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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
144/226

自重してるよ?

No144

自重してるよ?



 俺は現在冒険者ギルドの執務室で、ギルドマスターのサーシャさんが取り出してきた契約書を見ながら話をしていた。


「この鉄板焼きに関する調味料レシピ、【カモンネーズ】【タルタルソース】はすでに前以て契約した通りよ。あと、甘味レシピ【パンケーキ】【パンケーキプリン】も同じように契約したわね」


 確かに、調味料レシピと甘味レシピはギルドとの契約で利益から一割を俺のギルド口座に振り込んでもらう契約だ。


「それから、魔導具の【エールサーバー】ね。これは、錬金術ギルドとの契約で利益の一割をセイジロウのギルド口座に振り込む契約ね。改めて契約書を並べてると凄いわね。さらに、ハルジオンの街でも色々とやってるみたいだし? これで、自重してるとは良く言えるわね」


 あ、あははっ......こんなにやってたっけ? でも仕方ないじゃん。金が欲しかったし、ギルドが契約してくれるんだから!


「まぁ、ついですかね.....どれも私の生活には無くてはならないものだったんですよ。それに、お互い合意ですよ?」

「生活に必要ねぇ.....確かに、美味しいものはあって困らないわ。街の活気にもなるし、ギルドでレシピを手に入れられた事はかなりの利益になるわ。エールサーバーの魔導具もね。暑い火水季に冷たい飲み物が飲めるだけで十分な宣伝効果はあったみたいだし」


 でしょ! やっぱり暑い時期は冷たい飲み物が必要なんだよ! どうせ、サーシャさんだって俺がいない時は冷たい果実水とか果実酒とか飲んでるんでしょ?


「そうですか、それは良かったですよ。ちなみに、天ぷらには冷たい蒸留酒が会いますよ」

「あら、そうなの? 普段は果実酒かエールを飲んでいたのよ。では、今度は冷たい蒸留酒を試してみるわ。他にはどんなのが合うのかしら?」


「他には、ワインも合いますし緑茶酒とか、少し苦味があるお茶でも合いますよ。まぁ、私はエールが一番好きですけどね。自前のエールサーバーを持ってるぐらいですから。サーシャさんも持ってますよね?」


「もちろん、あるわよ。あっちの棚の下に隠し.....持ってるわけじゃない! まだまだ量産が整って無いんだから! それなのにあなたは持ってるの!? いったい何処から手に入れたのよ!」


 いや、誤魔化せてませんよ。すでに、隠してある棚に視線が行ってましたし、会話の最中に不自然な間がありましたよね? しかも、無駄に大きな声で早口になったし.....誤魔化し方が子供レベルっすよ。


「へぇ、棚にねぇ....まぁ、ギルドマスターなんだから別に良いんじゃないですか? 持っていても不思議じゃないですよ。ちなみに、私のはアンリエッタさんにお願いして作ってもらいました。エール樽とラームエール樽、果実酒の樽にワイン樽と各種揃えてありますよ。何時でも冷たいまま飲めるように」


「たっ、棚には何も無いわよ....へっ、へぇわたしより早くにエールサーバーを持つなんてやるじゃない。まぁ、開発に関わってるなら、まぁ許してあげるわ。じゃあ、話を戻すわよ。まだ、話は続くんだからしっかりと聞きなさいよ!」


 はいはい。分かりましたよ、内緒にしておけば良いんでしょ? だから、そんなに睨まないで下さいよ。シンディさん以外には内緒にしときますから........ククッ


「では続きをお願います、サーシャさん」

「まったく.....本題はこっからよ! 以前、三ギルド合同で鉄板焼き店をルインマスの街に開く話はしたわよね? それがかなりの規模になりそうなのよ。近隣のハルジオンの街はすでに鉄板焼き店の出店に着手してるわ。さらに、アーガニウム国王都グランセムでも鉄板焼き店の出店計画が上がってるわ」


「そんなにですか? まだ、ギルドの食事処では形になってるだけでまだ開店はしてないですよね?」

「そうね。でも、あと数日もすれば開く予定よ。アンリエッタの方も近日中に開くし、商業ギルドも色々と動いてるわ。どこも数日もしくは十日以内にはすべての鉄板焼き店が開店するわよ。仕入れもすでに商業ギルドと漁業場でのルートは確率してし」


 ついに本格的にルインマスの街で鉄板焼き店が開店するのか。


「鉄板焼き店が順調に開店するのは喜ばしい事ですけど、それが私に関係あるんですか? 前回の契約では特に問題なかったはずですけど....」


「まぁ、特に問題はないのだけど強いて言えば、セイジロウの報酬額が少なすぎるという問題があるのよ。あなたからは調味料レシピや甘味レシピを受け取って契約したけど、鉄板焼きの調理法そのもののアイデアに対する報酬が無かったのよ」


 別にそれはいいんじゃない? 露店売りだって鉄板を使って焼いたりしてるし....


「アイデアとかはいづれ誰かしらが思いついたはずですよ? 鉄板焼きは露店でも使用してますし、揚げ物や天ぷらだって俺じゃない誰かか考えついたでしょうし」


「でも、先に着手したのはセイジロウなのよ? しかも、わたしの目の前でその調理法を見せてくれたわ。セイジロウに限って無いとは思うけど、あとで下手に問題が起きるのは困るのよ。正直なとこで、セイジロウが公に騒いだり自己主張的な行動を起こすとわたしたちがあなたを罰する事になるかもしれないわけ。さらに、他国とかで騒ぎを起こしたりすれば指名手配もしなきゃならなくなる.....かも」


 イヤイヤ、そんな事しないから。つーか、指名手配とか勘弁だから!


「その為の契約と口止め料ですか?」

「ざっくり言うとそうね。今回の計画に関して一切の問題行動を起こさない代わりに、相応の金額で縛りつける為ね」


「そうですか......」

 なるほどね。実際に話を聞くと鉄板焼き店の規模は大きく感じる。が、それは国内の話だけで、グルガニウム国もあれば、ローレンス帝国もある。将来的にはこの大陸中に幅広く拡がるはずだ。そうなってからの金銭の要求より今のうちに適当な金を掴ませておけば、契約書片手に抑え込めるわけね。


「分かりました。問題行動を起こさないと契約書には明記します。ですが、報酬は各ギルドに貸し付けでいいですか? 今は特に金銭にはあまり困ってません。なので、もし私が不利益や有事の際には力になってもらいたいです。もちろん、可能な範囲で構いませんから。どうですか?」


「.......貸しね。あなたの貸しは正直イヤなのよね.....他に何かないの? 今なら、ルインマスの一等地に屋敷でも用意出来るわよ?」

 おぃ、さらに定住を進めるのかよ....目の届くとこで監視する気か?


「いえ、屋敷をもらっても今は困りますね。氷雪季にはハルジオンに一度戻りますし、その後はどう動くか分かりませんから。それに、冒険者は自由に冒険してこそでしょ?」


「はぁ.....そうね。冒険者は冒険するべきだわ。わかったわよ、貸しで良いわ。ただし、セイジロウにだけよ? あなたが結婚したり、子供が出来たり親類が言ってきてもダメだからね!」


「それで、良いですよ。では、サインしましょう」

 俺はサーシャさんがテーブルに置いた契約書にサインした。


「これで、良いわ。あとは、わたしが手続きしとくから。.....やっと肩の荷がおりたわ。これで、ルインマスの宣伝が一つ増えたわ。ありがとう、セイジロウ」


 へっ? 今、サーシャさんからありがとうって言われた? しかも、笑顔だし! なんだよ、デレたりするのかよ! くっ、ちょっと可愛いとか思っちゃったじゃないか!


「いっ、いえ。役に立てて良かったですよ。大変だとは思いますけど、ルインマスの発展を陰ながら願ってますよ、サーシャさん」

「えぇ、ありがとう。セイジロウには色々と余計な仕事を増やされたけど、遣り甲斐は合ったわ。これからも、よろしくね」


 と、話も一段落して少しだけ世間話をしてから執務室を退室した。


 その後は、メイン通りをマダラと一緒に歩きつつ露店を見てまわる。


△▽△△△▽△


 メイン通りをマダラと一緒に歩いてると、いつかの服飾店に着いた。この服飾店は、冒険者のサリナさんの知り合いの店だ。火水祭でチャイナドレス姿を見てから会っていないから、その後どうなったのか気になったので寄ってみる事にした。


 店の扉を開くと備え付けの鈴の音が来店を店内に報せた。

「いらっしゃいませ!」

 と、女性店員が挨拶をしてきた。


「こんにちは、セイジロウと言いますがシャリーナさんはいますか?」

「セイジロウさんですね。ご用件を伺ってもよろしいですか?」


 用件か......特に無いんですけど、アハハ...ちょっとした寄り道って言うか、世間話をしに来たんだけどな。


「えっと....暑中見舞い?」

「ショチュウミマイ? ですか?」

「えぇ、シャリーナさんにはお世話になったので挨拶をしに来たんですよ! わたしの名前を言えば分かりますと思います」


 こっちの世界に暑中見舞いなんてないからワケわかんない顔をされるのは当たり前だよな。でも、来店した人物が挨拶をしに来たと言えば無下にはしないはず。


「分かりました。すぐに知らせて参りますので、少々お待ち下さい」

 と、いって足早に奥の部屋へと入っていった。


 すると、すぐに奥の部屋から女性店員とチャイナドレスを着たシャリーナさんがやって来た。


「セイジロウさん。久しぶりね! 全然顔を出さないから寂しかったわよ!」

 と、いきなり抱きついて来た!!


 あぁ、ぷにゅんっと柔らかいものが.....ご馳走さまです!

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