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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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試作品ハルジオンチェス・前編

No193

試作品ハルジオンチェス・前編




 セイジロウは定宿してる宿でいつものように目が覚める。すでに、氷雪季は本格かしており外は白雪が舞ったりする日もあり吐く息は白い。

 軽く身支度を整えて宿の食堂へと向かう。


 食堂へと着くと宿に泊まってる顔見知りの冒険者達に挨拶をしつつ、空いてるテーブルへと腰かける。セイジロウに気づいた女性の給仕が朝の食事の注文を聞きに来たが、まだリリアーナが来てないので温かい【黒茶】を注文した。


【黒茶】とは、名前の通り薄黒い液体の飲み物だ。まるで前の世界でのコーヒーを見た目から思い浮かべるが味はコーヒーとは違っている。黒茶は前の世界でいう漢方薬の一種のようなもので、味は烏龍茶やほうじ茶のような少し香ばしい匂いと味に似ている。

 黒茶はこっちの世界では薬草の一種を焙煎した物らしい。苦味も臭みもなく、口当たりは優しく体を温める作用があるらしく氷雪季や肌寒い日には好まれる飲み物だ。


 去年の氷雪季では宿から貸し家に移動した為に黒茶とは巡り会わず紅茶や白湯を飲んでいたので気づかなかった。

 基本、冒険者達は白湯や温めたワイン、エールを好んで飲み黒茶などはほぼ飲んだりしないようだ。まぁ、全員とか極端な事はないが.....


 俺はその温かい黒茶をすすりながら今日の予定を頭の中で考えてるとリリアーナが起きてきて対面に腰かけた。

「おはよう、セイジロウ。少し遅れた?」

「おはよう、リリアーナ。いや、特にそんな事ないよ。体調はどう?」


「問題ない。でも、日に日に寒くなるのを感じるの。布団から出るのがつらいの」

 と、子供らしい意見を言ってくる。

「そうだね。朝起きるのが辛い時期だね。んっ? これは黒茶って言って体を温める作用があるみたいだよ。飲む?」


 俺が飲んでる飲み物が気になったのか、リリアーナがジッと見ていたので簡単に説明した。


「うん。それと朝食を食べる」

 と、言ったので女性給仕を読んで朝食と黒茶を頼んだ。


「さて、リリアーナは今日は何するの? また、ビルドさんとこに行ってからギルドの訓練場で訓練するの?」

 ここしばらくの間にリリアーナとマダラの訓練姿が冒険者達の間で話のネタになっているのは、ビルドさんから聞いていた。


 小さい少女と巨体な獣が訓練場の広場で激しい戦闘をしていると。受付嬢のアリーナさんからもそれについて話を聞かれたのは耳に新しい。


 リリアーナとマダラは俺の仲間と召喚獣である為に特には問題ないが、マダラがリリアーナ以外の冒険者に傷を負わせたり問題を起こした場合は召喚獣の主である俺の責任になってくるとの話は以前にも聞いていた。その辺の確認もかねてアリーナさんが俺に聞いてきたのもあるし、どうやらリリアーナとマダラの戦闘光景が冒険者間で

一種の名物化となっていて、見物客もいるらしいと.....


「今はそのつもり。セイジロウは今日なにするの?」

「俺はちょっと錬金術ギルドへ行って【ハルジオンチェス】についての話をしてくるよ。別についてきてもいいよ?」


「ううん。平気。わたしはマダラの世話があるし、訓練での勝負もあるから」

「そう? なら良いけど。あまり激しい訓練はしないように。怪我をしたら元も子もないからね。食事はビルドさんとこでいつものように好きなのを食べて良いから」

 と、今日の予定の話が決まったところでテーブルに朝食が用意されたので、リリアーナと一緒に食べていった。


 朝食を食べ終わってから俺は身支度を整えて錬金術ギルドへと向かい、リリアーナはマダラと一緒に冒険者ギルドへと向かった。


 しばらくメイン通りを歩くと見慣れた建物が見えてくる。以前にも何度か足を運んだ錬金術ギルドだ。

 錬金術ギルド内へと入ると冒険者ギルドとは違い人は閑散としていた。少しだけ錬金術ギルドの依頼提示板を見てから受付嬢がいるカウンターへと進んだ。

「おはようございます。冒険者ギルドからきたセイジロウですが、ギルバートさんはいますか?」

「おはようございます。セイジロウさんですね。ただいま確認しますので少々お待ち下さい」

 と、受付嬢の女性は席を外して奥へと向かった。


 しばらくして対応してくれた受付嬢と見知った男性がやって来た。

「セイジロウさん、お待たせしました」

 と、男性が挨拶をして、受付嬢は業務に戻った。


「おはようございます、ギルバートさん。本日はよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ。では早速こちらへどうぞ」

 と、ギルバートさんの案内に従って個室へと向かった。個室へと入るとテーブルと椅子が用意されていて互いに腰かける。それから、ギルバートさんが伝えたのか温かい紅茶が用意されてから話が始まった。


「本日は、【ハルジオンチェス】に関しての話でしたね。いやぁ、あの話を聞いた時には面白い事を考えたなぁと思いましたよっ! それから、商業ギルドのセブリスさんとの話し合いも盛り上がりましてねっ! そうそう、セイジロウさんとは遺跡調査以来ですからまた、新たな発見があるかと思ってますから期待してますよ」


「はは、ずいぶんと期待してるようですが、単なる娯楽遊戯の一つですから。それと、ご相談もなくセブリスさんに話だけをしてしまってすいません。最初はこうできたら面白いかなって思っただけなんで....本来なら私が細かく説明しに来なければいけないのですが」


「いえ、問題ないですよ。セブリスさんとも綿密にやりとりはしてますし、この分野に関しては錬金術ギルドの腕の見せ所ですからね!では、早速ですが試作品をお持ちしますから少し待っていて下さい」

 と、ギルバートさんは少しだけ部屋を空けてから試作品を持って戻ってきた。


「お待たせしました、こちらが【ハルジオンチェス】の試作品になります。駒はまだ完成形ではないので....材質は同じもの使ってますから操作には問題ないですが」


 と、テーブルに置かれたの前の世界でも見たチェス盤だった。しかし、前の世界より二回りほど大きく作られている。手軽に持ち運び出来そうだが、運ぶ際には専用の袋やケースを考えてある。


「ありがとうございます。へぇ、このような形になるんですね。ギルバートさん、説明してもらってもいいですか?」

「えぇ、良いですよっ!」

 と、ギルバートさんは弾んだ声色で答えてくれた。


「ではハルジオンチェス盤から説明しましょう! セブリスさんからの話し合いで作ったこの盤は互いの魔力をこの魔石に注入してから遊戯開始します」

 セブリスさんがテーブルの上に置いた【ハルジオンチェス】の盤面は、八✕八マス状でさらに、四つの角に小さな空魔石が自身側と相手側に付属していた。


「この自分側にある魔石に魔力を込めるんですね」

「そうです。盤面の景観を崩さないように自分側の両端にと相手側の両端に魔石を付随しました。各自二つの魔石に遊戯開始前に魔力を込めます。わたしが相手側になるのでやってみて下さい」

 俺は手慣れた感じで二つの魔石に両手に触れた。すると、自分からでは魔石側から魔力を吸いとられる感じがした。


「はは、ちょっと驚きましたか? すいませんっ。セイジロウさんの驚く顔がちょっと見たくて! わたしも以前はマダラに驚きを覚えましたからね。今回は、錬金術の腕前に驚いてもらいたくて...ちょっとしたイタズラです。本使用の時には説明書きをちゃんとそえますから」


「えぇ、驚きましたっ! まさか意図せずに魔力を吸われる? 獲られるとは....これは何か細工が?」

「えぇ、軽い吸魔の回路を刻んであります。ご存じかと思いますが、街中にある魔石灯や宿屋の備え付けの魔石灯は吸魔の回路を刻んであります。これは、魔力操作長けてない者でも簡単に魔力を補充できるようになってます。もちろん、吸収する魔力には制限をかけてますので安全設計ですよ。一応、魔力操作に不得手な人の為に考えた事です」

 と、ギルバートさんは説明してくれた。俺は魔力回路や専門的な分野には詳しくないのでそれとなく聞いているが、それなりの研鑽がかかっているのは分かった。


 その後もハルジオンチェスについての説明は続く。

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