彼ら・彼女らは待っていた
そこにいた男2人と女3人は顔見知りの男が鍵を管理していたせいで別荘の中に入れず、この茹だるような中で苦悶の表情で男を待っていた。
「おい!いつまで待たせる気だ!」
玄関前の階段に座っていた若い男、見た目からして体育会の社会出身そうな男が怒り心頭といったように声を荒げる。階段から立ち上がった外見は背の高さにより一層そのガタイの良い体形を目立たせた。
顔見知りは、それでもいつものようなひょうひょうと私からしたら憎たらし気な態度でまあまあ落ち着きなさいとあやすような言い方をした。
「いや、すみませんねえ。皆さん、となりの、この男のせいで偉い時間がかかってしまいまして」
顔見知りの横目で見る方向に、つまり私のことだが、一斉に視線が移る。なんてとんでもない、ありもしないことを言うのか。
「文水、俺はお前にだな――――」
慌ててそう言いかけると、顔見知りの男、つまるところ、この文水という男は私の耳元でまあ少しのってくださいよと、まったくもって願い下げなことを言う。肩を組むようにしようとした腕を振り払ったところで、体育会男が再びそこいらに響くように誰だと声を荒げた。
男の敵意のような視線と、女たちの不審なものを視線が刺さる。すでに彼らの中ではこのフラストレーションがたまりにたまる原因を作り出した張本人という誤った認識がすでに定着してしまったのか。これは困ったとあわあわしていると、階段下の柵に寄り掛かっていたもう一人の男、体育会と背の高さは一緒だが、どちらかといえばひょろっとした体格、しかし、女の視線を集めと彼女らと胸のあたりドギマギさせるような外見の男が、聞こえるようなため息を吐く。
「まあ、いいじゃないか。とにかく早く別荘に入ろうよ。疲れちゃったよ。」
「だけどなあ、部外者だぜ。いいのかよ。」
「文水君の知り合いだろ。それじゃあ信用できるよ。」
文水の知り合いというなんとも説得力のないことを言ってはいたが、イケメンさんの力のおかげか、体育会は不満と妥協しきれないといった様子だったが、彼の言うことならばと、本心とは裏腹に私がここにいることを了承した。女3人組もイケメンさんが言うならばと受け入れてくれた。
ホット胸をなでおろすと、文水がいたずらっ気のある顔で、といえば軽々しいが、にやりと笑って励ますように背を強めたたく。
「ね、なんとかなったでしょ?」
「お前、いい加減に―――」
「とりあえず、早く別荘に入りましょう。茹蛸になっても知らんですよ。」
そういいながら軽いスキップ気味にさっさと先に行ってしまう。文水の勝手さに怒るのを通り越して、あきれ気味に肩を落とした。
彼らの後について別荘に入ろうとしたとき、ふと一台のワゴン車が見えた。
彼らが乗ってきた車だろうか。5人くらいなら余裕で乗れるだろう。
ああ、暑い。