リリアーナの普段着
No171
リリアーナの普段着
翌日も目を覚ますと身支度を整えて"餌付け亭" で朝食をガッツリと食べた。その後は、メイン通りから漁業所方面へと俺とマダラ、リリアーナは向かって歩いていく。
「セイジロウ、今はどこへ向かってるの?」
リリアーナは歩きながら話しかけてきた。
「今はルインマスの漁業所方面に向かって歩いてるよ。昨日の夕食の時に話したけどリリアーナの普段着を買いにいくよ。この先に女性服を売るお店があるからそこで買おう」
「わたしは別にこの服で構わないよ。装備も昨日買ってもらってるし」
「それはそれ、これはこれだよ。リリアーナは女の子なんだから少しはお洒落しなきゃ。それに、替えの服は持っていた方がいいよ」
俺は歩きながらリリアーナに話をする。マダラは、俺たちの少し前方を歩きながら露店の旨そうな料理がないかを探してる。
「セイジロウがそう言うなら」
「うん。街中で過ごすようの服を選んで買うだけだから、気楽に買えば良い。さっ、あと少しで着くよ」
そして、少し歩くと目的の店へと着いた。
俺はマダラに影の中に入ってもらってから店の扉を開けた。
「こんにちわ!」
「「いらっしゃいませっ!」」
店の中に入ると女性店員が挨拶をしてきた。俺は女性店員にシャリーナさんの面会を頼んだ。女性店員はすぐ奥の部屋へと向かってしばらくするとシャリーナさんが現れた。
「セイジロウさん、久しぶりね! 元気にしてたかしら? あら、今日は可愛らしい女の子と一緒なのね? どこで捕まえてきたのかしら?」
「シャリーナさん、久しぶりです。それと、捕まえたなんて人聞きが悪いですよ。私の新しい仲間です」
「わたしはリリアーナ。よろしく」
と、リリアーナはシャリーナさんに頭をペコリと下げて挨拶をした。やはり、初対面での挨拶は苦手のようで挨拶をしたら俺の後ろに少し隠れるように下がった。
「ふふふ、ちょっとからかっただけよ。悪気は無いわよ。それと、わたしはシャリーナよ。よろしくね、リリアーナ」
「それで、シャリーナさん。今日はリリアーナに似合う服を買いに来ました。普段着用の服を数着ほしいのですが」
「今日はお客さんとして来てくれたのね。なら、少しはサービスしなきゃね! 分かったわ.....この子の採寸をして服を選んでちょうたい。それと、できる限りの要望に答えて」
シャリーナさんは女性店員に指示を出してリリアーナを連れていった。連れていからたリリアーナは不安そうに俺の顔を見ていたが、俺は笑顔でリリアーナに答えた。
「さて、セイジロウさんには別室でお茶でも飲みながら新しい服の話をしましょうか?」
「新しい服? シャリーナさんが新しくデザインした服ですか?」
「そうよ。ルインドレスの売り上げは好調だけどそれだけじゃやっていけないのよ。せっかくタイミング良くセイジロウさんが店に来たんだから意見を聞かなきゃ!」
それから、俺とシャリーナさんは別室へと向かい新しい服について談義を始めた。小一時間ほどシャリーナさんと話をしてると、リリアーナの服が決まったと言われたので、店内に向かった。
そこには可愛らしい少女が少し恥ずかしそうに立って待っていた。
「リリアーナ、お待たせ。それとその服、良く似合ってるよ! ねぇ、シャリーナさんっ!」
俺はリリアーナの着てる服がとても似合っていたので、すぐに称賛した。
「えぇ、まさかここまで変わるなんてねぇ! やはり、素が良いからなのかしら? 良く似合ってるわ!」
リリアーナの着てる服は袖口とスカートの裾部分がヒラヒラとした可愛らしい服だった。ふんわりとしたドレスだが、スカート丈が短くそこからスラッとした生足が魅惑的に見える。
足元を見ると編み上げのブーツを履いていた。ドレスにブーツと思ったが、編み上げブーツにはワンポイントのリボンが付いていてブーツの印象を和らげている。
全体的に見てもバランスは悪くなく、ドレスの色もリリアーナの髪色に合わせてあり違和感がない。
「せっ、セイジロウ、変じゃない?」
リリアーナは少し恥ずかしそうに尋ねてきた。その恥ずかしがる仕草がまた可愛らしい。少女趣味な男がいたら今ので理性がふっ飛んでいたぐらいの破壊力がある仕草だ。
まぁ、俺は少女趣味じゃないから特にダメージを受けないが、それでも素直にリリアーナは可愛いと思う。
「変じゃないよ、リリアーナ。とても良く似合ってるよ! リリアーナは可愛いんだからもっと自分に自信を持って良いんだよ」
「そうね。リリアーナだったわね、あなたはこれからもっと可愛く女性らしくなっていくわ。だから、お洒落には気を使わなきゃダメよ。意中の人がいるならなおさらね!」
「.....うん。ありがとう」
「素直でよろしい。なら、次の服はわたしが選んであげるわ! さっ、こっちに行くわよ!」
「えっ? ちょ、ちょっとシャリーナさん? まだ選ぶんですか?」
俺はシャリーナさんに慌てて問いかけた。一着の服を選ぶのに小一時間はかかったのだ。これからさらに選ぶとなれば時間もそれなりにかかるはずだ。別に予定は特に無いけどリリアーナが服を選んでる最中は俺が暇で手持ち無沙汰になってしまう。
「そうよ、せっかく可愛くなれたのだから選ぶに決まってるじゃない! それに、たった一着しか普段着を選ばないなんて.....可愛そうじゃない? セイジロウさんも普段着は幾つか持ってるでしょ? なら、リリアーナにも持たせるべきよ! さっ、行くわよリリアーナ」
俺はシャリーナさんの言葉に何も言い返せないまま、リリアーナとシャリーナさんを呆然と見送った。
すると、一人の女性店員がやってきた。
「申し訳ありません、セイジロウさん。シャリーナさんはああなってしまうと自分が納得するまで終わりません。あちらに席を用意しましたからお茶でも飲んで待ってぐださいますか?」
「は、はぁ。分かりました、気遣いありがとうございます」
と、俺は女性店員に連れられてさっきいた部屋とは違う部屋へと案内されて、お茶と焼き菓子をいただいた。しばらく、ぼんやりと待っていたがさすがに暇すぎだと思った頃に女性店員が部屋へとやってきた。
「セイジロウさん。実は新しいデザインのルインドレスがあるので少し見て頂けますか? それに付随する装飾品もあります」
「えっ? わたしがですか?」
「はい。シャリーナさんからセイジロウさんからの意見を聞いてきてと言われました。元々の発案者はセイジロウさんですから、シャリーナさんはセイジロウさんの意見を聞きたいのだと思います」
まぁ、前の世界のチャイナドレスを参考にしてシャリーナさんに提案したのは俺だけど.....まぁ、デザイン料をもらってるからそれぐらいはやるべきか。まだまだ、時間はかかりそうだしな。
「分かりました、時間もありますしやりましょう」
俺と女性店員は新しいルインドレスとそれに付随する装飾品についての意見会を部屋で行った。
意見会ではデザインはもちろん、生地や色つかい等にも話は広がった。さらに、付随する装飾品も髪飾りやピアス、チョーカーやネックレス、ブローチや腕輪など考えられる限りの意見を出した。
「--と、こんな感じですかね。一応、デザイン画もおこしましたから良ければ一考して下さい。ルインドレスは見た目が魅惑的になりがちですから、重ね合わせすると和らぐと思います」
俺は自分で描いたデザイン画の一枚を取り出して女性店員に説明した。
「なるほど....これならば魅惑的な感じを残しつつも魅力的に見えますね! さすがはセイジロウさんです! ありがとうございます!」
「いえ、たまたま思い付いただけですから。あとはシャリーナさんと話し合って決めて下さい」
と、意見会が一段落するとタイミング良く、リリアーナ達の方も終わったともう一人の女性店員が呼びにきた。
俺は女性店員と一緒に店内へと向かうとリリアーナとシャリーナさんが仲良く話をしていた。
「お待たせしました。服選びが終わったそうですね」
「こっちにこそセイジロウさんには待たせてしまったわね。でも、待たせただけの価値はあったわよ! リリアーナに良く似合う服が選べたわ」
俺はリリアーナの姿を見るが先ほどと変わらない服を着ていた。
「リリアーナの服はすでに袋に詰めてあるわよ。あとは支払いだけよ!」
と、シャリーナさんが指差す方向を見ると大きな袋が二つカウンターに置かれていた。
「えっ?......あの大きな袋がそうなんですか.....」
おいおい、どんだけ選んだんだよ.....俺の手荷物より多くないか?
俺はヒクヒクと苦笑いを浮かべながらシャリーナさんの方も向いた。
「えへへ、リリアーナと選んでたら少し多くなっちゃった! でも、セイジロウさんなら簡単に買える金額よ! まぁ、ちょっと値引きして小金貨二枚で良いわよ?」
良いわよって、小金貨二枚って言ったら月の半分以上は暮らせる金額だから! それを服だけの買い物で.....前の世界でも女性は服にそれぐらいの金額をかけていたけど......まさか、こっちの世界でもこんなにかかるなんて.....
俺はリリアーナの顔を見るとリリアーナは申し訳なさそうな顔をして俯いてしまった。
「仕方ないですね。代金は払いましょう、リリアーナの服を買うと言ったのは私ですからね。それに、他の服を着たリリアーナも見たいですしね!」
そう俺が言うとリリアーナは顔を上げて笑顔で抱きついてきた。
「セイジロウ、大好きっ! わたしはもっと可愛く女性らしくなる! ありがとう、セイジロウっ!」
「あらあら、さすがセイジロウさんね。わたしも何かおねだりしちゃおうかしら?」
「シャリーナさんにはすでに用意してありますからダメです。女性店員に新しいデザイン画を渡しましたからそれで我慢して下さい」
「そうなの? なら、仕方ないわね。セイジロウさんのデザイン画なら我慢するわ。っと、それだけじゃもらいすぎだから......チュッ!」
シャリーナさんはそっと俺に近づき頬にキスをしてきた。
「これなら多少は返せたかしら?」
「まったく.....十分ですよ」
「セイジロウ、顔が赤い。それに、嬉しそう」
「リリアーナはそろそろ離れましょう。代金を払ったら、昨日の装備屋に行って買った装備を受け取りに行きますよ」
と、恥ずかしさを紛らわし為にカウンターへと足早に向かい代金を払いリリアーナの服が入った二つの袋を受けとる。
「では、シャリーナさん。リリアーナがお世話になりました。また、機会があれば寄りますから」
「つれないわねぇ....まぁ、いいわ。また、寄ってね、セイジロウ! リリアーナもまたいらっしゃい!」
と、俺とリリアーナはシャリーナさんの店を出てからマダラを影の中から出すと同時にリリアーナの荷物を影の中に閉まった。
「さて、時間も頃合いだからハスラさんの装備屋に向かうか。ついでに小腹も空いたからメイン通りで何か買うか?」
『なら、ワレは魚貝を食したいぞ。あっちから良い匂いがするのじゃ!』
と、さっそくマダラが意見を言ってきた。俺とリリアーナは顔を見合わせて互いに同意を頷きで示した。
「なら、マダラに道案内を頼もうか!」
『任せるんじゃ。ではゆくぞっ!』
マダラに付いて行った露店で魚貝焼きを頼みさらに、保管用にも頼んでアツアツウマウマな魚貝焼きに舌鼓を打ちながら昼食を食べていった。
魚貝焼きに満足した俺たちのは昨日リリアーナの装備を頼んだハスラさんの店へと向かった。