に
「よう、ガルド」
「ん?あぁ、アインか。
今日は薬草採取?」
おうよ、といって薬草を詰めた袋を掲げる。
「ちょうど手持ち分が切れてたんでついでに採取してきた。」
「そうか、あぁそういや。薬草採取してたんなら、若いヤツがこなかった?」
「若いヤツ?あぁきたぜ」
「ちゃんと採取出来てた?」
「んにゃ?根っこごと引っこ抜こうとしてたから蹴り飛ばしたった。そっからは知らん。」
「おいおい……
せめて取り方ぐらいは教えてやってよ」
「やぁだよめんどくさい。
つっても、すぐ俺は離れたから根っこごととってくっかもしれんよ」
けらけらと笑いながら伝える。
「そうか、まぁそんときは教えてやるよ」
そういってガルドのヤツは近くの椅子へ腰かける。
「まぁ日銭稼いだし一杯ひっかけてくわ」
楽しんでこい、そういって手を振ってくる。
こいつ、待つつもりなのか?お節介なヤツだ。
ドアを開けるときに若いヤツが入れ替わって入っていく。
「すみません、冒険者登録したいんですけど……」
なんだ、この町。こんなに冒険者になりたいやつがくるとか命知らず多すぎだろ。
「へえ、薬草の取り方ってあるんですね」
「そうなんだよ。この薬草はな、枝を切り落とす分にはすぐに生えるんだがな、根を抜くと枯れるのが早い。
更には、株が増えるのも凄い時間がかかるんだ。
だから、枝を切り落とすんだ」
「村の近くの森にあったヤツは根っこから取れっていわれてたからそういうものだと思ってました。」
「多分それは村だからだろうね。こいつの近くでは何故か野菜の類いが育たないんだよね」
そうなんですか、さすが冒険者の先輩だ。
昨日の夕方、冒険者組合に登録しにいったら断られた時にはどうしようと思ったけれど、たまたまいたガルド先輩が明日なら空いてるから薬草採取から教えてやるよ、といってくれて良かった。
「まぁ、だからといって取りすぎは注意な、二週間に一回ぐらいならなんとかなるぐらい育ってるから、他の仕事こなしつつって感じでやれよ。」
なるほど、そんなに成長が早いんだなぁと思う。
ふと、近くの繁みでガサガサと音が聞こえた。
「繁みからゆっくりと離れろよー」
と、急にさっきよりゆっくりとした言葉使いで言い始める。
「これがただの動物ならいいんだがなー。
動物ってこんな近くには寄ってこないんだー」
バックラーと片手剣を持ち出す。
僕はゆっくりと茂みから離れていく。
「んでなー、慌てて逃げると奴らも慌てて飛び出てくるんだ。
だから、ゆっくり下がる。んで、ある程度距離があいたら、平地なら走って逃げろ。森なら街道近くまで行って走って逃げろ。」
ガルドさんが、石を拾い、繁みに向かって投げつける。
ギャ!という声と共に錆びた槍が立ち上がる。
「ついでに、奴らは一体じゃ現れない。最低もう一匹、いや、二匹はいると思うこと。」
ギャアという声と共に違う繁みから槍が飛び出てくる。
「俺ら人は、戦えるのは二匹まで。」
ガルドさんが槍をバックラーで反らしながら、ゴブリンを剣できりつける。
赤い色の血が流れる。と、先程石を投げつけたところにいたゴブリンも槍を突きだしてくる。
「だから、決して一人で複数と戦おうなんてしないこと」
と言いながら、剣で槍を反らしながら返す剣で流れるように切りつける。
「んで、切っても油断しない」
バックラーを構えたまま切りつけて転がっているゴブリン達の近くの槍を蹴り飛ばす。
「ここは町の近くだからはぐれの連中かもしれないが、基本的にはゴブリンの相手をしないこと」
そういって、剣でゴブリンの心臓を突き刺す。
呻いていたゴブリンがグギャアと言って息絶える。
「そっち、止めさしといて」
といわれる。
剣を持ち、止めをさすために構える。
グギャアという声をあげながら傷を押さえながらこちらを睨み付けてくる。
ググウと言いながら這いずり出す。
とどめを、させない。
思わずガルドさんを見る。
柔和な表情でこちらを見ている、が何も言ってくれない。
ずるずるという音と時折聞こえるゴブリンの呻き声が響く。
幾度も、剣を振り上げるもとどめをさせない。
人型の生き物を殺せるのか、ということだ。
兎や鶏ならトドメをさしたことはある。躊躇はあったが、何度かはある。けれど
けれど
人型だ。
意味はわからないが言語を喋っているのだ。知性がある生き物なのだ。
ずるずると這いずる音が徐々に小さくなってくる。ゴブリンの呻き声も小さくなっている。
剣を振り上げるが、降ろせない。もう放っといても、勝手に死ぬんじゃないかと思う。
そのとき
「こんなに苦しませるなんて、鬼畜だな君は」
そういって振り上げた剣の指先に手を絡めてくる。
「早く楽にしてあげないと。」
そう言って、そのままゴブリンの背中に剣を降り下ろす。ぐじゅりと突き刺さる剣。グギャアと呻く声。
「あれ、ズレた?やっぱ人の手通してだと距離感ズレルね」
そう言って、刺さった剣を引き抜きもう一度、刺しなおす。
グギャアと再び呻く。
これでよし、とガルドさんが言ったかと思うと。
ゴブリンの右手を持ち、こいつの手首にね、魔石があるから抜くんだと言って、ナイフをゴブリンの腕に突き刺す。
ドロリと流れる血、ガルドさんがゴブリンの腕を抉る絵。
見ていると、込み上げてくるものがあり、思わず木の近くへ。
しばらく経って、落ち着いてきた頃に、これだよー、といって血まみれの魔石を見せてくる人がいる。
この人は悪魔か。
「どう、新人の子」
「いやー、ちょぉっと厳しいんじゃないかなー」
「そうなの?」
受付のシェリルが首を傾けて問うてくる。
「んー、今週中にまた来るようならなんとかなるんじゃない?
昨日の朝の子の方がよっぽど覚悟ありそうだったんだよなー」
「あー、昨日の子ね。結局薬草持ってこなかったわよ」
「多分、アインが蹴っ飛ばしたとか言ってたから森の奥にでも行ったんじゃない?
んで、ゴブリンの餌に」
「あら、残念。」
「ゴブリン狩りの予定無かったら二人一緒に教えれたんだけどねぇ」
「それは、勿体なかったかしらねぇ。
でも、ガルドってたまに鬼畜な時があるから心配」
「いやいや、優しいでしょ。
鬼畜なとこなんてないよ!」
自覚ないもんなのねぇ、そう受付嬢は溜め息をつく。
「婚期逃すよ?」
「うるさい」