虫の初戦 2
サラリマンめいた我々の悲しい現実をゴトウは丁寧に教えてくれた。
「まず、最初にハイニンジャのアホが振ったサイコロは3だったよな?あれは俺たちが今回は地下3階で冒険者を待ち受ける役割になったってことを表すんだ」
なるほど、地下3階か。
それにしてもあの紅ニンジャ、ハイニンジャとか言われて調子に乗ってやっがったのか。
あー、なんか色々腹が立ってきた。
「ちなみにこのダンジョンは地下100階まであるから、俺たちの地下3階はかなり浅い所を受け持っている、ということになるな」
初戦はかなり運が良いようだ。ヨカッタ!
「しかし、今回注意するべきは2回めのサイコロ、11という数字だが、これは戦闘回数のノルマを表している。俺たちの場合は11回の戦闘をこなさないと帰還する事は許されない」
「11回というのは危険な数字なのですか?」
「‥‥正直、死者が出る事を覚悟しなくてはいけない回数だ」
え?シシャ?
「我々は帰還をしないと補給を受けられない。そのため、戦闘回数が5回を超えると、だんだん苦しくなってくる。怪我もするし、食料などの問題も出てくる。
今回はかなり浅い階層なので、敵を選べば弱い敵と戦えるのだが…。
…俺が……以前9回のノルマを達成した時は、生き残ったのは俺だけだった」
うわぁ。そりゃため息も出るわ。
‥どう考えても俺が一番最初に死ぬよなぁ。
クッソ。家族を残したまま死ぬのか。そもそも帰れないかもしれないが。
「まあ、俺しか生き残らなかったのは他にも色々と理由があるがな。
その時は5階を担当して、比較的に楽な戦いをしていたんだが…たまたま最後の相手が
深い階層を目指しいた移動中のパーティーだったんだ。普段は、50階とかで活動している様な奴らだった。
…出会い頭で二人殺られたよ。」
ヒィ!コワイ!
ゴトウは目をつむりながら、考え込む様にして話を続けた。
思い出したく無い話なのだろう。少し手が震えている。
「正直…浮かれていたんだろうな…。あまり消耗もせずに8連勝して、
相手から奪ったアイテムに凄い良い小刀があってなぁ。有頂天だったんだ…。
敵の装備も碌に確認せず襲いかかってしまった。
相手が毒を受けていた状況だったので、粘って何とか勝ったが、俺以外は皆んな死んじまったよ」
謙遜とかそういうレベルの話はじゃないことだと言うことは俺にも十分に分かった。
アベもカゴもうつむいてしまっている。
こんなお葬式みたいな雰囲気で戦場に行くのか…。
実際に葬式前提の戦場だし丁度良いのかも知れない。