マダラとキャンプ・5
No163
マダラとキャンプ・5
それから数日さらに【黒衣透翼】と【透縛鎖靭】の訓練は続いた。
この数日間でそれなりに天装具の基礎訓練は終了した。基礎は終了したが熟練度はまだまだ低い。黒衣透翼と透縛鎖靭を同時に操るのはまだ難しく今後の課題はまだある。
マダラとの朝食を食べた後はさらに訓練を続ける。マダラは、朝食を食べるとすぐに森へと駆けていった。毎日飽きもせずにあっちこっちへと森の中を駆けて行ってるが魔物の狩りすぎには注意してもらいたい。
人の害となる魔物を狩る事は悪いことじゃないけど、周辺の生態系が変わるとどんな変化が起こるか分からないからな。まぁ、マダラはその辺をちゃんと考えてるから大丈夫だと思うけど.....
さて、俺は訓練訓練。今日こそ天装具を同時に操るのはコツをつかまなきゃな!
まずは、透縛鎖靭に魔力を流し込み基本となる長さと太さにする。そしたら、黒衣透翼にも魔力を長し地面から十数センチ浮き上がる。
ここまでは出来るんだけど、こっから透縛鎖靭を操ると黒衣透翼の方の集中力が切れちゃうんだよな.....かと言って黒衣透翼に集中すると透縛鎖靭が上手く操れないし.....考えてもしょうがないか。とりあえず、色々と試して見るしかないか!
俺は思考錯誤しながら色々と試していった。
異世界ファンタジーの漫画やアニメだったら新しい装備や武器が手に入るとすぐに扱えるようになるけど、実際はそんな事はない。
マダラから受け取った天装具はすぐには扱えなかった。血盟契約をしてるから自分とマダラ以外には扱えない特別な装具だけど.....漫画やアニメのようにはいかなかった。
今でも集中を切らせば、透縛鎖靭は操れないし黒衣透翼で地面から浮いてるけど不安定だ。単独ならそれなりに使えるようになったんだけど、同時に使うと難易度が数段回跳ね上がる。
実際、今すぐに同時に操る事は急務ではないけどそんな甘えた事を言っていたら命がいくつあっても足りない。
以前遭遇したフェレイバーンのように、予期せぬ事態が起こるかもしれないのがこの世界なんだから.....
色々と思考錯誤しながら訓練をしてみるが思ったようには成果が上がらない。そんな焦りにも似た気持ちで午前の訓練は終わった。
昼時になりマダラが森から帰ってくると昼食の調理を始めて出来た料理を食べながらマダラに訓練の話をした。
「マダラ、天装具を同時に操る方法で何かコツとか知らないか? 午前を色々とやってみたけど上手くいかなくてさ....」
『ほぅ、セイジロウにしては珍しいのぅ。ワレに相談とは』
「別に相談をしなかった事に意地を張ってるわけじゃないさ。自分でやってみて無理だったから相談したんだよ。やってもいないのにコツとか聞けないだろ?」
『殊勝な考えじゃな。良いじゃろ、午後はワレがセイジロウの訓練を見てやろう』
「あぁ、助かるよ。どうにも息詰まっていてな。せっかくの訓練だからやれる事はやって起きたいんだよ。宝の持ち腐れにはしたくないからな」
あれだけの高性能な装備なんだ。基礎的な事はもちろん、応用的でさらに独創的な使い方が出来れば俺の戦力も上がる。自分の命を守るのは自分自身なんだから。それに、強くなれば大事な人や大切な人達も守れるかもしれないんだ。やれることはやるべきだ。
『ふむ、いつになく真剣じゃな。最初の出会った頃より良い顔つきになっておるぞ』
「なんだよ、急に。変な事言ってないでさっさと食べて訓練を開始するぞ!」
▽△△▽▽△△▽△
昼食と食事休憩を取った俺とマダラは午後の訓練を開始した。
「マダラ、それじゃ教えてくれるか? 天装具の黒衣と鎖靭の基礎的な事は出来るんだけど、両方同時に扱うとどうしても上手くいかないんだ」
『ふむ、昼に話していた事じゃな。セイジロウの話を聞いた時に思ったんじゃが、天装具は装備品じゃが同時にセイジロウの一部でもある。血盟で契約をしておるわけじゃからセイジロウの意のままに操る事が本来はできるはずじゃ』
って、言われても実際は上手くいかないんだよな。まぁ、他に装備してる短剣や革鎧よりは十分に馴染んでるし、感覚的にも繋がりを感じるけど.....
『セイジロウは難しく考え過ぎるきらいがある。もう少し単純に考えるのじゃ。魔力を流すにしてももっと自然に流してみるんじゃ。別々に流すのではなく二つを一つに纏うように、包み込むようにやってみるんじゃ』
俺はマダラが言うように黒衣と鎖靭に魔力を纏うようにやってみた。自分の体の一部のようにイメージしながら.....
『そうじゃ、なかなか良いぞ。そしたら、体を浮かせつつ透縛鎖靭を振るってみるんじゃ。最初の訓練を思い出しながらじゃぞ』
俺は、体が地面からの浮き上がると近くの木に向かって透縛鎖靭を操り振るってみた。すると、自分で訓練していた時とは違ってすんなりと操る事ができた。
「おぉっ! 前とは全然違うぞっ! 浮き上がっているのにフラつかないし、ちゃんと透縛鎖靭を操れる!」
『そうじゃろ、二つを同時にしようとしても操る瞬間には必ず意識を片方に割かれる。なら、二つを一つにしてしまえばそうはならんからな。それが分かればあとは単純じゃ』
なるほどな。やっぱり、マダラに相談してよかったよ!
「よしっ! これならいけるぞ! ありがとうマダラっ! 午後はこの調子で訓練するよ!」
『ふん、現金なヤツじゃ。ワレは片隅で寝ておるから分からなければ声をかけるんじゃぞ』
珍しくマダラは狩りに行かないらしい。最近は狩りばかりでたまにはマダラもゆっくりしたいのかな?
「そっか、分かったよ。んじゃ、気合いを入れて頑張りますか!」
俺は、黒衣透翼で体を浮かせながら透縛鎖靭を操っていく。最初は基礎的な復習をしながら徐々に動きながら操る。
少し慣れてきたら動く範囲を広くし動く速度も上げていく。イメージで作り出した魔物とのシミュレーションをして何度も繰り返していく。
たまに、休憩を挟み自分の行動を振り返り修正しつつ陽が暮れるまで訓練を続けた。
今日一日でだいぶ黒衣と鎖靭の同時扱いには慣れてきた。とはいえ、まだまだ隙も多いし改善の余地はたくさんあるが手応え十分にあった。
訓練を終了して寝転がってるマダラに声をかけて夕食の準備を始める。
今日は訓練が思ったように進んだので、夕食は少し豪勢にした。カニや魚、貝類に天ぷらを用意した。
『ほぅ、今夜は豪華じゃな! 久方ぶりに美味な夕食が食べれるのぅ』
「久方ぶりって、いつもはそうじゃないみたいな口振りだな....」
『そうじゃな、最近は凝った料理がなかったからのぅ』
「そりゃあ、悪かったな。そう毎日毎日豪勢にとはいかないからな。今日は訓練も捗ったしマダラのおかげでもあるからな。ちょっとした気持ちだ」
『ふむ、ではありがたく食しようではないかっ! ガブッ!』
と、さっそく盛り付けた受け皿に向かってかぶりついた。それからは、ガツガツと食べていきさらに追加で注文してきた物を俺は調理してマダラに差し出した。
俺もマダラに負けじと作った料理をどんどんと食べていく。そんな風に互いに腹一杯になるまで食べてその日は終わった。