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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
166/226

バードン種リリアーナ

No166

バードン種リリアーナ




 俺は少女に土下座で謝罪をした後、昼を少し過ぎていたが昼食を食べながら互いの話をしていた。

「そんな事があった時に私が過ってリリアーナに魔法をぶつけてしまったんですね」


 リリアーナが上空を飛んでる時に魔物と間違って魔法の試し撃ちで過って撃ち落としてしまった。これはあくまでも過失だ。誰だって空を飛んでる姿を見れば魔物だと間違ってもおかしく......おかしくないよな? ってか、空を飛んでるって....


「それはそうとリリアーナな空を飛んでましたね。なぜ空を飛べるんですか?」

 見た目は完全に少女なんだが、空を自由に飛べるなら熟練の魔法師か何かか?


「わたしは、バードン種と人種のハーフなの。姿は母様似だけど父様の種族の血も受け継いでるから、バードン種独自の風魔法が使える。バードン種は風魔法が得意で種族特有の風魔法が使えるから空も自由に飛べる」

 リリアーナは少し得意気に話をしてくれた。別種族同士の婚姻で生まれた混血種がリリアーナなのだ。


「そうなんですね。空を自由に飛べるなんて羨ましいですよ。わたしも最近になって訓練を始めてようやく浮き上がれるようになったんです。いづれは自由に空を飛べるようになりたいと頑張ってる最中ですよ」


「セイジロウは、人種なのに空を飛べるの?」

「正確には私の装備の能力を使ってですね。それに、まだ飛べるとは言えませんよ。地面から浮き上がり移動が出来る程度です。リリアーナみたいに、地上から何十メートルも上空を飛べるわけじゃありません」


『こやつはまだ訓練中じゃからな。その訓練をこの場所でやっておったんじゃよ』


「ひゃっ!?.....声が頭の中に聞こえた....?」

 リリアーナは肩をビクッとさせて驚きを見せてから辺りを見回した。


「リリアーナ、紹介が遅れましたね。今の声の主はそこで寝転がってる獣、私の従魔でマダラと言います。マダラは私の召喚獣で相棒です。私の許可なく襲ったりしませんから平気ですよ」

 と、マダラが俺とリリアーナの会話に思念で割り込んできたので紹介をした。


「従魔.....召喚獣.....さっきから気になっていたけど、セイジロウの従魔なんだ.....」

リリアーナはマダラが珍しいのか召喚獣が珍しいのかしげしげとマダラを見ている。


『なんじゃ、ワレが珍しいのか? ワレもお主が珍しいぞ。その若さでかなりの魔法の使い手はあまり見かけんからのぅ』

「普段は、山間に住んでる。でも、すでに母様と父様が亡くなったから一人で住む場所を探しに行くの」


「では、その旅の途中で私がリリアーナと出会ったわけですね」

「そう。セイジロウに撃ち落とされて出会ったの。わたしが暮らしていた場所はあの山の向こうで普段は誰も来ない。わたしは混血種で住んでる場所では嫌われていたから一人になったら出ていかなきゃならなかった」


 やはり、異種間で出来た子供は嫌われるのか....生まれてきたのは子供のせいではないのに、姿や血が違うからと嫌うのは俺は好きじゃない。


「そうですか....わたしはリリアーナを嫌ったりしませんよ。もちろん、マダラもです」

『当然じゃ。そんなくだらん事で嫌いになるわけなかろう。まぁ、セイジロウとワレに敵対するなら話しは別じゃがな』

「.....嫌いにならない? 本当に? わたしは混血だから人にもバードン種にも嫌われるのかと思ってた。だから、どこか誰も来ないような場所で一人で生きていく。わたしを嫌いにならないセイジロウとマダラに会えたのは嬉しい。ありがとう」


「あれ? リリアーナはどこか行ってしまうんですか?」

『なんじゃ、忙しいヤツじゃな。もう行ってしまのか? せっかくセイジロウの訓練相手が見つかっと思って思ったんじゃが』

 と、俺とマダラは自然とリリアーナを受け入れていた。こんな少女が一人で生きて行くには厳しい世界だ。それに、風魔法の得意な種族に出会えたのは俺にとっては嬉しい。今後の為にもリリアーナとは友人でいたい。


「ふぇ? セイジロウとマダラは何を言ってるの? 混血のわたしが一緒にいればセイジロウ達も嫌われるかもしれない。それに、わたしは旅の最中で暮らす場所を探さなきゃならないの」


「いや、だから私達と一緒に探せば良いのでは? 風魔法が得意だとしても一人で生きて行くには危険な世界ですよ? 私達も旅の最中ですから一緒でも問題ないですし。それに、今さらリリアーナが加わった所で私にはマダラがいますからね。目立ち度ではマダラに勝てませんよ」


『そうじゃ! ワレに勝とうなど万年早いわっ! それより、セイジロウに風魔法を教えてやるんじゃ。今回の訓練では目標を達成できんかったんじゃ。これからも訓練は必要じゃからな』


 俺とマダラはリリアーナを旅の仲間へと誘った。こんな少女がたかが混血というだけで自分を卑下して一人で生きていく事を見過ごせるほど俺は腐っちゃいない。そんなくだらない事で涙を流していいわけがないんだ。


「うぅ...グスッ....グスッ....あり....ありがとう....」

 リリアーナは目からポロポロと涙を流しながらお礼を言ってきた。


「リリアーナ、お礼なんて必要ありません。当然なんですよ。だから、その涙は嬉しい涙にしましょう。今日からリリアーナは私達の仲間です。なので、お祝いをしましょう。マダラ、森で適当に動物を狩ってきてくれるか? 少し陽暮れには早いけど豪華な夕食を準備しようとおもう」


『良いじゃろ! 酒も飲み足らなかったからのぅ。うまい飯はいくらあってもいいからのぅ』

 と、マダラはすぐに森へと向かっていった。


「リリアーナ、今日は美味しいものをたくさん食べて仲間との出会いに乾杯するんです。今日から一人ではなく私達がそばにいます。もちろん、リリアーナの住みたい場所が見つかればそこに住めば良いです。それまでの間は旅をする仲間です」


「うん......セイジロウ、ありがとう。わたしを嫌いにならないでいてくれありがとう」

「はい。なら、涙を拭いて夕食の準備を手伝ってくれますか? いつも以上に腕によりをかけて作りますから!」


 と、リリアーナと一緒に調理道具の下準備をしていく。その際にリリアーナには魔導具の使い方を教えていく。世間離れしているかと思えばそうではなく、それなりに知識もあった。バードン種が住む場所でも魔導具の存在はあったり、読み書き計算もリリアーナはできた。一般的な常識はリリアーナの母に教わっていたとリリアーナは話してくれた。


 リリアーナと話ながら調理道具の下準備をしていると、マダラが森から帰ってきた。

『セイジロウ、狩ってきたぞ!』

 と、咥えて持ってきた鹿に似た動物を目の前に置いた。


「へぇ、立派な鹿? だな。んじゃ、解体をしてから調理を開始するか。リリアーナはこれを解体できるか?」

「解体できる。ただ、わたしじゃ木に吊るせないからセイジロウも手伝って」

 と、リリアーナからの応援を頼まれた。見た目は少女なのに、言ってる事とやる事が鹿の解体じゃなければ可愛いらしいのに。


 俺はリリアーナと一緒に鹿の解体をした。魔法で冷水を生み出し鹿を冷やす。ある程度冷やしたらリリアーナが手際よく解体していった。食べられない部分や薬の調合に使う部分、食べれる部分を選り分けてくれた。


「セイジロウ、こっちの薬の調合に使うといい。要らなければ街で売れる」

「ありがとう、リリアーナ。それじゃ、鹿肉を使って料理をしよう。リリアーナはマダラと適当に待っていればいいよ」


 俺は新鮮な鹿肉をさっそく調理していく。それと、魚介類やルインマスの街で買っておいた料理を出せばそれなりに豪華にはなる。



 陽が沈む頃にようやく豪華な料理が出来た。鹿のローストに果実ソースをつけたステーキ。魚や貝類も焼いたし、フライドポテトや唐揚げ、天ぷらも作った。さらに、冷たいエールに果実水もある。


 今日から新しい仲間のリリアーナの祝いだ。たくさん食べて話して、これから楽しい人生の門出を祝うんだ。出し惜しみは無しだ。


「おーいっ! 料理が出来たぞっ!」

『ようやくじゃな! 待たせおってっ!』

「わぁっ! ずっと良い匂いがしていたから楽しみにしていた!」


 焚き火の回りにはたくさんの料理が並んでいる。その他にも鉄板焼きの魔導具の上には、肉も野菜もまだまだある。そして、ちゃんとプリンも用意してある。あとで、リリアーナを驚かすのが楽しみだ。


「おぅ! たくさん作ったからいっぱい食べてくれ! リリアーナは食後に甘味を用意したから楽しみにしていてよ!」


『なぬっ! ワレにはないのかっ! 最近は滅多に作らないのに今回はあるのかっ!』

「あぁ、今回はリリアーナの門出祝いだからな。しっかりと二種類を作ったぞ! 主役はリリアーナだ。リリアーナの許しがあれば食べていいぞ?」


『リリよ、ワレは甘味が食べたいのじゃ。良いな? あとで背に乗って走ってやるからワレにも甘味を寄越すんじゃ』


 リリってリリアーナの事か? いつの間にそんな仲良くなったんだよ....そして、どんな頼み方だよ.....子供並みの頼み方で上から目線って....


「うん、いいよ。マダラにも分けてあげる。だから、約束だよ?」

『ふむ、ワレは約束をする。では、セイジロウよ。リリからの許可はもらったからワレの分を分けておくんじゃぞ!』


「わかったよ....んじゃ、冷めないうちに食べようぜ! 新しい仲間の門出を祝って! かんぱーいっ!」


「『かんぱい! じゃ!』」


 俺はリリアーナの笑顔で食事を楽しむ姿を見ながら、マダラの食い意地に負けないように酒も料理も楽しんだ。リリアーナは、料理を食べる度に驚いたり笑ったりと表情豊かに楽しそうに食べてくれる。


 マダラは相変わらず追加注文ばかりだ。実際、マダラは食事をしなくても生きていけるのだがそんなのは関係ないとばかりに食べ散らかしていった。


 こうして、夜遅くまでマダラと俺、リリアーナはお腹いっぱいなるまで食べて飲んで騒いだ。

 ちなみに、リリアーナはプリンの虜になった。やはり、種族が違っても女の子なんだろう。プリンを食べてる姿は可愛かった。

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