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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
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餌付け亭の朝食

No168

餌付け亭の朝食



 翌日、朝の目覚めが気持ち良かった。久しぶりに宿のベッドで眠れたのか体の疲れもだいぶ取れていた。俺は身支度を整えてから宿の食堂へと向かった。


「おはようございます、ロゼッタさん」

「おはよさんだねっ! あの少女は

どうしたんだい?」

 と、ロゼッタさんは少しニヤついた笑顔でリリアーナの事を聞いてきた。


「いや、昨日説明しましたよね? リリアーナはただの仲間ですからっ! ロゼッタさんと分かっていてからかってるでしょ?」

「あははっ! ついね! まぁ、詮索はしないさ。それで、先に朝食を食べるかい?」


「いえ、少しだけ待ってます。果実水をくれますか? それを飲みながら待ちます」

「そうかい? なら、空いてるテーブルで待っていな!」

 と、いつもより少し空きテーブルが目立つ食堂の窓際に座りロゼッタさんが用意してくれた果実水を飲みながらリリアーナが来るのを待った。


 リリアーナが起きてくるのを待ちながら今日の予定を考える。


 今日はリリアーナの装備を整えた後は、アンリエッタさん所にでも顔を出して見ようかな。リリアーナの為に知り合いはいた方が良いし、万が一の事も考えて伝はあった方が良いしな。

 鉄板焼きの話やエールサーバーや海水浴の話も聞いてみようかな。海水浴イベントからどうなってるのか知りたいし。


 そんな風にぼんやりと果実水を飲みながら考えてると、テーブル席の対面にリリアーナが座った。

「セイジロウ、おはよう」

「リリアーナ、おはよう。昨日はよく眠れた?」

「ベッドが気持ち良かった! 起きるのが辛かった」

 リリアーナは朝から笑顔だった。バードン種の住み家ではどんな暮らしだったのかはあまり詳しく話をしていないから分からないけど、"餌付け亭" のベッドは気にいったようだ。


「そう、それは良かったよ。朝食は食べるでしょ?」

「うん、お腹すいた」

 俺はロゼッタさんに声をかけて朝食の準備をしてもらった。その時にリリアーナにも果実水を用意してもらった。


 ロゼッタさんが用意した朝食がテーブルに並べられるとリリアーナは驚きの顔をしながら、俺とロゼッタさんの顔を交互に何度も見た。

「あははっ! 嬢ちゃんはビックリしてるみたいだねっ! うちの宿はこれが朝食なんだよ。しっかりと食べて今日一日を過ごしな! スープとパンはおかわりがあるからね!」

 と、ロゼッタさんはリリアーナの反応に笑顔を浮かべながら戻っていった。


「リリアーナ、この"餌付け亭" の朝食は多いけど夕食と一緒で美味しいからたくさん食べれるよ。残してしまうようならロゼッタさんに言ってサンドパンにしてもらえるよ」

 小柄なリリアーナの体型でこの量の朝食は少し辛いと思う。

 バゲットパンにスープ、野菜サラダに厚切りベーコン、魚の丸焼きに厚切り肉のステーキ。朝からフルコースだ。俺も最初に見た時は量にビックリしたのを覚えてる。


「朝からこんな豪勢な料理は初めて! 驚いたけどちゃんと食べる! 凄く良い匂いっ!」

「俺も初めて泊まった日は驚いたよ。じゃ、さっそく食べよう!」

 俺とリリアーナは朝食を食べていく。久しぶりの"餌付け亭" の朝食は格別だった。

 訓練中は自炊や露店で買い溜めた料理を食べていたけど、やはり"餌付け亭" の料理は自炊や露店料理より数段旨い。


 特に焼き魚の味付けが絶妙だ。塩加減の案配に食欲をそそる香草の匂い。そして、この焼き加減.....魚の切り身を食べると魚とは言えない肉汁が口の中に溢れ、塩加減と香草が絶妙な働きをして手が止まらない。ナイフとフォークを巧みに使い次々と切り身を口の中へと運んでいく。


 リリアーナの食事を見ると、拙いがきちんとナイフとフォークを使いながら食事をしていた。リリアーナは魚の切り身を口の中に入れて食べると笑顔になり、スープを飲むと目を見開きながら表情豊かに食事を楽しんでいた。


「リリアーナ、このステーキ肉とサラダをバゲットパンの切り口に挟んで食べると美味しいよ」

 と、リリアーナにサンドパンの作り方を実演しながら教えた。作ったサンドパンに俺はかぶり付いて。サンドパンに挟んだステーキ肉と新鮮な野菜が丁度良い味となって食が進む。さらに、ステーキ肉の肉汁がバゲットパンに染み込みパンもペロリと食べてしまった。


 そんな光景を見ていたリリアーナはさっそくサンドパンを試していく。バゲットパンに切り込みを入れて野菜を挟み、切り取ったステーキ肉を挟んでいく。出来上がったサンドパンを大きな口を開けてかぶり付く姿は微笑ましく可愛い。

 まるで父と娘の食事風景だった。


 リリアーナは自分が作ったサンドパンを食べると驚きの表情を浮かべた。いったいどんな驚きがあったのかは分からないが、サンドパンは幾ばくもしない内に無くなってしまった。余程、自分の作ったサンドパンが美味しかったのだろう。


「サンドパンは美味しかったかい? 今のは肉と野菜だけど、今度はベーコンと野菜と魚の切り身で作ってみたらどう? さっきとは違う味で美味しいと思うよ」


 俺はリリアーナに違う味のサンドパンの作り方を口頭で説明しつつ、スープと野菜食べていく。

 リリアーナはサンドパンに切り込みを入れてさっきとは違うサンドパンを作って食べていく。このサンドパンにも衝撃を感じたのか、驚きの顔をしてから黙々とサンドパンを食べていった。


 そうして、朝食としてはかなりの量があったが俺とリリアーナはペロリっと綺麗に食べきって今は食後の果実水を飲んでる。


「リリアーナ、"餌付け亭" の朝食はどうだった? 満足した?」

「うん! 満足した! 凄く美味しかったっ! セイジロウが作った料理も美味しかったけど、ここの料理はそれ以上に美味しかったよ!」


 はは、それは良かった。ここはお気に入りの宿だからリリアーナに気に入ってもらえて良かった。さすがに、本職の料理人には味で勝てないけどそれでも俺の料理を美味しいと言ってくれたリリアーナには感謝だな!


「この"餌付け亭" は覚えておくといいよ。もし、リリアーナが一人でルインマスの街に来ることがあった時はここに泊まると良いよ。値段も手頃だし料理も美味しくて部屋も綺麗だからね。さて、朝食を食べたし今日は俺の友人を紹介するよ。部屋で身支度を整えたら宿の入り口に集合だ!」


 俺とリリアーナは部屋へと戻りリリアーナと一緒に宿を出発した。




 俺とマダラ、リリアーナはメイン通りを歩き露店で気になった料理や食材を買い溜めしつつ、リリアーナの装備を整える為に武器防具屋を見てまわった。


 武器防具屋を見て周りながらリリアーナに装備の話をした。

「リリアーナは風魔法を使えるけど、実際はどんな風に戦うの?」

「わたしは、魔法で魔物を撹乱しながら倒す。でも、一人だから無理はしない。弱い魔物を倒すだけ」


 さすがに、中学生ぐらいの少女じゃ魔物との戦闘はキツいか.....なら、身を守る装備を中心に買いそろえるか?

「今、着ている装備を新調しようと思うけど欲しい装備はある?」

 リリアーナの装備、と言っても体に纏ってる布生地と短剣ではかなりの不安がある。せめて、軽鎧は装備させたい。


「重い装備は着れない。動きが遅くなる。出来る限り軽い装備が欲しい。空も自由に飛べない」

「そうだよな.....軽くて丈夫な装備か....俺の知ってる武器防具屋だと思い付かないな....先にアンリエッタ邸に行って聞いてみるか。リリアーナ、先に友人の人の家に行ってみようか? その人なら知ってるかも知れないし、知らなかったら違う友人に聞いてみるよ」


 と、マダラとリリアーナと俺はアンリエッタ邸に向かった。



 アンリエッタ邸に着くとドアノッカーを鳴らした。少しして執事のシバスさんが出迎えてくれた。

「これは、セイジロウ様。お久しぶりです。本日はどの様な用件で?」

「お久しぶりです、シバスさん。今日は新しい仲間の紹介とアンリエッタさんに面会に来ました。海水浴イベント以降の話や鉄板焼きの話を聞きに。アンリエッタさんはいますか?」


「はい、アンリエッタ様はいらっしゃいます。すぐにご案内しましょう」

 と、執事のシバスさんに付いて裏庭へと向かった。そこには、テーブル席で読書を嗜むアンリエッタさんがいた。



「アンリエッタ様、セイジロウ様がいらっしゃいましたよ」

「あら、セイジロウさん。なんだか久しぶりですね。最近はいらっしゃらないから心配してましたよ......それと、そちらの少女は? まさか......セイジロウさんの娘ですか?」

 と、今度はアンリエッタさんにからかわれるハメになった。

 俺はアンリエッタさんに挨拶をしてからリリアーナを紹介した。【ルインラクス】の湖で出会いバードン種の事も話した。


「セイジロウさんは、会うたびに驚きをもってきますね。立ち話もなんですから掛けて下さい」

 俺とリリアーナはテーブル席へと腰掛けて、マダラはアンリエッタさんの側に寝転がった。

 メイドのメイリーンさんが人数分のお茶と焼き菓子を用意してくれた。マダラには、簡単な食事を受け皿に用意してくれた。



 話の準備が整うと話が始まった。

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