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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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試作品ハルジオンチェス・後編

No194

試作品ハルジオンチェス・後編




 俺は試作品の【ハルジオンチェス】についての説明を商業ギルドで受けていた。


 テーブルの上に置かれたハルジオンチェスの盤面の説明をギルバートさんは続けた。

「セイジロウさん。先ほど魔石に魔力を流してもらいましたが、これはチェスの駒を動かすためともう一つの仕掛けのためです」

 と、ギルバートは言って簡易な駒をチェス盤に置く。すると、チェス盤に置かれた駒はほんのりとチェスの上に浮き上がった。


「へぇ、こうなるんですね! それに、盤面に置かれた駒はうっすらと光を帯びてますね。これはどんな仕掛けが?」

「セイジロウさんは、【浮遊鉱石】は聞いた事がありますか?」

 ギルバートさんがそう尋ねてきた。俺は、記憶を探り思い出した事をギルバートに言った。


「......確かルインマスの街にいる時に聞いた覚えがあります。魔力を与えると浮かぶ鉱石だったかと」

「はい、その通りです。一部の鉱山で採掘される鉱石です。その鉱石が各駒に少量含まれてます。盤面に流れる魔力に反応して駒が盤状に浮かんでる形ですね。指で軽く押してあげると.....このように簡単に動きます。別に指で持ち上げて動かせばいいのですが、単なる遊び心みたいな感じなので。それと、駒が光を帯びてるのは浮遊鉱石が魔力に反応してるからですね」


「いえ、これはこれで別に良いかと思いますよ。この光を帯びてる感じも演出的に一役かっていて良いです。それに、本命は別にありそうですし」

 俺は、浮き上がってる駒を幾つか指で動かしつつギルバートさんに尋ねた。


「えぇっ! 仕掛けはこれで終わりじゃないんですよっ! これを見てください!」

 と、ギルバートさんは一つの駒をチェス盤の上に置いた。


「これは....へぇ、ナイトですか。良くできてますね。さっき見た原画と同じですね」

「はい。まだ駒の製作は細工師と錬金術ギルドの細かい話し合いの最中で、とりあえず、試作という事で一つだけ作ってもらいました」


「それはそうですよね。原画を見た限りではだいぶ細かい作業のようですし」

「それはそうなんですが.....私たちがちょっと難しい注文をしてまして....とりあえず見てもらえますか」

「えぇ、分かりました。その駒に何か仕掛けがあるんですよね?」


「はい。すでにこの駒には盤面から魔力を得ている状態です。セイジロウさん、この駒の頭頂部に触れてもらえますか? そこには吸魔の回路ともう一つの魔力回路が刻んであります」

 俺は、ギルバートさんの指示に従い指先でその部分に触れるとナイトの形をした駒の剣が動いた。


「おっ? おぉ、動きましたね! これがもう一つの仕掛けですか?」

「はい。吸魔の回路で魔力を吸いそして、発動の回路で剣を振るったのです。駒には可動式部分を作ってもらい、回路を伝って連動型にしてあります。このように盤面上で簡易な戦闘が出来る仕掛けです」


 なかなか面白い作りだな! ただ、互いに交互に駒を動かして遊戯するんじゃなくて、こんな仕掛けで遊び心を取り入れる形になるなんて。


「なら、駒がわりと大きいのはこの為ですか?」

 前の世界のチェスの駒は数センチほどの大きさだったが、ハルジオンチェスの駒は十センチほどの大きさをしていた。


「それもありますね。魔力回路を刻む為と可動式に耐久力ですかね。色々と試行錯誤した結果、それ以上に小さくしてしまうと不具合が出てしまうんですよ....残念なことに」

 ギルバートさんは本当に残念そうな顔をして少し俯いてしまった。


「いや、別にこれで十分だと私は思いますよ。ギルバートさん達が最良だと考えた結果なんですか」

「そうですか? そう言ってくれると少しだけ気が楽になりますが....やはり、まだまだ力不足を感じますね」

 と、小さな溜め息をギルバートさんはついた。


「まぁ、まだ試作段階ですしこれはこれで良いのでは? 根を詰めても結果が良くなるとは限りませんし」

「そうですね.....とりあえず、試作一号という事で。セイジロウさん的にはどうですか?」


「なかなか面白味があって良いと思いますよ。まぁ、少し大きさが気になりますがそこは仕方ないかと。あとは、これを商品化出来るのかですが、そこは細工師との話し合いと商業ギルド絡みですね。結構、複雑な工程ですし。実際の値段とかはある程度わかってるんですか?」


 そこで、ギルバートさんが少し落ち着かない様子をしめした。

「値段....ですね。......それが、ですね....おそらく金貨一枚は越えるかと....たぶん」

「えっ?....金貨、ですか? そんなに高価になるんですか?」


「はい。試作品を作った段階で算出したんですが、技術面と材質、細工師へと対価などでそれくらいになるかと....効果が高価になりました」

 って、上手い事言ったつもりになってるけど、金貨一枚じゃ買う人が限定されるよ....一月の一般家庭の半分だよ?


「それは、高いですね。では、通常のチェス盤はいくらぐらいですか?」

「そちらは、高くても銀貨二枚ほどですかね。特に仕掛けもないですし、せいぜい細工師への対価が占めるぐらいでしょうし」


 それでも銀貨二枚か.....金貨一枚に比べれば安いがせめて銀貨一枚ぐらいで売りに出したいのが本音だけど.....


「そうですか....とりあえず、もう少し考えて見ましょうか。作り自体はとても良いのですからね。手に取って遊べる人がいないのならそれこそ本末転倒ですから。商業ギルドのセブリスさんとも話してみます。ギルバートさんは細工師さんの方と技術面で話し合いをしてもらえますか?」


「はい。こちらでも改善出来ないか考えてみます。なるべくセイジロウさんの意図が組めるように頑張りますよ」

「無茶な事を言ってるようで申し訳ないですが、よろしくお願いします」


 と、ギルバートとのハルジオンチェスの話し合いはここまでとなった。


 俺は、錬金術ギルドを出で冒険者ギルドの食事処に向かった。

 先ほどのハルジオンチェスの事をぼんやりと考えてる内に冒険者ギルドへと付きビルドさんのとこに顔を出す。

「こんにちわ、ビルドさん」

「おぅ、セイジロウかっ! どこに行ってたんだ? リリアーナとマダラが退屈そうにしてたぞ?」


「ちょっと錬金術ギルドに。ビルドさん、昼食がまだなんで作ってもらえますか? とりあえず、温かいスープとパンにステーキ肉を下さい」

「おぃおぃ、仲間より飯かよ....まぁ、分からなくないが。そこに座って待ってろっ! すぐに作ってやるから!」


 しばらくして注文した料理が目の前に用意され食べながら、リリアーナとマダラについてビルドさんに話を聞いた。

「ビルドさん、リリアーナとマダラは何か言ってましたか? それか、今どこにいるかわかります?」

「リリアーナとマダラは多分だが、街中にいるんじゃないか? 朝、ここでお茶を飲んだあとはギルドの訓練場でマダラと訓練をしてたぜ。それが終わって飯を食べつつセイジロウの帰りを少し待っていたが、暇になったのかマダラと一緒に出ていったぞ」


 すでに時刻は昼を回っている。何だかんだと半日以上錬金術ギルドで話をしていたのだ。特に受ける依頼もなければ暇になってもしょうがない。


「そうですか.....まぁ、街中に居るようなら特に問題ないですかね。俺も飯を食べたら街中に行ってみますよ」

 と、ビルドさんに言うとビルドさんはちょっと思案した顔をしつつ話してきた。


「問題はなくもないか? 最近、リリアーナの噂ってか、たらほら話を他の冒険者から聞くんだよ。リリアーナは見た目的には幼い少女だが、マダラと訓練してる時は様子が違ってな。それを見ている冒険者がな」


 えっ? 何かあったの?


「なんです? 何か面倒事とか怪しい事ですか?」

「いや、そうじゃねぇよ。セイジロウはまだリリアーナとマダラの訓練の様子を見たことないのか? ありゃ、結構なものだぞ! 小さな少女が巨体な獣と戦う姿は見ていてハラハラするからな。冒険者の間ではちょっとした名物になりつつ、一部ではリリアーナのファンまでいるらしいぞ?」


 なにそれ? リリアーナのファンって....それに、マダラとの訓練ってそんな激しいの?


 俺は内心で少し不安になり注文した料理を手早く食べ終えると街中へと向かった。

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