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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
195/226

注目を浴びる少女

No195

注目を浴びる少女




 翌日、肌寒さを感じて目を覚ます。いつものように軽く身支度を整えて宿の食堂へと向かった。

 食堂もいつものようにそれなりに冒険者や旅人の姿が見える。空いてるテーブルへと座り女性給仕に黒茶を頼んでリリアーナが起きてくるのを待った。


 ぼんやりと食堂の窓から外の風景を見てると、対面へと座る音が聞こえ顔を向けた。

「おはよう、セイジロウ」

「おはよう、リリアーナ。さっそく、朝食を頼む?」

「んっ。あと、黒茶も」

 リリアーナが起きてきたので女性給仕に朝食の準備を頼んだ。


「リリアーナ、今日は俺も一緒にリリアーナとマダラの訓練を見学していいかな?」

「いい。今日はセイジロウは用がないの?」

「そうだね。今日は無いかな。それに、マダラとリリアーナの訓練の光景をみたいかな。昨日も少し話したけど、どうやら冒険者たちの間ではそれなりに話が回ってるらしくてね。一度見てみよかなって」


「わかった。なら、今日はいつもよりやる気を出す。マダラとの勝負もあるから」

「まぁ、やる気はあっても良いけどあくまでも訓練だから。怪我はしないようにね」

 と、今日の予定が一つ決まると丁度良くテーブルに朝食が用意された。


 俺とリリアーナは朝食を食べると身支度を整えて冒険者ギルドへと向かう。メイン通りの露店で買い溜めしつつ、隣を歩くマダラの影の中へと保管していく。


 冒険者ギルドに着くとビルドさんがいる食事処に顔を出した。ちなみに、マダラだがここしばらくリリアーナと行動をともにしていたので今さらギルドに入る度に影の中に入ってもらうのもなんなので、普通にギルド内に入った。

 冒険者ギルドの職員も慣れたようでマダラについては別に何も言わなかった。召喚主である俺にも特に何もなかった。すでに、それなりの周知の事実なのか、マダラ自体が危険と判断されてないのか理由は分からないがお咎めがないならそれでいい。


「おはようございます、ビルドさん」

「おうっ! セイジロウにリリアーナ、それとマダラかっ! 飯でも食べるかっ?」

「俺とリリアーナは食べました。マダラも来る途中で露店の料理を食べ--」

『セイジロウ、ワレは食べたいぞっ! リリと一緒の時はここで腹を満たしてから訓練をしていんじゃ』

 と、マダラからの思念が頭に響いた。


「そうなの? リリアーナ、マダラは食事をしていたの?」

「うん。わたしはお茶を飲んでマダラは料理を食べてた」

「そぅ、ならいつも通り食べて良いよ。ビルドさん、マダラがいつも食べてる料理をお願いしても良いですか? 俺とリリアーナはお茶を下さい」


「おぅよっ! んじゃ、ちょっと待ってなっ!」

 と、朝から威勢の良い返事をしたビルドさんは手早くマダラの料理を作り始めた。俺とリリアーナはカウンター席の隅に座り、マダラは俺たちの横の定位置となってる場所に寝転がった。


 しばらくリリアーナと雑談をしてると、不意に声をかけられた。

「セイジロウさん、おはようございます」

 と、声をかけられた方を向くとそこにはミレアーナさんがいた。


「ああ、ミレアーナさん。おはようございます」

「先日お会いした時以来ですね。最近は見掛けませんでしたけど忙しいのですか?」

「えぇ、それなりにちょっと用事がありまして。それより、ミレアーナさんはどうしてここに?」


「どうしてと言われても、今日は朝からの仕事なので。普段は夕方からなんですが、昨日ビルドさんから朝に来てほしいと言われしたから」

「ビルドさんに?」

 と、料理を丁度作り終えたのかマダラの料理が目の前に用意された。


「おぅ! 出来たぜっ! ホラ、マダラに出してやれ! それと、ミレアーナ! 朝から悪いなっ!」

 と、俺はマダラの料理をマダラに差し出しそれから話に戻った。


「それで、今日はビルドさんに何か用でもあって呼ばれたんですか?」

 と、カウンターの向こうでエプロンを付けたミレアーナさんに聞いてみた。


「さぁ? どうなんでしょうか?」

 と、なんとも暢気な答えが帰ってきた。

「別に特別な用はねぇが、リリアーナとマダラの訓練をじっくり見れるんだ。たまには、息抜きしたっていいだろ? それに、ちゃんとミレアーナの事を考えてガッソだって呼んでるしなって....ミレアーナ、ガッソはどうしたんだ?」


「ガッソでしたら受付で手続きしてますゃよ? なんでも、一緒に手伝うとかで依頼を受けるそうです」

「依頼って、俺が出してる手伝いの依頼か? かぁー、ちゃっかりしてんなぁ。まぁ、良いけどよ」

 と、話してると本人がやって来た。


「ビルドさん、今日はよろしく頼む.....セイジロウさん、お久しぶりです」

 と、以前と変わらないガッソさんが挨拶をしてきた。


「お久しぶりですね、ガッソさん。遅れながらミレアーナさんとの結婚おめでとうございます」

「ありがとうございます。ミレアーナもあれから元気になってきました。これからも二人で頑張って生きていたい思ってますよ」

「えぇ、無理せずに頑張って下さい。私に出来る事でしたら遠慮せずに声をかけて下さいね」

「ありがとうございます。その時があれば頼らせてもらいます。あと、うちのメンバーがセイジロウさんに会いたがってました。暇があれば夕食時に顔を出してあげてください。たいていはここで飲み食いしてすから」

 と、久しぶりあったガッソさんと世間話をした。その間、リリアーナとミレアーナさん、ビルドさんの三人は雑談しつつマダラは料理を食べ終わり食事休憩をしていた。

 しばらく、ゆっくりした時間を過ごしていたがそろそろ訓練の時間なのかリリアーナが動き出した。


「セイジロウ、そろそろマダラの休憩も終わり。一緒に訓練する」

「そぅ? じゃ、俺も一緒に行くよ」

「おぅ! んじゃ、俺も行くか。悪いがミレアーナとガッソにはちょっと任せるから頼んだぞ! 何かあれば呼びに来てくれ」

 と、ビルドさんはつまみ片手に一緒に付いてきた。


 リリアーナとマダラは冒険者ギルドの訓練場内に入るとさっそく準備運動を始めた。

 俺とビルドさんは訓練場の端にある長椅子に腰かけた。

「さて、前に見た時はそれなりに激しかったが今日はどうなるかなっ?!」

 と、袋に入れたフライドポテトを食べながら言った。


「リリアーナに話を聞いたけど、そんなに激しいのですか? ってか、完璧に観戦する姿ですよね? 俺にも少し下さい」

 と、ビルドさんが食べてるフライドポテトを俺もつまんだ。


「なんだよっ? セイジロウも食べるならもっと作ってくれば良かったぜっ!」

「いや、食べるなら声をかけて下さいよ。何やら端っこでやってると思ったら....しかし、気付けは観戦しようとしてるのは俺たちだけじゃないみたいですね?」


「だから言ったろ? 冒険者たちの間でそれなりに話が回ってるって。だいたいこの時間になるとリリアーナとマダラが訓練を始めるからな。それに合わせてやっくるんだろうぜ! 他に大してすることもないからな」


 氷雪季は基本的に冒険者は依頼をあまり受けない。護衛や街中の依頼なら別だが魔物の討伐や遠出となれば生活に困窮してない限り危険は避ける。

 となれば、街中で暇を持て余す冒険者たちがする事と言えば、身内での賭け事や酒飲み、娼館通いぐらいた。そこに面白い事がさらにあれば興味を示さないわけがない。


 リリアーナとマダラの戦闘訓練は娯楽の一つになったわけだ。

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