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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
150/226

水着宣伝イベント・4

No150

水着宣伝イベント・4



 俺は翌日、海水浴イベントで決まった事をマーマン種のスレイブさんに伝える為に、スレイブさんの家を訪ねた。

「スレイブさん、いますか? セイジロウです」

 と、扉をノックして来訪を告げる。すると、少ししてスレイブさんが扉を開けて出てきた。


「セイジロウか。どうした、何かあったのか?」

「特に緊急性はありませんよ。ただ、海水浴での話が形になったのでスレイブさんに報せにきました。それと、イベント参加のスレイブさんの仲間の確認ですかね」


 海水浴イベントでスレイブさん達に魔物の警戒、討伐を依頼してるからその確認だ。スレイブさん達マーマン種がいないと、海水浴イベントは開けないからな。


「そうか、ならちょっと待ってくれ。先にマレアナレアの糸を処理するから、午後まで暇を潰してくれるか? 終わったらこの間行った店で待ち合わせをしよう」


 あの料理が旨い店だね! うん、あそこは料理が旨くて安いから良いよ!


「分かりました。では、午後に待ち合わせをしましょう。先に、スレイブさんが着くようなら何か食べていて下さい。料理は奢りますから」

「そうか、わかった。なら、午後にな」

 と、スレイブさんとの約束をしてから、俺とマダラは漁業場に向かった。

 漁業場で捕れたての魚介類を仕入れてこよう!


 俺はマダラと一緒に会話しながら漁業場に向かった。

「さて、少し時間が空いたから新鮮な魚介類を仕入れるか」

『そうじゃの! 魚介類はいくらあっても困らんからのぅ。それと、あとで魔石にセイジロウの魔力を補充しておくのじゃぞ』


「えっ? もうそんなに使ったのか?」

『別にまだセイジロウの魔石には余裕があるが、最近はそれなりに食材を溜めているであろう? 魔物の討伐に行かない間は魔石に魔力を補充しておくほうがよいじゃろ。鍛練にもなるしの』


 まぁ、それはそうだけど.....しょうがない、小さい魔石は売るかギルドでの依頼で処理して、大きめの魔石をいくつか買って入れ替えるか。こまめに魔力を補充するのも面倒だからな。


 マダラの影の保管は魔力が必要だからしょうがないけど、マダラの魔力が使えたらな。まぁ、マダラの魔力は使ったら使った分の魔力を補充しなきゃいけないからな。


「わかった、スレイブさんとの話が終わったら魔石を買いにいくよ」

『ふむ、そうするのじゃ。セイジロウの魔石があればあるほど保管が出来るんじゃ。しっかりとやるのじゃぞ』


「はいはい、分かりましたよ。マダラも海水浴イベントでは頼むぞ? マダラには期待してるからな!」

 と、漁業場に着いて捕れたての魚介類を見て回っていく。


『それは任せておけ。して、ワレは何をするんじゃ? セイジロウはワレに働けと言うがワレは何も聞いておらんぞ?』


 あれ? そうだっけか.....


「マダラには、スレイブさん達と協力して魔法演舞をしてもらおうかと思ってな。火水祭ほどの規模じゃなくていいから、少し小さな催しだな」


『あの男と一緒にじゃな。なら、水魔法で子龍を作り出せばよいのか?』

「子龍って、マダラには作り出せるのかっ?!」


 おっ、あの魚は初めて見る魚だな。黄色と緑色の縞模様で見た目は凄いけど.....売ってる人に話を聞くと、この魚は淡白な味で果実ソースとの相性が良いらしく、俺とマダラ用に買った。すぐにマダラの影の中に保管して次の魚介類を探して歩いていく。


『子龍ぐらいは造作もないわ。ワレ達がいた世界では龍など珍しくもなかったからのぅ』

「マダラ達がいた世界って、現実の世界じゃないよな?」


『なにが現実とは表現によって変わるが、セイジロウが住んでいた世界ではないのは確かじゃな。言葉にすれば【天界】【神界】【宵の国】【絶界】などと言われるとるがな。ワレ達にとっては住みやすい世界じゃ』


「それって、あの【高天原】の事なのか?」


 俺とマダラは歩きながら気になった黒いカニに目をやった。体長は五十センチオーバーとかなりデカく、真っ黒な甲羅と大きな鋏が二本付いている。

 売ってる人に話を聞くと珍しいカニで、身はかなり詰まっていて重量もあり上物だと言った。


 カニ漁に数回には一度は捕れるらしく、味は濃厚でクリーミーな味わいだそうだ。茹でて食べても良いし、鍋の具材にしても良い。さらには、焼いても旨くカモンの汁をかけて食べても旨いと太鼓判をおして進めてくる。

 それを、四つ買いマダラの影に保管して次の魚介類を探して歩く。


『そうじゃのぅ、ワレ達の世界に名などなかったからのぅ。高天原で通じるのならそれで良いじゃろ。ワレ達は【元天界】と呼んでいたがな』


「それが、人での高天原なわけか....」

『だうじゃうのぅ。元天界は広大でセイジロウの世界とは違う世界じゃからのぅ。たまに、元天界からセイジロウの居た世界に暇潰しに降りるヤツはそれなりにおったし、元天界に入ろうとする輩者もおったしの』


「元天界から降りて来るって.....それって神話とか伝説とかの話しに出てくるやつか?」

『そうなんじゃろうな。陽の国で有名なのが【龍】や【妖狐】、【白蛇】や【鹿】それと【獅子犬】のワレじゃな。元天界は住みやすいが刺激が少なくてのぅ。たまに、暇潰しに行ったりするんじゃよ』


 なんだよ、そのちょっと暇だから散歩でも行くか的な感じは.....


「それって、良いのか? マダラの口調からして気軽に行き来できるみたいに聞こえるけど? マダラのヌシ様とかに怒られたりしないのか?」


 俺とマダラは買い類の詰め合わせや、小振りの魚の詰め合わせのお買い得品を買ってはマダラの影に中に保管していく。さらに、漁業場内を一緒に会話しながら歩いていく。


『ヌシ様は起こったりせんわ。基本、ヌシ様から喚び出しがなければ自由じゃからな。強いて言えば、ヌシ様の許可なくワレを喚び出したセイジロウが怒られるぐらいじゃな』


「はあぁ!? 俺が怒られるのかよっ!」だってあれは不可抗力だし、喚び出しに応じたのはマダラもだろ?」


『ワレはほぼ強制じゃったのじゃぞ? せっかく気分よく寝ていた時に、セイジロウに召喚されたのじゃ。しかも、血盟召喚とは古い召喚方法での。まぁ、別に陽の民のセイジロウに喚ばれたぐらいでヌシ様が怒るとは思えんがのぅ』


 ホントに? マジで? 絶対に? 何かの拍子に会うことになった時に雷とか落ちないよね?


「それ、信じるからなっ! 何かあったら助けてくれよな! マダラは俺の相棒なんだからっ!」

『そんな必死にすがらんでも擁護はしてやるから少しは落ち着かんかっ! 情けない主じゃのぅ、セイジロウは』


「普通はこうなるんだよっ! 日本を創った人? に、怒られるなんて命がいくつあっても足りるかっ!」

 いつかそんな日が来ないようにその人に必死で弁明しておいた。世界が違っても願いは届きますよね? 届いて下さい!


 と、漁業場での買い物をそれなりにしてスレイブさんとの約束の時間になってきたので、待ち合わせの店に向かった。


▽△▽▽△△△


 俺はスレイブさんとの待ち合わせの店に着くとマダラに影の中に入ってもらい店内に入った。

 店内を見渡してもまだスレイブさんは来ていなく適当なテーブル席に着くと店員に料理の注文をした。


 しばらくして頼んだ料理がテーブルに用意されると、それらの幾つかの料理を影の中に入れていきマダラに食べるように思念を送った。

 そうして少しの時間が経つとスレイブさんが店内に入ってきて俺は手を挙げて場所を示した。


「セイジロウ、待たせたな。少しばかり遅れてしまった」

「いえ、私の方も適当にやってましたから平気ですよ。食事は食べてないですよね? 良かったら食べながら話をしましょう」

 と、注文した料理をスレイブさんに進めた。スレイブさんは、冷えたラームエールを注文し、俺も同じものを店員に注文した。

 ラームエールが揃うと乾杯をしてから海水浴イベントの話を始めた。


「それで、セイジロウの話しと言うのはなんだ?」

「ええ、海水浴イベントはそれなりに形になることになりました。まずは、アンリエッタさんを覚えてますか? 私と初めて浜辺で会った時に一緒に居た人です」


「あぁ、俺を看病してくれた女性の一人だったな。その女性がなにか?」


「そのアンリエッタさんが海水浴イベントに参加してくれます。ルインマスの街に鉄板焼き店のオーナーでこの近くにも新しい店を開いてる人ですね。海水浴イベントでは鉄板焼き店の出張営業をしてくれます。鉄板焼き店の宣伝も兼ねて誘いました」


「ほぅ、噂になってるあの店か....なかなかな料理店らしく少し話を聞いたな。なんでも、珍しい調理法と素材を生かした料理を出す店らしいな」


 どうやらすでに漁業場界隈ですでに、アンリエッタさんの鉄板焼き店は噂になってるみたいだった。


「はい。下手に凝った料理を出すより、必要最低限の味付けで最大限の味を引き出す料理です。この店の料理も旨いですが、そっちの店も利用して見て下さい。漁業場の人達やマーマン種の方達向けに出した店だとアンリエッタさんは言ってましたから。視線や奇異感は街中より随分少ないはずですから」


 スレイブさん達マーマン種は街中では、奇異な視線を向けられ事が少なくない。なのでどうしても活動範囲が街中より漁業場周辺になってしまう。なので、そんな視線を気にする事なく旨い料理が食べれる店が増える事は良いことだ。


「そうか、セイジロウが言うなら近いうちに足を運んでみよう」

「えぇ、そうしてして下さい。それから、アンリエッタさんの名前か私の名前を出して魚介類を持っていけば買い取ってくれますし、その場で調理もしてくれますから。貴重な魚介類や珍しい魚介類は店にとって嬉しいですし、持ち込みなら安く食べれるはずです」


「それは嬉しいな。俺達なら手軽に魚介類は捕ってこれるからな」


「はい。ですが、大量な持ち込みや買い取りは控えて下さいね。出来れば、漁業場に卸してくれると市場が潤いますし厄介事は避けるべきです」


「それは、分かっている。俺達は別に事を荒立てる事はしないさ」


 酒のつまみと料理、ラームエールを追加注文した。


「ありがとうございます。それと、冒険者ギルドが海水浴イベントに参加します。浜辺での魔物警戒、警備で冒険者と魔法師達がギルドから依頼でやってきます。これは今後、海水浴イベントの視察も兼ねてます。代々的にルインマスの街の名物にする為だと思います。上手く行けば毎日がお祭り騒ぎになりますから冒険者ギルドに主催してもらえば手間が省けますし、スレイブさん達にとっても依頼が増えるはずです」


 浜辺近海の魔物狩りと、浜辺での警備でマーマン種と冒険者達で依頼の住み分けが出来れば良い協力関係が築けるはずだ。魔法師もいざという時の防衛力を備える必要があるから、魔法の訓練をして力の底上げをするはずだし、腕の良い魔法師は海水浴イベントや火水祭にも出れるはずだ。


「どうやら思わぬ副産物がくっついて来てるな。俺達にとっては嬉しい限りに聞こえるが無茶な事を押し通しているわけではないだろうな?」


 先ほど頼んだ酒のつまみと料理、ラームエールがテーブルに用意されスレイブさんはラームエールを飲みながら言った。


「そんな事は無いですよ。一度の大規模な火水祭より火水季に毎日行われる小規模な催しの方が収益は出ます。それに、依頼内容も増えますし、討伐された魔物は買取りも可能で互いに利益がありますから。俺は想定の話を冒険者ギルドに話しただけですよ。すでに商業ギルドは水着の制作で一歩先に進んでますからね」


 錬金術ギルドはエールサーバーや鉄板焼きの魔導具で進んでるから、遅れてるのは冒険者ギルドだけだ。ここらで、冒険者ギルドは他のギルドと足並みを揃えたいはずだったからな。


「どうやら、突発的な考えでは無くある程度計画的なようだな。それでいて、何処ともかち合う事なく話を進めるとは......それに、俺達の事も加えて考えてるとは恐れ入る」


 俺は料理をつまみながらラームエールを飲む。

 スレイブさんは、そう言って称賛を送ってくれるがスレイブさん達がいなければ何もかもが出来なかったんだ。本当に称賛されるべきはマレアナレアの糸を捕ってきてくれたスレイブさん達だ。


「私ではなくスレイブさん達こそが称賛されるべきです。水着の完成もつい先日出来ました。スレイブさんがマレアナレアの糸を採取してくれるからこそ、海水浴イベントが出来るのです。話をしてイベントを起こすのは誰にでも出来ますが、マレアナレアの糸を捕る事が出来るのはスレイブさん達マーマン種だけです。なので、改めて感謝します。ありがとうございます、スレイブさん」


 俺は頭を下げて感謝を示した。本当にありがとう。美人、美少女の水着姿が見れるのはスレイブさんのおかげです!


「おっ、おい! 頭をあげろ、セイジロウっ! こんなとこでそんな事をするな! 感謝は受けとるから」

 と、慌てる様子のスレイブさんに言われて頭を上げた。


「よかった。ちゃんと感謝が言えました。これからもよろしくお願いします、スレイブさん。それと、スレイブさん達の仲間は集められましたか?」


 スレイブさんは恥ずかしさを紛らわす様にラームエールを一気に飲み干すと新しく注文した。


「ったく。あぁ、仲間は集まったぞ。話をしたら快く受けてくれた。水魔法の長けたヤツも数人受けてくれたぞ」


「おおっ! それはありがたいですね。なら、報酬は前金で半分先に払いますから残りは当日に渡します」

 と、先に報酬の半分をスレイブさんに渡した。


「.......確かに受け取った。俺から皆に分配しとくから安心してくれ」


「はい、任せます。それと、当日の海水浴イベントで着てもらうスレイブさん達用の水着も用意しましたから、あとで参加する仲間達と服飾店レイリーンに行って作ってもらって下さい。代金は私が払いましたから、サイズ調整をしてくるだけですから」


 そう、今回は水着の宣伝イベントなので参加者は全員が水着を着用してもらう。女性はもちろん、男性もだ。海水浴イベントに来るすべての人がだ。それなりの出費になるが赤字にならない程度に冒険者ギルドやレイリーンさん、アンリエッタさんには話をしてある。今回は利益を最低限にしてもらったのだ。


 そうしないと金が無くなっちゃうんだよね。ギルドの個人口座にはかなりの金額が入ってるから全部が無くなる訳じゃないけど、貯めてばかりいても意味ないからね。金は使ってこそ巡る物だから.....金は天下のまわりものってね。


「そこまで、してくれてるのか? セイジロウにばかり負担がかかるのではないか?」


「それは、大丈夫ですよ。長い目で見ればちゃんと稼げるようになってますし、金は使ってこそですから。それに、スレイブさん達には当日にしっかり働いてもらいますから! 水着もきっと気に入りますよ。マーマン種の方にはなるべく安く手に入るように話しはしてありますから、興味が出てた今度は自分で買ってみて下さい」


 水中で活動するマーマン種や船乗り、猟師達なら需要はあるからな。スレイブさん達を通して宣伝すれば話は広まるし、船乗りを通じれば他国にも話は行くはずだから。


「そうだな、仲間達にも話をしてみよう。それと、今回の働きは期待してくれ! セイジロウには行動で示してみせよう」

 と、力強くスレイブさんは宣言してくれた。


 その後は陽が暮れて夜まで話は続いた。スレイブさん達にはただ魔物討伐をしてもらうだけでなく、水魔法で催しもしてもらうのだ。その打ち合わせも兼ねて酒と料理を楽しみながら、海水浴イベントの話しに花を咲かせた。

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