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お披露目会の前

目が覚めてから2日が経った。


この2日は部屋で療養とミーファ先生の授業を受けて過ごしていた。


明日はついにお披露目会だ。


今日は服の採寸や料理、飾り付け、挨拶を考えるなどやることがとても多かった。


特に挨拶はこれでいいか聞こうと思ったら、「3歳の子どもは、どんな挨拶でも大丈夫だろう」と言われた。

いや、アドバイスとか欲しかったんだけど忙しそうで言えなかった。


そんなこんなでお披露目会の日になった。


午前中はいつも通りミーファ先生に魔法を教えてもらい、午後5時から多くの貴族が来てお披露目会が始まる。

何故、午後からなのかはよく分からないがお披露目会の会場へは午後5時以降に入るというしきたりらしい。




「今日はいつもより教えられる時間が短いから難しい魔法は教えられないわね。何か知りたい魔法はあるかしら?」


「うーん、何か面白い魔法はありますか?」


「面白い魔法?」


「はい、今日のお披露目会には僕と同い年が年下の子が多いらしいのでその子たちを楽しませられたらなと」


「なるほどな。それにしても面白いか…。運命の赤い糸を出す魔法とかはどうだ?」


「なんですかそれ?」


「運命糸と呼ばれる魔法で昔からエルフはこの魔法で運命の人を探しているんだ。まぁ、運命の人が見つかった人は見たことがないがな。そのせいで最近は見なくなったものだ。私も絵本で運命の人に憧れていた頃があったな。糸が出なくて部屋に1週間ほど引き籠ったものだ」


「確かに糸が出たら面白いですけど…」


「それもそうか。もしその場で誰かと運命糸で結ばれたら結婚しなくてはならないからな」


「そうなんですか?」


「ああ、この運命糸の魔法は個人の運命の人を見つけ出すと言うよりも世界の為に結ばれるべき運命の人を見つける魔法だからね。まぁほとんどが好きな人と結ばれるがな。この前、話を聞かせた勇者と聖女がいい例だ」


「え!?あの勇者と聖女が?」


「勇者は運命糸の魔法を使って聖女を見つけるのよ。まぁ、逆も然りね」


「へぇー、面白いな」


「でしょ。でもこの糸は本人にした見えないから詐欺も多いんだけどね。でも神の御前で詐欺を働こうとしたものは天罰が下るけどね」


「そんなことする人もいるんだ。でも自分にしか見えないなら相手は反応に困るんじゃ」


「確かにそうね。だけどその運命糸を出した状態で相手に触れるとその人にも見えるのよ」


「なのに詐欺を働こうとする人がいるのか」


「そうなのよ、馬鹿よねぇ」


「あのぉ、一応やり方を教えてもらえますか?」


「あら、覚えるの?」


「ちょっと面白そうだと思って、まだ時間もありますし他にも面白そうなの教えてください」


「分かったわ。やり方だけどねまずは小指に輪っか状に魔力を集めてそれを糸のようにして空中に浮かばせると勝手にその人の方向に飛んでいくわ。ただ魔力を使うからあまりできないんだけどあなたなら大丈夫そうね。これはやっても見えないから覚えるのが難しいのよねぇ」


「やってみます」


(魔力を小指に集めて、糸状に。

……出来た!後はこれを空中に…。難しいな、体から繋がった状態で魔力を放出するのは普通と違うからなぁ。っ!出来た!あれ?)


俺は疑問の声をあげてしまった。

理由?そんなの簡単だ。なんと俺の指からは十本以上の糸が伸びていたからだ、それも一本はすごく近くに。


{女たらし}


(おい!それだけ言って帰るな!)


「変な顔してどうしたんだ?」


「いえ、なんでもありません」


「なんだ?まさか、糸が出たのか?」


「いや、出たというか何というか」


「なに?そうか、私も久しぶりにやってみようかな」


「へ?いや、あの、やらなくてもいいんじゃ」


「いや、私もやったのは小さい頃で見ていたらやってみたくなった」


「いや、でも」


「さてとやるか。………へ?」


ミーファ先生が運命糸の魔法で糸を作るとその糸は俺の出していた糸と繋がった。

俺とミーファ先生の顔はとても赤くなっていた。


「………」


「………」


「えっと不束者ですが…」


「いやいやいや!待って!早い!恐ろしく早いから!まだ俺3歳だから!」


「で、でも運命の相手ってなってるし」


「まだ早いよ!せめて大きくなるまで待っててよ!」


「そ、そうね。じゃあ待ってるわね」


「じゃあ他の魔法も教えて」


「分かったわ」


(あれ?なんか軽く流れたけどすごく大変なことが起こった気がする)


{気がするでは無く起こっています。他にも10人以上の方が運命の方らしいので頑張って探してください}


(探さないとダメなの?)


{運命の相手と結ばれなければ世界には破滅が訪れます。だからこそこの世界では運命糸で結ばれたものは強制婚姻させられるのです}


(そうなのか)


{セレスティーナ様も今すぐ探しに行って欲しいそうですが厳しそうなのでマーキングだけはしておきました。もしも危険が迫った場合は助けに行ってあげてとの事です}


(分かったよ。て事は俺は10人以上の女性と結婚することになるのか)


{女たらし}


(おい!って、帰りやがった)


「ねぇ、聞いてる?」


「はい?」


「もう、聞いてなかったでしょ」


「すいません」


「ちゃんと聞いててよ。それと敬語じゃ無くてもいいわよ」


「え?」


「ほら、さっきは敬語じゃ無かったからそっちの方がいいかと思って」


「いやでも先生ですし」


「そうだけど、いつか、け、け、結婚するでしょ」


顔を真っ赤にしてそんな事を言ってきた。

すごく可愛い。


「っ!そ、そうです…ね」


「へぇ、2人ってそんな仲になってたんだ」


「「っ!」」


俺たちの隣にはとても深い笑みを浮かべた母さんが立っていた。


この時この体になって初めて恐怖を覚えた。









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