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神隠しという名の異世界転移  作者: 紫煙の作家
142/226

ランクアップ試験・4

No142

ランクアップ試験・4



 俺とシンディさんと業者、マダラは盗賊一味の拠点がある場所から一キロ離れた場所で夜営をしていた。

 ランクアップ試験監査役の冒険者ギルドの受付嬢シンディさんを静かに起こす。


 俺は、馬車の荷台の中で寝ているシンディさんに静かに声をかけた。

「シンディさん、起きてますか?」

「.....はい、セイジロウさん。起きました。どうしました?」


「そろそろ良い時間ですから、盗賊一味の捕縛に行きます。シンディさんは、準備して下さい」

 と、前以って決めた時間になりシンディさんには準備をしてもらう。俺の方は、すでに天装具【透縛鎖靭】【黒衣透翼】を装備して、マダラの犬狼を数匹念のため影の中に忍ばせてある。


 それから、少しして準備したシンディさんが声をかけてきた。

「セイジロウさん、お待たせしました」

 シンディさんの装備は、緑と黄色を基調とした軽装備で弓と短剣、あと小さな魔法杖を装備していた。


 異世界ファンタジーだけあってやはり俺とは違って様になっていた。ついつい少しだけ見惚れてしまった。ここに来るまでにシンディさんの装備姿を見てるが、やっぱり美人の装備姿はなんかエロい!


「さて、お互いに準備できました。事前通りに、シンディさんは盗賊一味の拠点近くでマダラと万が一に備えて待機してください。捕縛が完了したら空に向かって火球を打ち上げます」


「分かりました。セイジロウさんが盗賊一味の拠点に入ってから陽の出までに、連絡がなかった場合はすぐ突入します。今からですと一時間弱ですね。その場合は試験は中止です」


「分かりました。じゃ、マダラ行くか」


 俺とシンディさんはマダラの背に股がり、盗賊一味の拠点近くまで移動した。


▽△△▽▽▽▽▽



 俺は盗賊一味が拠点にしてる洞穴近くで息を潜めてタイミングを計ってる。


 よし、落ち着け俺。やれば出来る、やれば出来る、やれば出来る。この世界ではすべてが自己責任だ。判断を間違えたら死ぬのは俺だ。俺は、死にたくない。だが、人も殺したくない。

 俺が判断して選択したんだ。自分を信じるんだ。


 ............いぐぞっ!


 俺は覚悟を決めて、黒衣透翼で自分の気配を消して洞穴へと向かった。


 洞穴の外には見張りが二人いるがどちらも眠気に負けて警戒が疎かになっていた。俺は、その横をすり抜けて内部へと入っていった。


 洞穴内部は人がすれ違う程度の幅しかなく、この中でもし戦闘になるようならすぐに洞穴からの脱出を頭の片隅に記憶しとく。

 少しずつ内部にいくと明かりが奥から漏れてきていて視界は確保出来ている。明かりの方に続く通路ともう一つの通路があり、俺は明かが漏れてきている通路に静かに歩いていった。


 すると、開けた空間に雑魚寝をしてる盗賊一味を発見した。人数的には十人程で見張りを合わしても事前情報より少なかった。

 まだ、数人はいるはずだと思い通路を引き返してもう一つの通路へと進んでいった。


 もう一つの通路は明かりがなく視界が悪い為、しょうがなく小さな光球を生み出して最低限の明かりを確保した。いつ盗賊に見つかってもいいように、腰に差した短剣の柄を片手で握りながら奥へと進んでいった。

 そこには、裸で抱き合って寝ている男女が三人いた。



 見た限りでは盗賊一味に間違いない.....のか? まぁ、こんな洞穴で抱き合って寝てるんだ盗賊だよな。間違ったあと謝るか。



 俺はすべての盗賊を確認すると洞穴の外へと出ていく。これで、捕縛の準備は完了した。時間も残り少なくなってきたので手早く進める事にする。


 さて、盗賊の一味さん。申し訳ありませんが本日で活動を停止してもらいます。


 俺は黒衣透翼の能力を解除して見張りの二人の目の前に姿を現す。

 すると寝ぼけて見張りをしていた盗賊の二人は、突然に姿を現した俺に驚き呆然とするがすぐに我にかえって問いかけてきた。


「!?.....だっ、誰だてめぇ! 何もんだ!」

「!?......敵だ! みんな起きろっ! 敵が来たぞっ!」

 と、マイナー映画のチンピラ台詞を聞いてから問いに答えた。


「私は、冒険者です。冒険者ギルドからあなた達の討伐依頼を受けてきました。ちなみに、すでに体の自由は効きませんので」


 すでに、盗賊一味全員の体には【透縛鎖靭】 が透明の状態で絡み付いている。ただ、姿を見えなくして洞穴内部を歩いていたわけじゃない。

 盗賊を確認すると同時に、透縛鎖靭を細く透明にして足や体、手首や腕に違和感なく巻きつけたわけだ。


「んだとぉ!....なっ、体が....」

「おっ、おい! 体が....」


「では、収縮しろ透縛鎖靭っ!」

 と、洞穴内から悲鳴めいた声が聞こえてくると同時に衣服を乱した盗賊達が鎖に引き摺られて引っ張り出されてきた。


 俺はそれを確認すると火魔法を空に打ち上げてシンディさん達に合図をした。




 するとすぐに森の中からシンディさんとマダラが現れた。

「....セイジロウさん、これは.....」

『ほぅ、上手くやったようじゃな』


「シンディさん、まずは盗賊達を縛り上げましょう。あと、犬狼を内部に放って残党がいないか確認します」

 俺は、影から犬狼を呼び出して洞穴内部の探索を指示した。最初に確認はしたけど隠し通路や隠し穴とかにいるかも知れないから。


「マダラ、影から縄を出してくれるか? そしたら俺達が盗賊を縛り上げてる間は周辺の警戒をしてくれ。魔物が襲ってくるかもしれないから。シンディさん、この縄を使って縛って下さい」


 俺とシンディさんは喚き叫ぶ盗賊達を全員縛り上げ、自殺されないように口にも縄を縛っていった。


 洞穴内部を調査した犬狼達も特に問題なく帰ってきた。


「........ふぅ、これで完了ですかね、シンディさん」

「はい、お見事でした。まさか、こんなに簡単に盗賊一味を捕縛するとは思ってませんでしたよ。多少は戦闘になり数人の犠牲は出ると思っていたんですが」


「私も上手くいって良かったですよ。昨夜はマダラと少し話して急遽作戦を変えたんですよ。当初は、風魔法と水魔法を使って無力化する作戦だったんですけどね」


「確かにここに来るまでに聞いた話とは違っていましたね。それに、そのコートも着ていませんでしたよね?」


「えぇ、そうですね。新しい装備なのでマダラの影に入れてあったんですよ。それよりすでに、陽が昇り始めてます。洞穴内の残党はいないので中を確認しましょう」


 俺とシンディさんは洞穴内を確認して盗賊達の荷物をすべてマダラの中に保管した。

 盗賊の所有物はすべて盗賊を倒した者になる。あとで盗賊に奪われた物資を取り戻したい人が現れた場合には交渉することもあるが、基本は倒した者の判断に委ねられる。


 俺とシンディさんは捕縛した盗賊一味と共に俺達の馬車へと連れていき、数珠繋ぎにしてある盗賊の縄を馬車へと繋いでからルインマスの街へと向かった。


 道中は、盗賊一味の捕縛の経緯についてシンディさんに説明したり、自分たちの食事や盗賊達の最低限の食事を用意したり、魔物や盗賊の逃亡を警戒したりとやる事は以外と多かった。


 帰りは行きと同じように二日の道程でルインマスの街に着いた。その後は、冒険者ギルドに盗賊の処置を頼み、俺は精神的な疲れを理由に早々に"餌付け亭" へと戻り体を休めた。


 盗賊の捕縛は思った以上に疲れたな.....出来ればもうしたくないけどそうも行かないんだろう。とりあえず、人を殺さずに捕縛できて良かった。マダラから受け取った天装具【透縛鎖靭】【黒衣透翼】 はずいぶんと役に立ったから今後はその使い方も訓練していかなきゃだな。

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