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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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火精蜥蜴の依頼・後編

No190

火精蜥蜴の依頼・後編




 冒険者ギルドで受けた火精蜥蜴の角採取は捕獲か又は討伐でしか入手出来ない。俺としては魔物だろうと敵対しなけれは穏便に角だけをほしいが、大人しく差し出してくれるわけがない。


 リリアーナとの話し合いで最初は捕縛の作戦にした。洞窟の内部は多少の奥行きはあるがどうやら退路はないらしい。(マダラの犬狼の探索だと) なので、洞窟の入口で木を燻し煙を風魔法で洞窟の内部へと送り込み、火精蜥蜴を外へと追い出す。


 火精蜥蜴が煙を嫌がり洞窟の外へと出てきたら、俺が装備してる天装具【透縛鎖靭】で捕縛する。捕縛してる間にリリアーナには火精蜥蜴の角を取ってもらう。


 これが、今回の作戦だ。


 他の冒険者がこの作戦内容を聞いたら、バカだの甘いだの、腰抜けだの色々と言われるだろう。だが、以来内容は火精蜥蜴の角を取ってくる事だ。別に洞窟で大人しく? か、どうかは分からないが氷雪季を過ごしてるだけでなのだから、殺さなくても良いのでは? と、俺は思ってる。


 リリアーナに作戦内容と俺の考えを話すと特に何も言わずに同意してくれた。なぜ、同意してくれたのかを聞くと、

「セイジロウは別に間違っていないと思うから。わたしはそれでいい」

 そう、リリアーナは言ってくれた。その言葉を聞いてリリアーナが仲間で良かったと俺は思った。


 俺は火精蜥蜴に気配を察知されないように天装具【黒衣透翼】に身を包み枯れ木を集めて火を付け、煙を洞窟内部へと送り込んだ。

 天装具の黒衣透翼は身に付けてる者の気配を限りなく遮断してくれる能力を持っている。こういう作戦にはもってこいの装備だ。

 さらに、魔力をかなり抑えた風魔法で風を出す。


 リリアーナとマダラは洞窟から少しの離れた場所で息を潜めて火精蜥蜴が現れるのをジッと待っていた。



 そして、煙を嫌がったのか洞窟内部から咆哮とともに地面に振動を与えながら火精蜥蜴が姿を現した。


 姿を現した火精蜥蜴は赤黒い鱗を身に纏い体長は三メートルを越えていた。マダラと比べても変わらないぐらいだった。俺が思ってる以上の大きさだった。ギルドの資料室で火精蜥蜴を調べたがせいぜい二メートル前後だったはずが目の前にいるのはそれよりも大きかった。


 俺は一瞬の戸惑いを見せるもすぐに作戦通りに行動を起こした。


 天装具の透縛鎖靭を操り火精蜥蜴の周囲に網目状に取り囲んで縛り付けた。その際に周囲にある木にも透縛鎖靭を絡めて解かれないようした。


 火精蜥蜴は咆哮をあげつつ透縛鎖靭から抜け出ようとするが、こっちも魔力を流し込み抑え込む。その隙にリリアーナが火精蜥蜴の頭上へと接近し手持ちの短剣で火精蜥蜴の角を半ばから斬り取る。


「リリアーナっ! あとは任せて離脱するだっ! まだらっ! こっちに来てくれっ!」

 と、リリアーナが火精蜥蜴の角を斬り取ったと同時にすぐに離脱の準備に入った。


『むっ! その爬虫類は倒さんのか?』

「ああっ! 依頼は角の採取だけだからな! むやみに命を奪う必要はないっ! リリアーナはマダラに跨がってくれ! 俺もすぐにマダラに乗るからっ!」

 俺はいまだに透縛鎖靭から抜け出そうとしてる火精蜥蜴を抑えつつリリアーナがマダラに跨がったのを確認すると、俺もすぐに飛び乗る。


「マダラ、この場所から退避だ。ある程度したら透縛鎖靭を解除するからっ!」

 マダラが走ると同時に透縛鎖靭にさらに魔力を注ぎ鎖を伸ばしていく。そして、ある程度の距離が離れたら透縛鎖靭を解除して元の長さに戻した。

 ちなみに、火を付けた枯れ木は火精蜥蜴が暴れる際に脚で踏み消していたので周囲の器に燃え移る心配はないと判断した。



 しばらく、マダラの背に跨がって山の麓から距離を取ったところで一度休憩を挟んだ。

「ふぅ、とりあえずここまで来れば大丈夫だろう。リリアーナは怪我とかしてないか?」

「んっ。平気。それと、さっきの斬り取った角」

 と、リリアーナは手に持っていた火精蜥蜴の角を手渡してきた。

 それを一通り眺めると手持ちの袋に入れた。


「さて、依頼は完了したからハルジオンに戻るか?」

 俺はマダラとリリアーナに言うと互いに頷きで返事が帰ってきたのでハルジオンの街へと向かった。


 陽が暮れる少し前にハルジオンの城壁が見える位置まで辿り着くとそこからは歩いて街を目指した。


 街門でいつものように手続きを済ませて冒険者ギルドへと向かう。

 いつものようにマダラには影の中に入ってもらった。ギルド内で依頼の手続きを完了し報酬を受け取るとその日は宿へと向かった。



 夜、リリアーナと宿の食堂で夕食を食べながら明日以降の話を始めた。

「リリアーナ、そろそろ外での活動が厳しい寒さになってきたから街中の依頼が中心になるけど.....氷雪季の間にやりたいことはある?」


 俺は夕食の料理を食べながらリリアーナに聞いてみた。


「.....分からない。でも、実力を落とさないように訓練はしたい」

「そうだな。俺も訓練は考えてるけど....それ以外にやってみたい事はない? 生活に関するお金とかは別に考えなくていいから。気楽にあれがしたい、これがしたいとかあればある程度は力になれると思うから言ってね」


「わかった。考えてみる。セイジロウは何をするの?」

 リリアーナはステーキ肉をナイフとフォークで器用に切り取り食べながら聞いてきた。


「俺はフローラさんのお祖父さんからの依頼で【ハルシオンチェス】の製作があるからまずはそれかな。あとは、合間に訓練したり花風季になったらどこに行こうか考えるぐらいか」


「花風季はハルジオンから出るの?」

「そうだね。今のところはそのつもりだけど....リリアーナは行きたい場所や行ってみたい場所があるの?」


「【幻花の森】に行ってみたい。母様が一度は行ってみたいと言っていたの。見渡す限りに色とりどりの花が咲いていて綺麗な場所だと話してくれた」


「幻花の森....なら少し調べてみようか。明日、ギルドに行って調べてみよう」

「いいの?」

「うん。別にこれといって行きたい場所は決まってないから。調べてみて行けそうなら考えよう。俺たちは冒険者だからね。好きな時に好きな事をして、行きたいなら行けばいい。大陸や世界を冒険してみるのも全然いいよ」


 俺がそうリリアーナに話をするとリリアーナは少しだけ可愛く笑みを浮かべて頷いた。

 それからさらに色々と話をして夕食を食べ終わると部屋へと戻った。



 とりあえずの今後の予定は、ハルジオンチェスの製作と花風季に向かう幻花の森について調べていく事が決まった。

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