表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
174/226

旅立ちの挨拶・前編

No174

旅立ちの挨拶・前編




 すでに水風季も半ばに差し掛かる頃、俺たちはルインマスの街を旅立つ準備をしていた。

 俺はルインマスの街でフローラさんに渡す為のお土産を買い漁り、マダラは魚介類の食材や露店料理を買い込み、リリアーナは旅支度を充実させた。


「セイジロウ、今日はなにするの?」

 リリアーナは朝食で出された野菜を食べつつ聞いてきた。


 俺は食べていた厚切りベーコンを飲み込んでから答えた。

「今日は友人達に旅立ちの挨拶回りをするよ」

「挨拶まわり?」

「そう。ルインマスでお世話になった友人達に旅立つ事を伝えるんだ。勝手に旅立つのは寂しいでしょ?」


「うん。仲良くなったのに別れるの寂しいね....」

「だから、互いに挨拶してまた元気な姿で会う約束をして別れる挨拶だよ」

「わかった。セイジロウと挨拶回りする」

 と、今日の予定の話をしながらロゼッタさんが用意してくれた朝食を食べていった。


 朝食を食べ終えたら身支度を整えて、友人の元へと挨拶回りに出掛けた。

 最初に向かうのは漁業場近くに住むスレイブさんのところだ。


 俺とマダラとリリアーナはメイン通りを抜けて漁業場方面へと向かった。マダラに露店料理をねだられ買いつつ歩いてスレイブさんの貸し家に着いた。

「スレイブさん、セイジロウです。いますか?」

 扉をノックしながらスレイブさんを呼ぶと扉が開きスレイブさんが顔を出した。


「なんだ、セイジロウ? 早い時間に用か?」

「早くからすいません。実はハルジオンの街に向かう事になったのでその挨拶に来ました」

「なにっ!? ルインマスを出ていくのか?!」

 スレイブさんは、驚きの顔を見せて聞いてきた。


「はい、元々氷雪季になる前にハルジオンに帰る予定だったんです。ハルジオンの街には待ってくれてる人がいるので」

「そうか.....そうなのだな。セイジロウが居なくなるのは残念だがセイジロウが決めたのなら仕方あるまい。別にこれからずっと会えなくなるわけじゃないのだから」


「えぇ、来年の火水季にはまた来たいと思ってますし、【火水祭】や【海水浴】は楽しみにしてますから! またすぐに会えますよ」

「そうだな。またすぐに会えるな! セイジロウはすぐに旅立つのか?」


「いえ、今日は挨拶回りで明日の朝にルインマスの街を出ようと思ってます」

「そうか、なら手土産を渡すからちょっと待ってろ」

 と、スレイブさんは家の中へと戻りすこししてからまた出てきた。


「昨日の漁で獲ってきた魚に貝類だ。それと、マレアナレアの糸だな。糸と魚は下処理してあるから持っていけ」

「いいんですか? 魚介類はともかくマレアナレアの糸は依頼されたものじゃないんですか?」


「大丈夫だ。依頼された量はちゃんと確保してあるし、魚介類はマダラが食べるだろう? 餞別だから気にするな」

「ありがとうございます。ありがたくいただきます!」

 俺は受け取った手土産をマダラの影の中に保管した。


「スレイブ、ありがとう。スレイブは良い人だね。わたしはスレイブに感謝する!」

「セイジロウには世話になったからな。これぐらい何でもない。リリアーナはセイジロウと一緒に行くのだろうからセイジロウを頼んだぞ。マダラもセイジロウを頼んだぞ、魚介類がまた食べたくなったらルインマスに来るといい」


『ふむ、スレイブにはワレからも感謝しよう。たくさんの旨い魚介類を授けてくれたからな。スレイブの危機にはワレが助けに参じるからそれまでは達者で暮らすんじゃぞ。また、会うときはたくさんの魚介類を所望する』


「あぁ、また会える事を楽しみにしてるよ」

「スレイブさん、色々とお世話になりました。また、会える日を楽しみにしてます!」

「こっちこそ世話になった! また、元気な姿で会える事を楽しみにしてる! 道中気をつけてな!」

 スレイブさんと再会の約束と固い握手をして別れた。


 次に向かうのは服飾師レイリーンさんの店だ。

 メイン通りを歩きレイリーンさんの店に向かって歩いた。しばらく歩くとレイリーンさんの店に着き店内へと入った。

「おはようございます」

「「いらっしゃいませ!」」

 店内に入ると同時にすでに見知った女性店員が挨拶をしてきた。

 ちなみに、マダラは俺の影の中に入ってもらってる。


「レイリーンさんはいますか?」

「はい、ただいま呼んでまいりますから待合室でお待ち下さい」

 と、女性店員に待合室へと案内された。俺とリリアーナは、お茶と焼き菓子を用意されたのでいただきつつレイリーンさんが来るのを待った。少ししてレイリーンさんが部屋へと入ってきた。


「お待たせしました、セイジロウさんにリリアーナちゃん。先日以来ですね。今日はどんな用ですか?」

「朝から訪ねてしまってすいません。先日はリリアーナの服とお土産を選んでくれてありがとうございました。今日は旅立ちの挨拶に来ました」


「旅立ち?.....ルインマスの街を出ていくのですか!?」

「はい、元々氷雪季になる前にハルジオンの街に帰る予定でしたので。来年にはまた来る予定でいますが」

「そうなんですか.....先日は普通に買い物をしていたので気がつきませんでしたよ? それならそうと言ってくだされば良かったのに....」


「すいません。出来る限り普通に過ごしていたかったので」

「いえ、咎めたわけじゃないので! 突然だったので....ですが、そうですか。セイジロウさんは冒険者ですものね。旅は当たり前ですよね、でも会えなくなるわけじゃないんですし、来年も来る予定なんですよね?」


「はい、火水祭や海水浴は楽しみにしてますから! それに、レイリーンさんが作る新作水着も期待してますよ?」

「期待してるなんて.....発案者はセイジロウさんですよ? それに海水浴だってセイジロウさんが考えたわけですし」

「そうですが、すでに私の手を離れてます。すでに水着はレイリーンさんを中心に市場は動いてますし、海水浴は冒険者ギルドが引き継いでくれてます。私はすでに満足してますよ?」


「セイジロウさんはまったく......色々と思う事も言いたい事もありますけど、せっかくの旅立ちを濁したくありませんから、これはまた次回に取っておきます! なら、少し待っていて下さい!」

 俺とリリアーナはレイリーンさんが部屋を出ていったのでお茶と焼き菓子を食べながら帰ってくるのを待った。


「セイジロウ、レイリーンは何か言いたいそうだったよ? 困ったような嬉しそうな顔をしてたよ?」

「うーん.....心当たりが無くもないけど、話を聞いたら長くなりそうだし、もしかしたらレイリーンさんを困らせてしまうかも知れないからね。レイリーンさんが話さないならそれで良いと思うよ?」


「そうなの? セイジロウが良いなら別にいいけど.....」

 リリアーナは何か思う事があるのだろうか? 煮え切らない感じで会話が切れてしまった。


「それより先日は色々と服を選んでくれたお礼を言わなきゃね。リリアーナに似合う服がたくさん買えたしね」

「うん! レイリーンがたくさん選んでくれた! レイリーンに感謝してる!」

 リリアーナは笑顔でそう言った。それから少ししてレイリーンさんが部屋に戻ってきた。


「お待たせしました。こちらは餞別です。持っていって下さい!」

 と、大きな袋が三つもテーブルの上に置かれた。


「えっ.....と、これは?」

「こっちがセイジロウさんでこっちがリリアーナちゃん。それと、これがセイジロウさんの愛しい人用ですね。以前にもちょくちょく女性用の衣類を買ってましたよね?」


「えっ、えぇ、そうですが....ですが、これは多くないですか?」

「そんな事ないですよ? それより、用意したんですから持っていってくださいね! これまでの感謝とお礼には全然足りませんが、きっと役に立つはずですから。下着類に替え用の衣服、新しい水着も入ってますから!」


「ははは、気を遣わせてすいません。それと、ありがたくいただきます。次回会うときには幾つか新しいデザイン画を用意しときますね。リリアーナも良かったね」

「レイリーン、ありがとうございます。大切に大事に着るから! レイリーンには感謝!」

 と、リリアーナはレイリーンさんに抱きついてお礼を言っていた。


「リリアーナちゃん、また会えるのを楽しみにしてからね! それから、セイジロウさんをよろしくね!」

「うん! わたしもまた会えるのを楽しみにしてる!」


「レイリーン、色々とお世話になりました。また、来年に会えるのを楽しみにしてますよ」

「えぇ、こちらこそお世話になりました。また会えるのを楽しみにしてます」

 と、レイリーンさんとの挨拶も終わり次に向かったのが同じ服飾師のシャリーナさんの店だ。

 ちなみに、レイリーンさんから餞別でもらった三つの袋はマダラの影の中に保管した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ