マダラとキャンプ・3
No161
マダラとキャンプ・3
俺は現在必死にマダラの魔法攻撃を避けたり防いだりとしている。マダラは数々の魔法攻撃を繰り出してくる。
『どうしたセイジロウっ! 避けたり逃げたりしてるだけでは上達せんぞ! 透縛鎖靭をもっと使うんじゃ!』
俺は迫り来る火の玉を透縛鎖靭の鎖に水魔法を纏わせて、体の正面に鎖の盾を作り出して防ぐ。
鎖の盾にマダラの火の玉が直撃し水蒸気を出しながら相殺された。
その隙に俺は火槍を作り出してマダラに向かって放った。放たれた火槍は螺旋回転をしながらマダラに向かっていくが、マダラは素早く避けるとすぐに水の玉を放ってきた。
それを土魔法の土壁で防ぎ透縛鎖靭を操りマダラの足元を狙う。
向かってきた透縛鎖靭をマダラは軽く飛び上がって交わすが俺はさらに透縛鎖靭を操りマダラを追尾する。
『なかなか、操れるようになってきたではないか! じゃが、まだまだじゃな!』
と、マダラは自分に向かってきた透縛鎖靭を風魔法で弾くとそのまま風の玉を俺に放ってきた。
俺は透縛鎖靭を操るのに気を回しすぎてマダラの風の玉を避けきれず余波で吹き飛ばされた。
「ぐわぁっ!」
余波に耐えられず吹き飛ばされて地面の上を転がる。その間にマダラは急接近してきて俺の体の上に脚を軽く当てた。
『これで、六度目の死じゃな。じゃが、数をこなす度に動きや状況判断は良くなってきておる。さて、一度休憩にしようぞ。そろそろ飯時じゃ』
と、俺は荒い息を吐きながらマダラが脚をどかしてその場で仰向けになった。
「はぁ...はぁ....はぁ....ちょっ、ちょっと休憩させ....て...くれ....」
『なんじゃ、だらしないのぅ。セイジロウはもう少し体力をつけんといかんぞ?』
「分かって...るよ....ったく、.....バカスカと魔法を撃ちやがって.....少しは、加減...しろ」
息を整えながらマダラにそういった。
『加減はしておるぞ? それに、訓練だからこそ多少の無茶をせんでどうする? 本番では命のやりとりになるんじゃぞ?』
それでも、もう少し優しくしてくれても良いだろう? そんな急に強くなったら勇者とか要らないだろうがっ!
「くそっ! 必ずギャフンと言わせてやるからなっ!」
『そんな事を言うのは何百年先じゃろうのぅ? ホレ、そろそろ起きんか。昼食を食べたら次の訓練を始めるんじゃ。急がんと陽がくれてしまうではないか』
チッ! どこのスパルタ軍曹だよ....昼は干し肉だけにしてやろうか!
俺は地面から起き上がり昼食の準備を始める。さすがに干し肉だけじゃ午後は持たないので露店料理とパンとスープで昼食を済ませて食事休憩をした後はまた午後の訓練を始めた。
午後の訓練も午前と同じようにマダラとの戦闘訓練だ。マダラから放たれる魔法を透縛鎖靭で防ぎつつこっちからも魔法を放つ。
放った魔法をマダラは軽く交わし接近してこようとするが、透縛鎖靭を操りマダラの接近を防ぐ。俺の弱点は接近戦に持ち込まれる事だ。
基本的な近接戦闘が出来ない。体術や剣術が出来ないから寄って来られたら終わりだ。
簡単な剣術擬きならハルジオンで訓練をしたが戦闘には使えない。せいぜい、子供が剣を振り回すぐらいの技量しかない。
なので、中遠距離の戦闘でケリをつけるしかない。
『どうした、セイジロウ? その程度ではすぐに接近されてしまうぞ! 相手の次の行動を予測しなければ対処が遅れてしまうぞ?』
「わかってるよっ! ったく、チョロチョロ動きやがって.....なら、」
俺は、透縛鎖靭を操りつつ魔力を溜めていく。
「くらえっ! 土針葬送っ! からの、炎弾乱舞っ!」
透縛鎖靭でマダラの逃げ道に土針を作りさらに火の玉で広範囲に弾幕を張る。
『むっ.....じゃが、まだ甘いわ!』
と、マダラは土針の上を大きく飛び越えて上空へと逃げた。
「だと、思ったさっ! 風槍螺旋っ!」
上空で身動きできないマダラに風の槍を放った。これで、チェックメイトだ!
『甘いと言ったわっ! 風竜波っ!』
マダラは自身の囲むように風の竜巻を発生させて俺が放った風の槍を防いだ。
俺はマダラが生み出した風の竜巻の余波で態勢を崩した。
『セイジロウは攻撃を放った後に隙が出来やすいぞ。それを早めに直すことじゃな。それと、さっきのは魔法ではなく透縛鎖靭を使う方が良かったのぅ』
と、マダラはすでに俺の背後に立ち思念を送ってきた。チェックメイトは俺の方になったわけだ.....
「....さっきのはいけると思ったんだけどな。つい功を焦って魔法に頼ってしまった俺の負けか」
『攻撃自体は悪くはなかったがのぅ。大抵の魔物はあれで仕留めれたが、隙が出来るのはまた別の問題じゃ。確実に止めを刺したのを確認するまでは気を緩めてはならんぞ』
確かにマダラの言う通りだ。結果を見ずに勝った気でいたのは事実だからな。
「わかった、次からは気をつけるよ。あとは何かあるか?」
『もう少し透縛鎖靭を細かく操れると良いんじゃろ。延ばした鎖の途中を変化させて攻防一体にすれば接近されでもすぐに対処できるじゃろ』
「うーん....分かった。少し試してみるよ。ちょっとここからは一人で訓練してみたいからマダラは狩りに行ってきてもいいよ?」
『そうか、ならワレは周辺で狩りでもしてこようかのぅ』
と、陽暮れまでマダラとは別々に行動した。
俺はさっそくマダラに言われた通りに透縛鎖靭を伸ばし、鎖の途中を防御にそして先端を攻撃用に操る訓練を始めた。その際に透縛鎖靭の基本の長さも変化させる。
当初の基本的な長さはニ、三十メートルほどだったが今回から倍の長さ変化させた。
透縛鎖靭の鎖を自分の回りに待機させつつ、先端で討伐対象を攻撃させるスタイルに変化させる。
透縛鎖靭の攻撃を掻い潜って接近してきた敵には鎖の防御壁を張りつつ、魔法で撃退する。常に接近される事を想定しながらイメージトレーニングを繰り返して陽が暮れるまで訓練した。
まだまだ、操作性には課題があるが少しずつ訓練の成果は上がってきている。と、信じながら今日の訓練は終了した。
マダラが森の狩りから帰ってくると夕食の準備を始め、夜営の周辺に肉の焼ける良い匂いが広がっていく。その匂いを嗅ぎながらマダラはまだかと言ってくるが俺は一蹴しひたすらに調理していく。
料理が出来上がると受け皿に今夜の夕食を盛り付けて食べた始める。互いに今日の訓練の話や森での狩りの話などをしつつ、追加の料理を作っては二人で食べていった。
夕食を食べた後はいつも通りにマダラに見張りを頼んで早めに寝た。
明日は天装具のもう一つ【黒衣透翼】の訓練を始める。