスを自在に動かすのがこんなに難しいとは....やはり、魔法が使えると言っても何でもかんでも出来るとは限らないんだな。ファンタジー小説やアニメなんかだと現実離れした事はみんな魔法で何とかなってるけど....現実は厳しいなぁ」


 馴染みの串焼き肉の露店で数本串焼き肉を買い、空いた小腹を満たしてから冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドへ着くとリリアーナは給仕の依頼をしていて、マダラはいつもの場所で寝転がっていた。

 ギルドの食事処内は暇を持て余した冒険者達やリリアーナのファンらしい冒険者が食事を取りつつガヤガヤしている。


 俺はそんな冒険者たちを横目にいつものカウンターへと腰かけた。

『なんじゃ、今日は早く帰ってきたのぅ。用は終わったのか?』

 と、寝転がっていたマダラが気づいたのか、思念を飛ばしてきた。


「あぁ、ちょっと行き詰まった。話があまり進まなくてさ、今日はお開きだよ。ビルドさんっ! フライドポテトと唐揚げとエー.....果実水を下さい!」


「おぅ、セイジロウかっ! なんだ、今日はもう暇なのかっ?」

「えぇ、あまり状況が良くないので...」

 俺はビルドさんに注文を頼んでそれからカウンターの横に置いてあるハルジオンチェスを手元に寄せた。


『なぁ、このハルジオンチェスを自由自在に動かすにはどうしたら良いと思う? マダラならどんな風に魔力を使って駒を動かす?』

 俺は、チェスの駒を指で弄くりながらマダラに思念した。


『なんじゃ、ワレにそんな事を聞いても分かるわけなかろうが。それより、そろそろ体が鈍ってきたぞ。リリと近いうち依頼を受けようと思うがセイジロウはどうするんじゃ?』

「そんな事って....まぁ、そんな事か。んで、依頼か....うーん、ちょっと考えさせて」


『ふん、あまり戦闘から離れるといざという時に動けなくなるぞ? それに、リリは着実と実力を上げてきておるぞ』

「うーん.....」

 と、生返事を返しつつ頭の中はハルジオンチェスの事を考えていた。すると、注文した料理をリリアーナが運んできてくれた。


「セイジロウ、お帰り。んっ。」

「あぁ、リリアーナ。ただいま。そして、ありがとう、いただくよ。食事処の依頼はどう? 冒険者たちの反応は平気?」

「うん。みんなと仲良くなった。ちゃんと、お酒は一杯だけ」

「はは、それは何よりだ。さっきマダラと話したけど近いうちに依頼を受けて街の外に出るの?」


「そう考えてる。訓練もしてるけど実戦は必要なの。セイジロウはどうする?」

「まだ、行き詰まっていてね。先に何とかしたいのが正直なとこかな....」

「その、ハルジオンチェスが問題なの?」

 と、リリアーナは俺が指で弄ってるチェスの駒に視線を向けた。



「そうなんだよね。この駒を魔力で自由自在に動かしたいんだけど、その方法がちょっと難しくてね。それで、話があまり進まないんだよね」

「わたしはよく分からないけどセイジロウならきっと出来る。でも、無理はしちゃダメ」

「ありがとう、リリアーナ。無理しない程度にやってみるよ」

 そう言ってリリアーナの頭を撫で、リリアーナはまた給仕の仕事に戻った。


 リリアーナと入れ替わるようにビルドさんが今度はやってきた。

「よぅ、なんだか浮かない顔をしてるじゃねぇか? そんな顔をしてるとおっさんがさらにオッサンになるぞ?」

「ずいぶんとありがたい慰めですね。正直、本当にそうなりそうですよ」

「なんだ、いつになく落ち込んでるようだ。ちょっと話を聞いたが、ハルジオンチェスに問題があるみたいだが.....」


 俺は今着手してるプロジェクトを簡単にビルドさんに話した。


「--そりゃ、頭を抱えるわけだ。だが、そんな事が出来たら楽しくなりそうだな。この駒が自在に動けばさぞ盛り上がるだろうぜっ! 良い暇潰しだっ!」

「そうですね。俺も面白くて楽しいと思ったんですけど、現実は厳しくてなかなか上手く行かないんですよ」


「そりゃあ、なんでもかんでも上手くいってたら俺ら冒険者たちは今頃平和に暮らしてるさ。んなことより、暇ならやるか?」

 と、ビルドさんはハルジオンチェスを指差した。


「そうですね。別に構いませんよ。賭けはどうします?」

「んじゃ、まずは料理一品から賭けるか」

 そうと決まりハルジオンチェスの駒を並べて対戦が始まった。


 俺は、いつも通りに自身の駒を減らし手加減用の配置にしてから駒を動かしていく。

「そういえば、ビルドさんは魔法には詳しいですか?」

「いや、それほどじゃねぇな。俺はそっち方面は不得手でな。せいぜい、表面的な事しかしらねぇよ」

 と、ビルドさんは手堅い感じ駒を動かしてい攻めてきた。


「そうでなんですね....ちなみに、ビルドさんなら魔力で駒を動かすにはどんな方法を考えますか?」

 俺はビルドさんの駒の配置を読み自身の駒を動かす。


「駒を動かすねぇ.....俺は魔法の才がねぇからなぁ。だが、自力で動かせないなら別々にやれば良いんじゃねぇか?」

「別々に?」

 唐揚げを食べながら聞いた。

 唐揚げを食べるとエールが飲みたくなるなぁ。


「この小さな駒を自在に動かすにはそれなりの知識や技術が必要なんだろ? その辺は詳しく知らねぇが全部を駒につぎ込むの無理だろ。こんなちいせぇ駒によ。まぁ、セイジロウが言ってる改良版はもう少しデケェんだろうが....なんにしても普通に考えて無理だろ? だから、駒とは別に動かす動力みたいな物があれば何とかなるんじゃね?」

 と、ビルドさんは俺の配置してる駒の間隙を上手くついてきた。何度も対戦してるからかこちらの手の内も読まれてきた。

 俺は一旦、攻め手を止め駒を防御の配置にした。


「駒とは別に....ですか」

 俺はビルドさんの言葉を頭の中に留め、思考をめぐらした。


 それからしばらく会話がなく淡々とハルジオンチェスを行いつつ、頭の中では自分の知ってる知識、前の世界でのアニメやファンタジー小説に出てくる知識を思い出していた。


「おぃ、お前の番だぞっ!」

「えっ、あ、はい! って、いつの間に!」

 ボンヤリとチェスを打っていたらいつの間にか戦況が逆転していた。あと数手もあれば詰んでしまう状況だった。


「ちょっと、不味いですね....なら....こうして」

「チッ、気付きやがったか」

「なかなか、上手くなりましたね。手加減してるとはいえここまでとは.....ですが、まだまだ甘いですよっと!」

「おまっ! そりゃ、ちょっと待てっ!」

「いや、待ちませんよっ。きったねぇな!」

「きたなくないでしょ! 人聞きの悪い事を言わないで下さいよ!」

 と、とりあえず戦況を戻せる事に成功した。


「いやぁ、ちょっとヒヤッとしましたよ。いつの間にそんな上手くなったんですか?」

「お前がいない間は他の冒険者たちとやっていてな。それなりに冒険者の間では広まりはじめてるぞ」

「へぇ、他の冒険者たちですか」

「おぅ、良い暇潰しになってるぞ.....ホラ、チェックだっ!」


「それなら作ったかいがありますね......まだまだ詰めが甘いですね」

「ふん、あぐらをかいていられるのは今のうちだっ!」

「そうはいきませんよ。はい、チェックです」

「なっ! くそっ! これでどうじゃっ!」

 なかなかに白熱した展開だったが結局数手でチェックメイトとなりビルドさんの勝利はまた後日となった。


 そしてこの日は夕食をビルドさんのところで食べてから宿へと戻った。


 ハルジオンチェスに関してはいくつか思いついた事がありまた錬金術ギルドへと向かうこととなる。

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