フローラの手腕
No15
フローラの手腕
翌朝、手早く朝食を食べてギルドの食事処に向かう。すぐに今日のプリンを仕込み、魔冷箱にプリンを冷やして準備完了。
街の市場に向かい、フレンチトースト用のパンを買う。あと、干し果実...ドライフルーツだな。それと、普通の果実を買ってギルドに戻り材料をしまったらいざ出陣。
「アリーナさん、おはようございます。フローラさんに取り次いでほしいのですが....新作の甘味についての相談がありまして...」
「セイジロウさん、おはようございます。朝からバタバタしていたのはその為ですね。新作ですか.....わかりました。少々お待ちください。」
悪くない反応だね。アリーナさんも甘いものにはやはり弱いのか?
まぁ、だいたいの女性は好きだよな、スウィーツは。
少し待つとフローラさんがやって来た。
「おはようございます、セイジロウさん。新作甘味だと伺いましたが....個室に移動しましょう。」
さて、ここからが勝負だな。予想ではかなりの高確率で教えてもらえるはずだが....
個室へと移動し、アリーナさんが紅茶を用意してくれた。そして、2人きりになり紅茶を一口飲んでから話を始めた。
「時間を取ってもらってありがとうございます。じつは、新作を考えましてその報告と、実は魔法に関しての相談があります。」
「やはりそうですか....わざわざ新作の甘味だけではなかったのですね。いいでしょう、話を聞きましょう。」
「はい、実は魔力が足りなくて魔法の使用回数が稼げないのです。そこで、魔力を増やす方法を教えて欲しいのです。フローラさんから借りた本には、初期の魔法の発動方法は載ってるのですが、魔力に関しての記述が少なくて分からないのです。」
「あれは、初心者用の本ですからね。初心者が魔法を覚えるとすぐに使いたがります。それを防止、抑制すり為の初心者の本です。魔力が少なければ大した魔法も使えないですし、威力も少ないです。事故や怪我をさせない為ですね。」
「ハハハ....耳が痛いですね。確かに浮かれて魔法を使ってましたね。フローラさんにはこうなると分かっていたんですか?」
「おおよそ分かってました。セイジロウさんに、魔法を教えた時の喜びようはまるで子供と一緒でしたから....騙したわけではないですが、一応の対処だったのです。理解してくれると助かります。」
「いえ、こちらこそです。自制が足りませんでした。気を使ってもらいありがとうございます。」
「セイジロウさんですから、すぐに気付いてわたしの所に聞きにくると思ってましたよ。」
「ハハハ...その通りになってしまいましたね。......それで、教えていただけるのですか?」
「はい。教えましょう、下手に拒めばセイジロウさんは他の方に聞くか、魔法の本を自分で購入して独学で学ぼうとしますからね。変な覚え方をするより私が教えた方がいいでしょう。」
ありゃ、お見通しだな。やはり、俺と同じ考えをするヤツがいるのか、フローラさんの経験によるのか?
「まずは、魔力の知覚は出来ますか?」
「はい、すでに魔力は感じれますよ。自分のだけですけど...」
「なら大丈夫そうですね。.....ここでは何ですから練鍛場に行きましょう。先に行っていてもらえますか?」
「分かりました。」
練鍛場に着いてから少ししてフローラさんがやって来た。
「お待たせしました。では、始めましょう。魔力を増やすのは体を鍛えるのと一緒です。魔力を限界まで使い、魔力を貯めておける器を大きくするのです。ですが、毎日毎日、魔法を放つの大変です。魔法の使用は街中では極力使えませんし、練鍛場でも限度があります。なので、コレです。」
フローラさんは革の小袋から丸い石を取り出した。
「コレが魔石です。一定以上の魔力を宿した魔物の体内からとれる魔力を含んだ石ですね。これは、魔導具に使われたり錬金術に使われます。魔石に含まれた魔力を糧として使用します。用途は多岐にわたりますが、今は説明をはぶきましょう。」
「これをどうするのですか?」
「見ていて下さい。」
フローラさんが小さな魔石を手に握り少しして手をひらくと、鮮やかな緑色をした小さな魔石になっていた。最初は濁った色をしていたのに....
「このように、自分の魔力を魔石に注ぐと魔石に魔力が貯まります。この魔力が空になった魔石に魔力を貯めて自分の魔力を空にするのです。そして、回復させて魔力を貯める器を鍛えるのです。」
「なるほどっ!安全に魔力を増やす鍛練が出来るんですね!」
さすがはフローラさん。よく考えていてくれてるな....これを繰り返せば魔力が増えるな...
「それだけじゃありません。ギルドの依頼に魔石に魔力を補充する依頼があります。依頼を受ければお金も稼げますよ。」
良い笑顔ありがとうございます!
さすがは、冒険者ギルドのフロア長。隙がねぇ...
「はい、謹んで依頼を受けさせてもらいます....」
「よろしくお願いしますね。それと、魔力を増やすだけでは魔法の技術が上がりません。一つ魔法を教えますので、練習してください。『......光よ』」
フローラさんが詠唱すると小さな光の玉が現れた。
「これは、灯火の魔法です。危険は何もありません。ただ、光るだけです。これを操ります。」
フローラさんが指を動かすと光の玉はアッチにコッチにソッチにと、縦横無尽に移動した。
「このように、慣れると自在に操れます。これで、操作力と持続力を鍛えます。依頼を受けつつ魔法の修練ができます。どうですか?」
まったく、こっちの予想より数段階上をいかれたよ....フレンチトーストじゃ足りなかったか?
「はい、十分です。やっぱり、フローラさんに相談して良かったです。ありがとうございます。」
「....では、新作の甘味を....食べたいです。」
と、恥じらうフローラさんにありがとうございます!!
そのあと、ギルドの食事処で新作のフレンチトーストを作って食べてもらった。
フレンチトーストを食べてるフローラさんは、幸せそうだったと報告しておく。
ここまで読んで下さりありがとうございます。面白いと思いましたら評価をよろしくお願いします。