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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
175/226

旅立ちの挨拶・後編

No175

旅立ちの挨拶・後編



 服飾師レイリーンさんの店で旅立ちの挨拶をした後に向かったのがシャリーナさんのお店だ。シャリーナさんもレイリーンさんと一緒で同じ服飾師だけど扱う商品が違っている。


 午前もそれなりの時間が経ちメイン通りにはそれなりの人が溢れていた。そんな中を俺とマダラとリリアーナは歩きようやくシャリーナさんの店に着いた。いつも通りにマダラには影の中に入ってもらい店内へとリリアーナと一緒に入った。


「こんにちは」

「「いらっしゃいませっ!」」

 すでに見知った女性店員が挨拶をしてきてシャリーナさんの面会を頼んだ。

 俺とリリアーナは別室へと案内されて、お茶と焼き菓子をいただきながらシャリーナさんを待った。少ししてからシャリーナさんが別室へと入ってきた。


「お待たせ、セイジロウさん。今日はどんなご用かしら? リリアーナちゃん、こんにちは!」

「シャリーナ、こんにちは。今日は旅立ちの挨拶回りに来たの」

 と、俺が答える前にリリアーナが用件をシャリーナさんに伝えた。


「えっ? 旅立ちの挨拶? 旅に出るの?」

 シャリーナさんは驚きつつ、リリアーナの顔を俺の顔を交互に見た。

「はい。明日の朝にルインマスを出発してハルジオンに向かいます。その挨拶に来ました」


「ずいぶんと突然なのね? どうして急に?」

「いえ、元々氷雪季になる前にハルジオンに帰る予定だったんですよ。なので、急でも突然でもないんです」

「.....そう、でももう少し早く知らせてくれても良かったんじゃない? もう、知らない仲じゃないんだし」


「それは謝罪します。ただ、私なんかの為に別れを惜しんでくれるとは思って無かったので.....申し遅れてすいません」

「あなたはまったく.....はぁ....リリアーナちゃんはセイジロウさんに付いていくの?」

 シャリーナさんは溜め息をついた後にリリアーナに向かって言った。


「セイジロウについていく。セイジロウの仲間だから!」

 と、笑顔で言いきったリリアーナ。その笑顔はこれからの旅が楽しみになのか、それともセイジロウと一緒に旅が出来るのが楽しみになのかはリリアーナのみ知っている事だ。


「そう....ルインマスには帰ってくるのをかしら?」

「えぇ、来年にはまた来る予定でいます。火水祭や海水浴が楽しみですから!」

「....他にはないの?」

「えっ? 他ですか? まぁ、魚介類や鉄板焼きも楽しみですし皆の元気な姿も楽しみにしてますよ?」


「そうね。それがセイジロウさんだったわね....(まったく、人の気も知らないでっ! って、怒ってもねぇ。こういうセイジロウさんだからこそ惹かれたのかしら?) なら、ちょっと待っててくれるかしら?」

 と、シャリーナさんは部屋を出ていった。


「シャリーナ、怒ってた?」

「どうだろう? そんな風には見えなかったけどなぁ」

「セイジロウはよく女の人に怒られる?」

「いや、そんな事ないよ! むしろ喜ばれるんじゃない? 皆が楽しく笑顔になることをしてるし」

 と、リリアーナとの会話してるとシャリーナさんが部屋に戻ってきた。


「お待たせ。こっちはセイジロウさんにね。それとこっちはリリアーナにね。新しいルインドレスよ! セイジロウさんには特別に男性用を作っていたのよ。後で感想を聞かせてね」


「へぇ、男性用のルインドレス? 男性用ならドレスじゃないですね。なんて呼ぶんでしょう?」

「さぁ、別にそこまで気にしなくても良いんじゃない? セイジロウさんにしか作ってないんだから」

「まぁ、それもそうですね。あとで着てみます。ありがとうございます!」


「気にしなくて良いわよ。ちょっとした感謝とお礼なんだから! リリアーナもルインドレスを着たら感想を聞かせてね!」

「ありがとう、シャリーナ! 大切に大事にするから!」


「シャリーナさん、色々とお世話になりました。また来年に会えるのを楽しみにしてます!」

「わたしも会えるのを楽しみにしてるわ!」

 と、シャリーナさんが抱きついて唇にキスをした。


「これはわたしの気持ちよ! あなたにはすでに決めた人がいるのでしょうけど、あなたを好きでいる女性がいるのを忘れないでっ!」


「はい、忘れません。ありがとう、シャリーナ」

 と、シャリーナさんをそっと抱きしめてから離した。

 シャリーナさんはリリアーナとも互いに抱擁をしてから別れの挨拶をしてシャリーナさんの店をあとにした。

 シャリーナさんから渡された荷物はマダラの影の仲に保管した。


 すでに時刻は昼時になっていて俺とリリアーナ、マダラはメイン通りで買い食いをしつつ次に向かっているのはアンリエッタ邸だ。

 アンリエッタ邸に着くと出迎えてくれたのはいつもの執事シバスさんだった。

「これは、セイジロウ様。いらっしゃいませ」

「こんにちは、シバスさん。アンリエッタさんはいらっしゃいますか?」


「はい、アンリエッタ様は裏庭で読書をしてます。ご案内します」

 と、俺たちはシバスさんの後に付いて裏庭へと向かった。


「アンリエッタ様、セイジロウ様とリリアーナ様、従魔のマダラが訪ねて参りました」

 と、執事シバスさんが読書をしてアンリエッタさんに説明した。

「あら、セイジロウさん。いらっしゃいませ。リリアーナちゃんに、マダラちゃんもよく来ました。さっ、掛けてください」

 アンリエッタさんがテーブル席を勧めてくれたので腰をおろす。マダラはアンリエッタさんの横に寝転がった。


 すぐにメイドのメイリーンさんが人数分のお茶と焼き菓子、マダラには受け皿に食事を用意してくれた。

 アンリエッタさんがお茶を一口飲んでから話を始めた。

「それで、今日はどんな用件なんでしょうか?」

「はい、今日は旅立ちの挨拶に来ました。明日の朝にハルジオンの街に向かいます」

 と、言うとアンリエッタさんは驚いた顔をしてカチャンっとお茶のカップを鳴らした。


「そうなんですかっ! ルインマスを出ていくのですかっ!?」

「はい、氷雪季になる前にハルジオンへと帰ります。今日は挨拶をしに来ました」

「まぁ.....そうですか....」

 アンリエッタさんは落胆のした様子を見せた。アンリエッタさんの後ろに控えるシバスさんやメイリーンさんも消沈した様子を見せた。


「元々、その予定でしたので....ですが、来年にはまた来たいと思ってますし火水祭や海水浴、鉄板焼きも楽しみにしてますよ」

「それは....嬉しいことですが、寂しくなります。せっかく、リリアーナちゃんとも仲良くなれたのに....」

「アンリエッタ、大丈夫。わたしはアンリエッタと友達だから。だから、寂しくない。また会えるのを楽しみにしてるから!」

 と、リリアーナはアンリエッタさんにフォローする言葉をかけた。


「リリアーナちゃん.....そうね、せっかくの友人の旅立ちですもの! 寂しくしてはダメですね。分かりました、旅のご無事を祈ってます」

「ありがとうございます。アンリエッタさんには大変お世話になりました。魔導具作りから海水浴イベント、鉄板焼き店と色々と多岐に渡って」


「いえ、こちらはこそですよ。セイジロウさんには新しい魔導具を発案してもらい楽しい海水浴やルインマスの街の発展に尽力してもらいましたから。こちらからお礼を申しあげます。ありがとうございました」


「いえいえ、私一人では何も出来なかったのです。改めてありがとうございました」

 と、お礼にお礼を重ねて互いの顔を見ると不思議と笑みがこぼれ可笑しくなって笑ってしまった。


 そんな様子を不思議そうにリリアーナは見ていて、シバスさんやメイリーンさんは微笑ましく見てる。


「それで、セイジロウさんはハルジオンへ帰って何をなさるんですか?」

「特に何かをしようとは考えてませんよ。ただ、氷雪季には帰ると約束をした人がいますから」

「あら、セイジロウさんの好い人ですか? どんな方なんですか? 紹介してくれるんですか?」

 と、アンリエッタさんは興味津々といった様子で聞いてきた。

 俺はフローラさんの事を大まかに説明し、その話をリリアーナ、シバスさんやメイリーンさんは聞いていた。


「--そんな片方がハルジオンにいらしたのですね。いつか機会があればご一緒に食事をしたいですね!」

「えぇ、ぜひ話をしてみますよ! フローラさんも興味を持ってくれるはずですから」

「その時が楽しみですね! それはそれとして、何か欲しいものとかありますか? セイジロウさんには大変お世話になりましたから、餞別に何か送りたいのですが?」


「いえ、お構い無く。そこまでしていただく事はありませんよ。ただ、これからも良き友人でいてくれるだけで嬉しいですから」

「それでは.....では、一つ手紙を渡しましょう。セイジロウさんは冒険者ですからね、もしかしたらわたしが居た里に足を運ぶかも知れませんから」

「アンリエッタさんが居た里......もしかしてエルフィン種の里ですか?」


「はい。何もありませんけど、手紙があれば便宜を図ってくれるかもしれません。それに、セイジロウさんならエルフィン種とも仲良くしてくれるでしょうし」

「それはもちろん! では、お言葉に甘えても良いでしょうか? 微力ながら力添え出来るようでしたらお手伝いします」


 と、シバスさんが紙と筆を用意してくれてアンリエッタさんはその場で手紙を書いてくれた。

「これをエルフィン種の里長に見せて下さい。何かしらの便宜を図ってくれるように書きましたから」

「ありがとうございます。大切にしていつか機会があった時に行ってみたいと思います」

 アンリエッタさんから手紙を受け取ると大事に懐にしまった。

 それからは今までのルインマスでの話に花を咲かせて陽暮れ前には"餌付け亭" へと戻った。


 本当なら冒険者ギルドに行って受付嬢のシンディさんやギルドマスターのサーシャさんにも挨拶をしたかったけど、明日の出発前に変更した。

 今日はあっちこっちに挨拶回りをしたから少し疲れてしまった。


 俺とリリアーナは食堂で夕食を食べるとそのまま部屋へと向かい就寝した。


 長いようで短かったルインマスでの暮らしも今日までだ。明日にはハルジオンへと出発する。

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