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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
196/226

リリアーナの実力

No196

 リリアーナの実力



 冒険者ギルドの訓練場で俺とビルドさんはリリアーナとマダラの訓練を見ている。

 最初は互いの様子見から始まった訓練は次第に魔法も使うようになった。

『なかなか素早くなってきたのぅ、リリよ』

「あれぐらいはかわせる。それに、まだまだ早くなるから」

「ほぅ、それは楽しみじゃ!」

 と、訓練中でも合間に軽口を言いながら互いに攻防を繰り返していく。


 それを見ているセイジロウたちは、

「これは.....凄いな....目で追うのも大変だ。リリアーナはここまで凄かったのか?」

「なんだ? セイジロウは知らないのかっ?」

「魔物の討伐依頼は何度か受けてますが、リリアーナ単独ではやらせなかったので。模擬戦もしたことはありますけど、ここまではなかったですね」


 リリアーナとマダラの訓練を見ると、互いに近接戦や魔法を使った攻撃を繰り返し行っていた。


 リリアーナは身軽さをいかしながら、短剣でマダラに攻撃を仕掛けるがマダラは巧みにかわしていく。さらに、リリアーナは自身の得意とする風魔法をそれすらもマダラはかわす。


 マダラは向かってくるリリアーナの攻撃をかわしつつ、自分でも前脚や尻尾を使い攻撃するがリリアーナは素早くかわしていった。さらに、マダラは火魔法や土魔法を放つがリリアーナも見分けながらかわしていった。


 互いに攻撃を繰り出すが決定打はいまだになく、マダラとリリアーナの訓練は拮抗してる状態だ。


「マダラやリリアーナの様子を見る限りじゃ、まだ互いに実力を全部は出してないようだな」

「そうですね。実際、マダラの本気もリリアーナの本気も見たことないのでどちらが優勢かはわかりませんね」


「まぁ、これだけの人の目があれば手の内を見せるのもあれだしな....」

「そうですね。まぁ、訓練ですから本気は出さないでしょう」


 二人の話はそれなりに的を射ていた。リリアーナは自分より巨体な獣との戦闘経験を積むためにマダラと訓練をし、マダラはそんなリリアーナの目的の為に訓練に付き合っている。魔法に関してはおまけみたいなものだし、魔物でも魔法を使ってくるものもいるのでそん範疇で使っている。


『訓練を繰り返すごとに動きが良くなっていくのぅ。なかなかの上達ぶりじゃな、リリ』

「それは当然。遊びで訓練をしてるわけじゃない」

『まぁ、そうじゃな。なら、少し速度を上げるかのぅ。ついてこれるか、リリよ』

「まだまだ、平気」

 と、互いに動きつつもまだ会話をする余裕がありリリアーナとマダラの訓練はさらに激しくなった。


 リリアーナとマダラの訓練を見ている他の冒険者たちは、

「おぃおぃ、なんつう動きをするんだよ....あれはさすがにねぇだろ」

「確かに動き速いが、攻撃が単調だな。可能ならもう少しフェイントを混ぜると良くなりそうだが....」


「あの嬢ちゃんは魔法まで使うのかっ!? あの動きから魔法を放たれるとさすがに...」

「ってか、あの獣は何なんだよっ! あんな速く動かれたら当たらねぇよ!」


「あの獣って召喚獣なんだろ? あの嬢ちゃんが召喚してんのか?」

「いや、ありゃ黒白使いのおっさんの召喚獣だな。ほら、あっちに座ってるおっさん達がいるだろ? あの、黒いコートを着てるやつが召喚主だ。嬢ちゃんはあいつのパーティーメンバーだよ」

「あんな獣を召喚するなんて何者だ?」

「去年あたりにフラッとハルジオンに来たらしいぜ。それで、プリンとかピザとかを作ったやつだ」


「なんだそりゃ? 召喚獣を連れてるのに料理を作ってるのか?」

「いや、料理はついでらしいぞ? ずいぶん前に東の砦でゴブリンとオークの混成団が現れたのは知ってるだろ?」

「あー、話だけならな。丁度そのころは違う街にいて帰ってきてからその話を聞いたぜ」

「そうか。まぁ、その東の砦で活躍したのがあのおっさんと目の前で嬢ちゃんと戦ってる召喚獣なんだよ」


「そりゃ.....まぁ、なるほどな。だが、それは召喚獣が強いからじゃねぇのか? いまだってあんな動きをしてるんだぜ?」

「たしかに、それもあるがあの召喚獣を連れて歩いてるやつが弱いなんてあるのか? 聞いた話じゃだいぶ手懐けてるらしいぞ?」

「ほんとかよ? あのおっさんが?」

「ああ、あのおっさんだ」

 と、セイジロウの知らないところでそんな話がされていた。



 そんなこんなでリリアーナとマダラの訓練が始まってからそれなりの時間が経ち始め、そろそろ決着が付く頃合いになってきた。

「そろそろ、決着つける」

『そうじゃの。前回はワレが降参したが今回はワレが勝たせてもらうかのぅ』

「そうはいかない。前と同じようにわたしが勝つ」

『同じ手は二度は通じんぞ。今回はワレが勝つ』

 と、互いに決着をつける動きになっていった。


 セイジロウとビルドは、リリアーナとマダラの動きが変わった事に気がついた。


「おっ! 少しが動きが変わったぞ!?」

「あっ、ほんとですね。リリアーナは少し距離をとって動いてますね」

「マダラは、リリアーナの姿をとらえているが何か警戒してる感じだな」


 リリアーナはマダラの側面や後ろからの攻撃に切り替えさらに、一撃離脱のような感じで同じ場所に留まらないようにしてるようだ。


 マダラはそんなリリアーナの攻撃をかわすなり、防ぐなりするがリリアーナの後を追わずにその場に留まり動きの変わったリリアーナを警戒してるようだ。


 そして、しばらくそのような攻防が繰り返し行われたが先手を打ったのはマダラだった。

『ふんっ! どうやら攻めあぐねてるようじゃからワレから向かう事にしたぞっ!そらぁ!』

 と、リリアーナが攻撃を繰り出すと同時にマダラもリリアーナに向かって半回転して尻尾の攻撃を繰り出した。


 リリアーナは側面からくるマダラの尻尾の攻撃を跳躍してかわす。しかし、それを読んでいたマダラはさらに、回転して遠心力が加わったまま半回転から一回転に切り替え、前脚を空中にいるリリアーナに向けて振るった。


 訓練とはいえ、遠心力のついたマダラの攻撃をくらえばただではすまない。それが幼い少女となればなおさらだ。


 だか、結果は皆が思うような事にはならなかった。リリアーナは迫りくるマダラの前脚をさらに空中でかわした。その様子は明らかに通常の動きではなかった。

 攻撃をかわされたマダラは驚くどころかまるでかわされるのを分かっていたかのように、今度は反対の前脚でリリアーナに向かって攻撃を繰り出した。


 対してリリアーナはさらにマダラの攻撃を読んでいた。空中で異常なかわし方をしたリリアーナはさらに鳥が空を飛ぶ様な動きでマダラの迫りくる前脚をかわす。と、同時に風魔法をマダラに放った。


 リリアーナから放たれた風魔法はマダラに直撃するとマダラは態勢を崩した。リリアーナは、空中で態勢を整え地面へと足をつける。が、態勢が崩れたマダラは地面へと倒れると思われたがリリアーナの風魔法の威力が弱かったのか、それともあえて風魔法を受けることでリリアーナの隙を作ったのかは分からないが身を屈めていた。


 リリアーナはマダラの姿を視界には捉えていたが、一瞬マダラの方が速く動きリリアーナへと迫りその巨体で突進してきた。

 リリアーナは防御態勢をとりマダラの突進を防ぐが明らかにその質量が違うため、簡単に後方へと吹き飛ばされた。


 マダラはリリアーナを吹き飛ばすと、すぐにリリアーナへと迫り前脚を振り上げた状態でリリアーナを見下ろしていた。

『リリよ、なかなかに良い攻撃じゃったが少し加減しすぎじゃったな。まぁ、ワレを気遣ったのは分かったがのぅ』

「....これは訓練だから。今回は負けたの。でも、次は負けないの」


 マダラは、地面に伏してるリリアーナの襟元を器用に加えると地面から起こしリリアーナの体に自分の体を寄せて猫なで声を出した。


 マダラとリリアーナの攻防を見ていた冒険者たちは、その激しい戦いを驚きの顔で見ていたがすぐに歓声を上げて互いを称賛した。しばらくの間、ギルドの訓練場には冒険者たちの声が響いていた。


 そんな中、セイジロウとビルドは口をあんぐりと開けて固まっていた。

「おっ、おぃセイジロウ....嬢ちゃんはこんなに凄いのか......」

「えっ、いや、俺もビックリですよ.....まさか、あそこまでマダラと渡り合えるなんて.....」


「お前、大丈夫か? 嬢ちゃんとマダラのせいで影が薄くなっていくぞ?」

「いや、まぁ、それはそれで別に良いですけど....」

「そんな事言ってると、ただのおっさんになっちまうぞ?」

「いや、元からただの中年ですから....」

「そういやそうだったな。しかし、すげぇな、あの嬢ちゃんは。これからさらに嬢ちゃんの回りは騒がしくなるぞっ!」


「そうですね。あの見た目にあの実力ですからね。まぁ、マダラが傍にいる限りは大丈夫でしょう」

「ずいぶんとのんびりした考えだな? とりあえず、嬢ちゃんにはお前からある程度の話はしとけよ? いらぬ面倒に巻き込まれないようにな」

 と、ビルドさんとの会話を切り上げて俺はリリアーナとマダラの方へと向かった。

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