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お披露目会

「この度は我が息子の為に御足労いただき感謝いたします。

つきましては我が息子よりご挨拶を。

ミロク」


「はい。皆さまこの度は私のためにお集まりいただきありがとうございます。

不肖の身ではありますが今後ともよろしくお願いします」


「3歳にしては硬い挨拶だったが気にしないでください。

では、今宵の宴をお楽しみください」



たしかに3歳であの挨拶はないか。

失敗したなー。

「いい挨拶だったぞミロク」

「ありがとうございますお父様」

「これはこれはアレックス殿お久しぶりです」

「ん? おぉ!エドじゃないか!

ミロクこの人は俺の領の東に領を構えている

エドワードだ」

「エドワードさんはじめまして」

「あぁ、ミロク君は覚えていないか。私は君に会ったことがあるんだよ」

「そうなんですか、すみません覚えていなくて」

「いやいやそんな一歳の頃の事を覚えていろなどそんな酷な事は言わないよ。おっと後ろがつかえているねではそろそろ失礼するよ」

そう言ってエドワードさんは僕たちから離れていった。


今度はふくよかな体型の男の人が歩いてきた。

「お久しぶりですアレックス様」

「久しぶりだなレイモンド

ミロクこちらはオーズ商会の会長のレイモンドさんだ」

「レイモンド様はじめまして。ミロクと申します」

「初めましてミロク殿これからうちの商会をご贔屓に」

「わかりました。これからよろしくお願いします」

「ではそろそろ失礼する」

そう言ってレイモンドさんはどこかに行ってしまった。



二時間後


「はぁ、疲れるなぁ」


そう、初めての貴族の集まりは予想以上に疲れるのだ。

みんなへの挨拶を終えると、一人一人への挨拶が始まり、俺の為の宴のはずがまだ料理の一つも食えていない。

父さんは父さんで友人同士で話しているし、俺のところには婚約の話も来ている。

一応運命糸のこともあるから婚約は断っているがそれを抜いてもまだ3歳だし性欲もないのに婚約とか…。



まぁ、俺の苦労話は置いておいて。

なんとこの場にまた運命糸の繋がった子がいたのだ。

青い髪に整った顔、将来美人になるだろう。

恐らく同い年、違うところは耳がうさ耳のところ。

そう、うさ耳だ!皆の憧れケモミミに尻尾!

触りたい!


まぁ、その辺の話はいいとして、問題は何故獣人がこの国の貴族と来ているかだ。

この国では純人間の貴族しかいない。

昔は武をあげたエルフや獣人の貴族もいたようだ。

他国は人間至上主義が多い中この国はその辺は緩い。

だからこの場に居るのが悪いとは言えない。

鑑定をするまでは。


彼女は奴隷なのだ。

それも性奴隷、鑑定で処女と出ているから流石にこの年齢でそう言う行為をされている訳ではないらしいがそれでもこの歳で奴隷というだけで日本人だった俺には胸にくるものがある。


それにこの国ではほとんど奴隷は禁止されている。

理由は昔勇者が奴隷を嫌い、王の前でどれほど非効率で意味のない制度かを説いたらしい。

だが今でも奴隷制はある、犯罪を犯したものがなる犯罪奴隷だ。

この国では死刑判決となった犯罪者のみを奴隷として認めている。

そして犯罪奴隷は購入出来ない。

奴隷となった時点で辺境の開拓に使われる、死のうがどうでもいい自由にしていい労働者ということだ。

奴隷になれるのは死刑判決となったものだけ、それはつまり、どんな事をしても3歳児がなれるものではない。


それはどう言うことかというと、彼女が違法奴隷ということだ。


違法奴隷

法を無視し、誘拐、洗脳、拉致、などの方法を用いて、人の人権を無視し、無理矢理、奴隷へとされた人々。


違法奴隷はこの国のみならず、世界で禁じられたものだが、それは未だに行われている。

そしてその違法奴隷の多くは貴族に買われ、玩具にされる。

これを買ったものは等しく処刑される。

それで多くの貴族が殺されたが、違法奴隷は正式な手順を踏まえいないので証拠が残っていない事が多くある。


そしてその違法奴隷こそが他種族との戦争の原因になっている。


奴隷の契約は第三者が破棄出来ないということになっている。

実際には出来るがそれをしてしまえば奴隷制の根幹が揺らいでしまう為無いということになっている。


ここまでが俺が全知で見た奴隷についての情報だ。



さて、話を戻すが、彼女が奴隷という事をこの場で気づいているのは俺だけだろう。

もしかしたら気づいていても言えない可能性がある。

何故なら先ほど彼女の主が挨拶に来た時にサラーム伯爵と名乗っていたからだ。


伯爵、それは男爵、子爵が多いこの国の貴族社会では上位にあたる。


だが、我が家はこの伯爵家よりも上位だ。

まぁ、不敬になることはないだろうから直接聞きに行くか。

もしもいい人でやむを得ない事があったなら俺が彼女の運命糸を話せばいいしな。



という訳でやってきました、サラーム伯爵の前!

贅沢をしているであろう太った腹と、こちらを見下している視線でいい人という線は無いだろうなと思った。


「こんばんは、サラーム伯爵」


「これはこれは、ミロク様。挨拶は先ほど済ませましたが、何かお話が?」


「うん、そこにいる女の子が気になってね」


そう言うとサラームは目を細めた。


「ああ、この子ですか。コラッ!サラ、挨拶をしなさい」


「こ、こんばんは、サラ…です」


「すみません。この子は人見知りで」


「サラーム伯爵の家族なんですか?」


「いえいえ、この子は我が家の使用人ですよ」


このまま話してもまだ貴族経験がない俺にはうまく聞き出せそうもないし直球で聞いてみるか。


「そうですか、それでこの子は何をやったんですか?」


「何をやったとは?」


「一体何をやって死刑判決を受けたんですか?」


俺は俺とサラーム伯爵にしか聞こえない声で聞いた。

その瞬間にサラーム伯爵は目を見開き焦った表情をしていた。

当たり前だ、違法奴隷だと、獣国と友好関係にあるこの国にバレたら即刻処刑なのだから。


「何をおっしゃっているのですか?」


あくまで誤魔化す気か。


「おや?聞こえませんでしたか?では今度はこの会場中に聞こえるように言いましょうか?」


「っ!またまた、冗談を。私はこの辺で失礼させていただきますよ」


「それを僕が許すと?」


「ステータスも貰ってない3歳児が何を言ってるんですか?挑発ですか?」


「その子が欲しい。置いていってくれないか?そうすればこの事は他言しない」


「脅しですか」


「そんな、人聞きの悪い。これはお願いだよ」


「くっ!ですがこの子もタダではない。それにこの子の意思もありますから」


「意志を無視した側が何を綺麗事を」


「チッ、おいサラ、お前は私と来るだろう?」


「はい」


「ふふふ、そういう事だ」


「命令権に逆らえる訳ないじゃないですか、冗談がお好きですね。ねぇ、サラちゃん、僕が君をそこから助けてあげるからさ、今だけは頷いてね。僕と一緒に来て」


するとサラは涙目でコクコクと頷いた。

結構ひどい扱いを受けているのだろう。

必死で頷いている。


「貴様!主人の命令が聞けないのか!」


その言葉で周りの貴族もこちらに目を向けた。


「あんまり大きな声を出すと自分の首を締めますよ」


「クッ!だが、それでもこの子はやれないな。考えてもみればただの子供の言葉だ、誰も信じはせんか」


ニヤニヤしてこっちを見てきた。

イラつく


「じゃあこれで良いですか?」


そうして俺は運命糸の魔法は発動した。


「なっ!これは!」


「彼女は僕の運命の人なんですよ。という事で彼女を僕にください」


「クソっ!」


そうこの運命糸は王の言葉よりも重いのだ。

たとえ王侯貴族の婚約ですら破談にできるのだ。

そしてもしもそれが奴隷だった場合は解放しなくてはならない。

それがこの国、ひいては世界のルールなのだ。


「彼女を僕にください。なんか親への挨拶みたいだな。黙ってくれれば、僕も黙ってますから」


「本当か?」


「ええ、私はこの場で彼女の立場を明言していません」


「なるほどな知らなかったと言えるというわけか。分かった。「主人である、アイルサラームがこの者の所有権をミロク・ファン・カザドールへと渡す」これでこの娘の所有権はお前に移った。約束は守れよ」


「分かっています。ですが僕はこの身分、存在が好きではないんですよ。だから他にも持っているのならば早く解放してあげてくださいね。でないとうっかり口が滑ってしまうかもしれません」


「分かった」


「では僕はこれで、ついておいでサラ」


「はい」


「それじゃあ君を今解放するけどそれからどうしたい?獣国に帰してというなら一旦は帰すけど」


「このまま、ここにいさせてください」


「親はいいの?」


「私を捨てた人なんてどうでもいいです」


「そっか、じゃあ解放した後は僕の専属メイドね」


「分かりました」


そして俺は彼女の奴隷契約を破棄し彼女は奴隷ではなくなった。

それから彼女は声を上げて泣いていた。

周りに聞こえないように防音の結界をはったから周りには気付かれていないだろう。


「落ち着いた?」


「はい。申し訳ありませんでして」


「別にいいよ。それと敬語じゃなくてもいいよ」


「分かりました。ですが慣れるまでは許してください」


「別にもう奴隷じゃないんだから自由にしていいよ。でもその前に父さん達に話を通さないとな。僕についてきてね」


「はい」


その時の顔は悲しみや辛さのない綺麗な顔だった。

その顔には僕への信頼もあった。

ウサギが感情に、敏感なのは本当なのかもな。

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