恋味ソーダ
夏。
太陽の熱さ、アスファルトからこみ上げる熱気、青々と生い茂る森の木々。
その一つ一つが『熱い』という感情を大きな物にさせる。
「おばちゃん、コーラくれ、」
「ないよ。ソーダで良いかい?」
マジかよ。無いのかよ。駄菓子屋のくせに。
ここは駄菓子屋¨お菓子の森¨。昔なつかしの駄菓子から新商品のお菓子まで、色んなお菓子が置いてあり子供たちにはうってつけの駄菓子屋だ。
そして一番重要な事は、俺の片想い相手がここの孫と言うことだ。
「あれっ?まこちゃん来てたの?」
と、暖簾の奥から俺の好きな子、夏島 美加がひょこっと現れる。来た、そう心の中で言う。
唾を飲む。
「おう」
さりげなく、言えただろうか。そんな事を考えながら、俺間嶋 真琴 はおばちゃんから渡されたソーダを飲む。
「おっ、いいな~!!おばあちゃん私もソーダ飲みたい!」
「全く、代金は払って貰うからね」
はーい、と呑気な声を上げて美加は俺の隣に座る。
胸が高鳴る。君に伝えないといけない言葉がある。なのに。なのに。
「好きだなぁ、」
プハァ、とソーダを飲んで君は言う。
「俺もだよ。」
息が段々苦しくなる。
鼓動があまりにも速くて、呼吸が着いて行かない。
『好きだ』そう心の中で唱える。
君の声が、笑顔が、一つ一つの行動が。愛おしくて、堪らない。
「え?まこちゃん、ソーダ好きなの?」
降ってきた声は、余りにも唐突過ぎて、
「ありゃ?まこちゃんって、ソーダよりコーラ派だっけ??」「え?……あ、おう!そうだそうだ!」
慌てる俺を見て、美加は笑う。
「もしかして、まこちゃんソーダとそうだを掛けてるの?全く、どうしたの?今日なんか変だよ?……あ!もしかして、好きな子にフラれちゃった?」
図星だ。しかもフった本人が言うなんて。
まぁ、告白してないけれど。
その場に居られなくなった俺は、一目散に逃げ出した。
「まこちゃん!!」
二、三分走って後ろを向くと丘の上にある¨お菓子の森¨は、もう小さくなっていた。
息を吸っても吐いても生きた心地がしない。
「好きだーーーー!!!!!」
そう告白できたら、何て楽なんだろうか。
でもそうしたら、この関係が壊れてしまいそうで。
「情けねぇな」
握っているソーダは炭酸が抜けてぬるくなっていた。
初投稿です。
間違いを直しました。
2017/5/23