新たな魔導具の発案
No115
新たな魔導具の発案
ようやく冒険者ギルドでの強制連行から解放された俺は足早にアンリエッタ邸を目指した。昼も過ぎあと数時間もすれば陽が暮れ始めてしまう。
そうなる前に、夜営に使いたい小型の鉄板焼き魔導具の作製依頼をアンリエッタさんに頼みたい。それと、海水浴の話がしたい。やっぱり夏、火水季と言えば水着だ! 出来るならばフローラさんの為にも水着作製をしなければ。
まぁ、今年は見れないかもしれないけど、来年にはフローラさんの水着姿がみたいからな。あの魅力的な裸体に水着が似合ないわけがないからな!
アンリエッタ邸に着くといつも通りに執事のシバスさんが裏庭のテーブル席へと案内してくれた。そのあとすぐに、メイドのメイリーンさんとアンリエッタさんが裏庭やってきてテーブル席についた。メイリーンさんが用意してくれた、紅茶と焼き菓子をいただきながら俺は話を始めた。
「アンリエッタさん、急な訪問にすいません」
「大丈夫ですよ、セイジロウさん。セイジロウさんとマダラちゃんならいつでも歓迎します。それで、本日の用件はなんですか?」
ちなみにマダラは俺の影の中から出て、アンリエッタさんが座る椅子の横で寝転がり愛でられてる。
「はい。実は夜営時の食事の時に、小型の鉄板焼き魔導具があればと思いまして。アンリエッタさんのところに小型の物はありますか?」
「いえ、小型はありませんね。セイジロウさんが見つけた鉄板焼き魔導具のサイズしかありません」
「では、小型の鉄板焼き魔導具は作製出来ますか?」
「えぇ、普通に小型に出来ますよ。作製しますか?」
「お願い出来ますか? それと、こういう物って作れますか?」
俺は、メイドのメイリーンさんにお願いして羊皮紙に似た紙を用意してもらい、そこに簡単な図案と用途を書き込み、付随する道具の形も書いた。
「--セイジロウさんは次から次に面白い物を考えつくんですね。これなら、小型の鉄板焼き魔導具と一緒に作製しますよ。三日ぐらいで出来るはずですから、出来たらお知らせしますね」
「わかりました。よろしくお願いします」
アンリエッタさんに新作の魔導具作製を頼み、アンリエッタには新作魔導具の作製から販売までの権利をすべて渡し、俺は発案者として販売額の一割をもらう契約を交わした。
「それと、アンリエッタさん。水着に関する情報はありますか?」
「いえ、思いつきませんね。やっぱり、セイジロウさんが言った用な生地はありませんでした。水を弾く装備とかならあるんですが...」
「それは水棲生物の革や鱗を使ったものですか?」
「はい、そうです。それに、加工したり魔力回路と魔石を組み合わせた半魔導服にしたりするんです」
ん~、それはそれで使い道はあるけど、装備じゃな....ビキニアーマー的なやつも魅力的っちゃ魅力的だけどね。
「教えてくださりありがとうございます。それも含めて私も探してみます」
「そうですか、わたしも情報は集めて.....そうです、セイジロウさん! 火水祭が来週にありますからもしかしたら良いアイデアや素材が集まるかもしれませんよ?」
はて?...始めて聞く祭りの名前だな。特別な祭りか?
「アンリエッタさん、火水祭とは何ですか?」
「【火水祭】とは、火水季の到来を街のみんなに知らせるお祭りですよ。本来は病厄払いと豊商を願う祭りですね」
ほぅ、前の世界の夏祭り的なものか。ルインマス特有なのか?
「それはどんな祭りなのですか? ルインマスの街だけの祭りなのですか?」
「いえ、ある程度の村や街なら行われてますね。規模はそれぞれの場所で変わります。ルインマスの街では、祭りの目玉として浜辺で【水祭り】が行われます。海上に船を出して魔法や魔導具を使った演舞を開きますよ。凄く盛り上がるんです!」
「へぇ、楽しそうですね。なら、人や物も集まりますね」
「はい、いつも以上に賑やかになります。近隣の街やグルガニウム国からの物資や珍しい物も入ってきますから、セイジロウさんが必要とされる物が見つかるかもしれませんよ?」
なるほど、今は見つからなくても、これから商人達が祭り目当ての観光客を相手にする為の商品の中にあるかもしれないわけだ。
「わかりました。その時にでも探してみます」
「はい。火水祭は三日間行われますから、お祭りも楽しんで下さいね!」
「はい、楽しみにしてます。では、陽が暮れ始めましたから今日はこれで帰ります」
「夕食は食べていかれないのですか?」
「お誘いは嬉しいのですが、今日は宿に帰ります」
すいません、アンリエッタさん。今日は色々と疲れたんで宿に帰ってダラっとたいんです。考える事もありますし.....
俺はアンリエッタさんの申し出を丁重に断り、マダラと一緒に"餌付け亭" へと帰った。
マダラの夕食を露店で買い、宿に着いてから夕食を食べてフローラさんへの手紙を書いて寝た。
ちなみに、アンリエッタ邸に行く前にギルドでフローラさんの手紙を受け取っていた。正直、フローラさんの手紙を早く読みたい事が夕食を断った理由じゃないよ?
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