ハルジオンチェスの説明・2
No199
ハルジオンチェスの説明・2
フローラさんのお祖父様、エリックさんとフローラさんが【ハルジオンチェス】を俺の説明を受けつつ遊戯している。
駒の動かし方やルールの説明をしながら何度かハルジオンチェスを行った。時間もある程度過ぎ時刻は昼に近くなっていた。
「もぅ! お祖父様、少しは手を抜いて下さい! これじゃ、わたしが全然楽しくありませんわっ!」
「ほっほ、ワシは楽しいがの。フローラはこの手の遊戯は苦手なようじゃな。ほれ、これでチェックじゃ」
「あっ! セイジロウさんっ! これはどうするの? このままじゃお祖父様にまた負けちゃうわ!」
「はいはい、ならこの駒を動かして下さい....(って、言っても無理なんだけど。エリックさんも少しは手を緩めてもいいのに)」
「これで、どう?」
「ふむ、フローラはもう少し先を読むべきじゃな。ほれ、またチェックじゃ。ついでに、チェックメイトじゃな」
「えっ?....えーっ! セイジロウさーん! また、負けちゃった....」
「はは、負けちゃいましたね。まぁ、エリックさんの方が飲み込みが早かっただけですよ。暇な時は私と一緒に練習しましょうか。さて、そろそろ一度休憩をしませんか? だいぶ、ハルジオンチェスについては理解できたようですし?」
「そうじゃな....そろそろ良い時間じゃし昼食にしようかの?」
と、エリックさんは部屋に備え付けられてるベルを鳴らすとすぐに執事が現れ昼食の指示を出した。
「フローラもセイジロウも食べるじゃろ? ハルジオンチェスは楽しめたがそれだけじゃあるまい?」
「やはり、分かりますか。ハルジオンチェスの説明も本題ですが、今回の一部です。話は昼食後にします」
「なによ、二人して知った風な感じを出して.....セイジロウさん、あとでみっちりとハルジオンチェスに付き合ってもらいますよ? お祖父様も再戦を受けてもらいますからねっ!」
「ほっほ、よかろう。ワシは暇な時間が多いからの、いつでも受けよう。さて、昼食が出来るまでしばし時間があるからの。さっそく再戦を受けるがどうじゃ?」
「んー、やるわって、言いたいけど止めとくわ」
「なんじゃ、せっかく孫の相手が楽しくなってきたのにのぅ。なら、セイジロウの話を聞くかのぅ。色々と聞きたい事もあるしの」
それから昼食が出来るまで他愛ない話から少し突っ込んだ話、昼食が出来て食事中も話は続き根本的な部分をボカシながらの会話をした。
エリックさんは俺の話を聞きつつたまに、答えにくい質問を幾つかしてきたが上手く捌けたと俺は思ってる。が、多分何かしらには気づいてるとは予想してるが今はまだ言う段階ではない。
そんなこんなで昼食の時間も終わり、小休憩後にハルジオンチェスの話に戻った。
「それでは、ハルジオンチェスの事は大まかに理解できたと思ってます。それで、現在私が頭を悩ませてる問題を話しましょう」
「ふむ、たんにハルジオンチェスを製作するならこれで依頼は完了じゃったんじゃがの。そうは行かなかったようじゃな」
「そうなの? お祖父様はセイジロウさんにどんな依頼をしたの?」
「セイジロウにはの、こう依頼をしたんじゃよ"フローラが欲しければまずはワシを納得させよ。ハルジオンで功績の一つも残せないような者にフローラを預けられん。ついでに、氷雪季は暇じゃから何か面白いのを作って欲しいの。ルインマスのように興行できる物ならなお良しじゃな。これはワシからの正式な依頼と共にセイジロウの格を見定めるものじゃ" と、それで受けるか受けないかを聞いたんじゃよ」
「当然、私は受けると答えました....いえ、答えさせられたわけですかね?」
「そんな話....お祖父様? わたしをダシにして無理やり受けさせたのですか?」
フローラさんは目を細目エリックさんを睨んだ。
「フローラよ、そんな顔をすると可愛い顔が台無しじゃよ? フローラの名を出したのはちと、あれじゃったが仕方なかろうて。ワシだけならともかく、ワシの息子を納得させるにはある程度の功績は必要じゃ。冒険者としての実力はあるじゃろうが今はそれだけじゃ。ルインマスの街の話も聞いておるがハルジオンでは何もしておらん。せいぜい新しい甘味と料理を考案したぐらいではな」
「それだけでも凄い事だと思いますっ!セイジロウさんはこの一年でそれだけの功績を築いたんですよ? 一介の冒険者ではまず無理です。冒険者ギルドのマスターも一目置いてますし、ルインマスのギルドマスターもそうですっ!」
「ほれほれ、ちと落ち着かんかフローラ。セイジロウなんてそしらぬ顔で茶を飲んでおるぞ?」
と、その言葉を聞いたフローラさんは俺と目があった。
「セイジロウさんっ! 何を他人事のようにお茶を飲んでるんですかっ!? セイジロウさんの話をしてるんですよ!?」
「いやぁ、フローラさんがあまりにも私の事で必死に話をしてくれるので話に入るタイミングが.....それに、好きな人が自分の事のように必死になってくれるのが嬉しくてつい」
「それは....セイジロウさんとわたしの事ですから必死になりますっ! それより、そんな難題を受けるなんて....一言いってくれても....」
「いや、言ったらこうなりますよね? それに、フローラさんの事を出されたらさすがに引けませんから。それに、見返りもちゃんとありますし」
「見返り?」
「えぇ、見返りです。いわゆる、報酬ですね。私は冒険者ですからね、当然依頼には報酬がつきます。エリックさんは、私とフローラさんの仲について尽力すると言ってくれました。この部屋で対面した時に言ってたのを覚えてますか?」
「えっと....要ってたように思います」
「領主の娘であるフローラさんをいづれ娶るにはそれなりに認められ必要があります。それはフローラさんも理解はしてますよね? 納得してかは分かりませんが」
「まぁ、意思にとは別にそれは分かります。これでも、領主の娘である自覚はありますから」
「そこで、エリックさんの依頼です。エリックさん自身は私たちに対して好意的です。たぶん、フローラさんの紹介の仕方もあったのでしょうが、初対面からなぜかそんな感じでした」
エリックさんの方に視線を向けるが、お茶を飲んでるだけで口は開かなかった。
「それはそれでありがたいですからね。さらに、エリックさんからの依頼を成功させれば頼もしい後ろ楯が出来ます。別に誰かと争うわけではないですが」
「それはそうですけど.....」
「ほっほ、まぁなんじゃ。とりあえず、肩書きや功績はあった方が良いということじゃ。べつに、ワシはセイジロウが憎いわけではないんじゃ。ただ、説得する為の材料はあった方が良いじゃろ? それに、ハルジオンチェスだけを見てもなかなかに面白いしの。さて、少し話が逸れたが問題の話をしようかの?」
と、エリックさんの切り返しでハルジオンチェスの問題に話を戻した。
「ハルジオンチェスを製作する事で起きる、または起こると予想する問題ですが、一つは単価ですね。さきほどのハルジオンチェスは売るとした銀貨三枚ほどになります。娯楽遊戯としては高いと思います。なので、代案として貸し出しをしてはどうかと今は考えてます。もちろん、購入したい人がいれば購入出来ます」
「ふむ、銀貨三枚のぅ。せいぜい、銀貨一枚程度に抑えたいが....」
「製作に関する技術料とハルジオンチェスの価値....ですかね。技術料に関してはあれだけの細工です。レイシェルさんでなくても作り手に対する対価はそれなりになるでしょう。そして、ハルジオンチェスの価値ですが....」
ここからはまだ草案でギルバートさんやセブリスさんにも話していない事だ。