パーティー申請
No167
パーティー申請
リリアーナが新しい仲間となってからすでに数日が経った。【ルインラクス】の湖の近くでキャンプをしていた俺とマダラは久しぶりにルインマスの街にリリアーナと一緒に帰ってきた。
リリアーナにとっては名前を知っている街だけで実際には来たことが無いと言っていた。
ルインマスの街門で俺とマダラの証明を門番にしてもらう。そして、リリアーナは身分を証明する物を持っていない為に別室で簡易な検査をしてから、仮身分証を発行してもらい街の中に入った。
リリアーナが持っていた荷物は俺が過ってリリアーナを撃ち落とした時に【ルインラクス】の湖の中へと沈んでしまっていた。特に貴重な物は入っていなく、数日分の食料と衣服、金銭だけだったそうだ。
まずは冒険者ギルドでギルド登録をしてからリリアーナの日用品を揃える事となった。
リリアーナは物珍し視線をあっちこっちに向けながら、俺とマダラの後を一緒に付いて歩いてる。そんなリリアーナを見守りつつ冒険者ギルドへと向かっている。
「リリアーナ、まずは冒険者ギルドで登録をして同じパーティーになろう。それから日用品の買い物ついでにルインマスの街を散策しようか?」
俺はさっき露店で買った串焼き肉を頬張りながらリリアーナに話しかけた。もちろん、俺だけが食べてる分けじゃなくリリアーナも食べながら歩いてる。マダラは影の中から適当に食べていいと伝えてあるから適当に食べるだろう。
「はむ(モグモグっ)....わかった。セイジロウの言う通りにする。それと、街の中を見るのは賛成! 早く登録してたくさん街中を見たい!」
リリアーナは食べてる串焼き肉を飲み込んでから答えた。その答え方は年相応で抑えきれない好奇心を無理やり抑えてる感じが可愛らしく見えた。
「そうだな、登録したら街中をたくさん見てまわろう。そんなに焦らなくても街は逃げたりしないし、しばらくはルインマスの街に居るから大丈夫だよ」
「街は逃げない.....セイジロウ、しばらく
ってそしたらどこかに行くの?」
「リリアーナがルインマスの街を見てまわった後にハルジオンの街へと移動しようと考えてる。ハルジオンの街には俺の大好きな人がいるし、俺はハルジオンの出身だからね。氷雪季になる前には帰る予定だったんだよ」
俺は串焼き肉の口直しに露店で売ってる果実水をリリアーナの分と買い溜め分を買った。リリアーナと俺の分を除き後はマダラの影の中へと保管した。
果実水を飲むと甘酸っぱい果実水が口の中をサッパリとさせてくれた。リリアーナも気にいったらしく笑みを浮かべながら果実水を飲んでる。
「そうなんだ....リリアーナも一緒に行っていい?」
リリアーナは少し不安そうな言葉で問いかけてきた。
「もちろんだよ。俺達は仲間なんだから! リリアーナがルインマスの街に居たいと言うなら別だけど、そうじゃないなら一緒にハルジオンの街に行こう」
「うん! わたし達は仲間!」
と、リリアーナは嬉しそうにピョコピョコしながら俺とマダラと一緒に歩いた。そして、気付けは冒険者ギルドに着いていた。
マダラには俺の影の中に入ってもらいさっそく冒険者ギルドへとリリアーナと一緒に入った。冒険者ギルド内は思ってたより人は少なく混雑はしていなかった。
俺は受付嬢のいるカウンターを見るとシンディさんを見かけたのでその列に並ぶ。人の並びは少なくそんなに時間も掛からず順番が回ってきた。
「こんにちわ、シンディさん」
「こんにちわ、セイジロウさん。久しぶりですね! 今までどちらに? 今日は依頼ですか?」
シンディさんに会うのは数十日振りだ。依頼も受けずにずっと街の外で訓練をしていたからな。
「久しぶりですね。少しルインマスを離れて訓練をしていたんですよ。今日はこの子の冒険者登録とパーティーの申請をしに来ました」
俺は隣にいるリリアーナをシンディさんに紹介して用件を伝えた。
「......その子はセイジロウさんの知り合いですか?」
シンディさんはリリアーナに視線を向けた。その視線はどこか探るような感じさせるが奇異や悪意は感じない。
「はい。訓練中に出会ったんですよ。それでパーティーを組むことにしました。手続きをお願いします」
と、シンディさんと視線を交わし端的にお願いした。
シンディさんは俺から視線を外さずにジッと見つめてくる。数秒間沈黙が流れるがシンディは何かを諦めるような顔をしてから声を発した。
「(突然、居なくなったと思ったら今度は突然現れて.....しかも、こんな少女が連れてくるなんて。しかも、見た感じ人種とは違うし、セイジロウを見ても説明する気配はないし....はぁ.....).....分かりました。手続きを行いますから、この紙に記載して下さい」
「ありがとうございます。シンディさんならそう言ってくれると思ってました。....リリアーナ、字は書けるよね? この紙に名前を書いてくれる?」
リリアーナは言われた通りに紙に署名するとシンディさんに渡した。
「では、手続きをしますから登録料をお願いします。それと、少しお待ち下さい」
シンディさんに登録料を渡して少しの間待つ。リリアーナは不思議そうに周りに視線を向けつつも大人しく手続きが終わるのを待っていた。
「...........お待たせしました。リリアーナさんでしたね。こちらのギルドカードに血を垂らして下さい。それで、登録は完了です」
リリアーナはシンディさんが出してきたギルドカードに血を一滴垂らした。
「ありがとうございます。これで冒険者登録は完了です。パーティー登録はこちらで行って起きますから以上となりますが、他にも用件はありますか?」
「いえ、大丈夫です。シンディさん、ありがとうございました。(シンディさん的には事情を知りたいだろうけど、今は他の冒険者達もいるしまた機会があった時に説明しよう)」
俺とリリアーナは冒険者ギルドを出ると先に"餌付け亭" へと向かった。
「リリアーナ、ギルドカードは亡くさないようにするんだよ。それから、冒険者の説明は今夜夕食を食べながらするかね。先に宿屋に行って部屋を確保してから街中を散策しよう」
「わかった。散策楽しみっ!」
俺達は"餌付け亭" のロゼッタさんに部屋を確保してもらってから街中の散策に向かった。宿の部屋を取る際にロゼッタさんから少しからかわれた。
「久しぶりに見たと思ったら少女を連れ込んで来るとはっ! あんたは物好きだねぇ!」
「いや、違いますからね! 少し事情はありすけどそんなんじゃ無いですからっ! 部屋も別々に取りますからっ!」
「なんだいっ! 別にあたしは気にしないよ。ただ、夜はなるべく静かに事をしなよ! 他にも泊まり客はいるんだからっ!」
と、冗談半分な会話して宿の部屋を別々確保した。こっちの世界なら別に犯罪ではないから手を出しても捕まる事は無いけど、見た目が少女の女の子に手を出したりはしないよ。
俺とマダラ、リリアーナはメイン通りから散策していく。時間は昼時に近くそれなりの人で通りは賑わいを見せていた。
「リリアーナ、欲しいものや気になる店を見かけたら遠慮せずに言うんだよ。それと、リリアーナの日用品や衣服も買うから言ってね」
「セイジロウ、ありがとう。でも、わたしはお金を持ってないからセイジロウには迷惑をかける」
「それは、気にしなくていいよ。リリアーナの荷物を失くしたの俺の性だからね。旅に必要な物は俺が買って揃えるし、当座のお金も渡すから気にしないでいいよ」
『そうじゃぞ、リリ。自分の技に浮かれてリリを撃ち落としたのはセイジロウじゃからな。何でも買ってもらうんじゃ。金ならセイジロウが稼ぐからのぅ』
「事実とはいえもう少し身も蓋も被せろよ! それに金を稼ぐのはお前もだからな! 食った分はちゃんと働けよ、マダラ!」
『フン、分かっておるわ! それよりセイジロウ、あの露店の魚介類を買うんじゃ。すでに露店の料理はほとんど保管されておらんのじゃ! リリの為にもたくさん買うのじゃ!』
それってリリアーナを出汁にしてお前が食いたいから買うんだろ? 素直に自分が食べたいから買ってくれと言えば良いのに.....
「リリアーナ、あの露店の魚介類を買うから一緒に行こう。リリアーナもマダラみたいに欲しいものは言っていいから」
と、リリアーナには話した。それから、陽暮れになるまでメイン通りで露店の料理を買いつつリリアーナの日用品も買い込んだ。
リリアーナの必要最低限の荷物以外はマダラの影の中に仕舞い込んだ。それから、リリアーナには当座のお金も渡した。
陽暮れになり"餌付け亭" で久しぶりの旨い夕食を食べながらリリアーナには冒険者の説明をした。すぐには冒険者の依頼を受けないがハルジオンの街に帰るまでには依頼を何件か受ける事をリリアーナには話した。
夕食を食べた俺とリリアーナは宿の部屋へと戻り、久しぶりのベッドで安眠をとった。