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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
183/226

領主の娘

No183

領主の娘




 俺とフローラさん、リリアーナの三人でノクティスの店で夕食を食べて食後の話をしてり時に、フローラさんから話があると言われて俺は少し身構えつつ話を聞く態勢をとった。

「セイジロウさんにはハルジオンに帰ってきて早々で悪いのだけれど、わたしのお祖父様に会ってもらいたいの」


 お祖父様? なぜにお祖父様?


「会うのは構いませんが.....」

 俺は承諾の意思を示したが話が見えなくて少し事情を知りたかった。


「唐突の話でごめんなさい。実は、前々から話しは来ていたのだけどセイジロウさんがルインマスの街に行くのが決まってから......それで、ルインマスから帰ってきたら話をしようと思ってたのよ」


「それは、気を使わせてしまってすいません。フローラさんにはご迷惑をかけました」

「それは別に良いのよ....(多分、いえこれからセイジロウさんには迷惑がかかるとおもうし) それで、お祖父様にはセイジロウさんをわたしの大切な人だと、えっと、紹介したいのだけど.....いいかしら?」


 フローラさんは少し恥ずかしげに言ってきた。その姿は初々しくて今すぐにでも抱きしめたい衝動をグッとこらえた。


「えぇ、大丈夫です。わたしもフローラさんは大切な人ですから。お祖父様にはきちんと挨拶をします」

「そうっ! よかった....ありがとう、セイジロウさん!」

 と、久しぶりに見たフローラさんの笑顔はとても眩しいものだった。改めて、フローラさんの笑顔を大事にしようと心に思った。


「それで、フローラさんのお祖父様はどんな方なんですか?」

 リリアーナもどこか聞きたそうな顔をしている。


「そうね......まずは、わたしはフローラ・フェイ・ハルジオンが本名よ。そして、名前を聞いて気づいたと思うけど、お父様がハルジオンの街の領主なの。お祖父様は前領主だった人よ。家族は、お祖父様とお父様、お母様、お兄様、わたしの五人家族よ。おばあ様は三年前に他界したの」


 なんとっ! まさかの領主娘さんですか.....いや、さすがに驚いたな。立ち振舞いは上品だからどこかしらのお嬢様だとは思ってたけどまさかの.....


「えっと.....そうなんですね」

 としか言えなかった。だって、領主の娘が普通冒険者ギルドで働く? 働かないよね?


「突然の話でごめんなさい。わたしもなかなか言えなかったのよ。領主の娘なんて言えば、良くも悪くも面倒が起きるから」


 ですよね......しかし、ビックリした。リリアーナはビックリして....ないね。たぶん、領主ってのが分かってないんだろうな。


 俺はリリアーナの顔を見てから、ワインを一口飲んで深呼吸をした。


「すいません。ちょっとびっくりしちゃいました。もう落ち着きましたから大丈夫です。ですが、やはり話してよかったんですか? わたしは冒険者ですし、流れ者ですよ? 将来を考えるならまだ後戻りできますし、なんなら街を出ても問題ないですし」


「なんで......なんで、そんな事を言うの? わたしはセイジロウさんと一緒にいたいから話をしたのよ? なぜ、街を出る話しになるのよ?」

 と、フローラさんは涙目になりながら俺に言った。


「セイジロウ、フローラを泣かすのよくない。女性を泣かしたら謝罪する。父様は母様にちゃんと謝っていた。セイジロウもちゃんとフローラに謝るの」

 リリアーナは、フローラさんの涙を見て俺に言ってきた。


「へっ? い、いや、違うんですよっ.....えっと、はい。まずは謝罪します。ごめんなさい。でも、私の話も聞いてくれますか、フローラさん」

 俺はすぐに謝罪をしてからフローラさんに話を聞いてもらうように言った。


「なんですか? 領主の娘だと聞いて怖じけついたんですかっ!? 旅立ちの日にあんな事をしておいて! セイジロウさんの気持ちは見せかけだったんですか?!」


 ちょっ、フローラさん! 声が大きいっ! 他のお客さんが見てますからっ!


「フ、フローラさん。少し落ち着きましょう。まずは、深呼吸して落ち着いて下さい。話しはちゃんとしますから。リリアーナ、フローラさんの隣にいって寄り添ってあげてくれる。そうすれば、少しは落ち着くはずだから、お願い」

 俺はリリアーナにそう頼んだ。それから、エンリさんに言って紅茶を用意してくれるように頼んだ。


 しばらく、フローラさんとリリアーナは寄り添ってようにしていて、エンリさんが紅茶をテーブルに用意してくれた。

「お待たせしました。セイジロウさん、温かい紅茶です。あと、焼き菓子を用意しましたから食べて下さい」


「お気遣いありがとうございます。ありがたくいただきます」

 フローラさんとリリアーナ、俺は温かい紅茶を一口飲んでから頃合いをみて話を始めた。


「フローラさん、少しは落ち着きましたか? 先程はすみませんでした。適切な言葉ではなかったですね。ちゃんとお祖父様には会いますから心配しないで下さい」


「いえ、こちらこそ.....取り乱しました。ごめんなさい。リリアーナもありがとう。だいぶ落ち着いたわ」

「なら、良かった。ちゃんとセイジロウの話を聞く」

「えぇ、わかってるわ」


 互いに落ち着き話を始めた。


「まずは、お祖父様は私の事をご存知なんですか? その、冒険者である私を....」

「えぇ、知ってるわ。ハルジオンにいた頃の事は知ってるわ。ルインマスの街での事は当たり障りない事を少しだけ話したわ」


「分かりました。日時を指定くれたら会いに行こうと思います。それと、お祖父様以外の方でフローラさんと私の関係を知ってる方はいますか?」


「お母様は知ってるわ。お祖父様とおなじくらいだけど」

「では、お父様とお兄さんは私とフローラさんの関係を知らないんですね?」

「えぇ、セイジロウさんの事は話してないわ。お祖父様やお母様も話してないとおもうし」


 ふむ。フローラさんが自分の大事な話を相談できるのは、お祖父様とお母様になるわけだ。やはり、領主であるお父様と次期領主を務める事になるお兄さんには話しづらいのか.....


 それからしばらくフローラさんの家族の話やお祖父様と会った時に聞かれる話の内容のすり合わせをした。

 その間、リリアーナは暇そうだったがフローラさんが上手くリリアーナにも話を振り分けてくれた。


「--では、こんな感じでいきましょう。当日はフローラさんにお世話になりますからボロが出ないようによろしくお願いしますね」

「セイジロウさんなら大丈夫だと思うけど、何かあればわたしが全力で止めるから」

 と、話が一段落した時にシーナさんがやって来た。


「どうやら話しはすんだようね。はい、紅茶のおかわりよ。リリアーナちゃんには、焼き菓子のおかわりもどうぞっ!」

「シーナ、ありがとう!」

 と、リリアーナは嬉しそうに笑顔を見せた。


 ほぅ、リリアーナは焼き菓子、甘味がやっぱり好きなんだな。あとでフレンチトーストでも作ってあげようかな。


「ありがとう、シーナ。いただくわ」

「ありがとうございます、シーナさん」

 シーナさんが紅茶を注いだあとに聞いてきた。


「それで、フローラの家族に会うことになったの?」

「はい、後日フローラさんのお祖父様に会うことになりました」

「そう.....お祖父ちゃんにね.....まぁ、検討を祈るわ。わたしも何度か会ったけど....はぁ....」

 シーナさんの顔は何か嫌な事でも思い出したのか、苦いものを食べたような顔つきをしていた。


「シーナさんはフローラさんのお祖父様と会ったことがあるんですか?!」

「あるわよ。冒険者の頃とノクティスと結婚する時にね。今のセイジロウさんの状況に少し似てるわ。たぶん、色々と聞かれるわよ?」


「まぁ、それはなんとなく分かりますが....それ以外にもありますよね? じゃなきゃ、あんな顔をしませんし」

「......会えば分かるわ、あまり話しすぎるのも良くないし、フローラが話してないならそうなんでしょうからね」

 と、シーナさんはフローラさんをチラッと見た。フローラさんもシーナさんが見たことに気がつき視線を交わすがすぐに反らした。


「....とりあえず、会えば分かりそうなので一応楽しみにしておきます」

 と、俺は多少の不安はあるが仕方ないと内心で決めた。


 その後は雑談しつつ、夜遅くまで楽しんだ。ちなみに、リリアーナは途中で眠ってしまった。シーナさんとフローラさんはリリアーナの寝顔に見惚れてキャッキャッしてた。可愛いだの、ほしいだの言っていた。



 それから、数日後にフローラさんのお祖父様に会うことになった。

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