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森の行進

ブリセイダは山歩きに慣れない者にも歩きやすい道を探してくれた。ザラのように木が避けてくれるということはなかったが、それでも普通に森の中を歩くより楽だった。

そのザラは元奴隷のエルフを引き連れて、どこかへ行ってしまった。そこら辺を歩いてくると言っていたが、森の中で暮らしていたエルフの感覚ではこの程度の森は街中と同じなのだろう。


休憩の時に地図を見るが、思ったよりも進んでいない。それというのも道が曲がりくねっているせいだ。

まっすぐ進みたいが、そうするとデコボコの道を進むことになる。安全と疲労度の関係から、歩きやすい道の方を選んできた。


「やっぱり森の中を進むのは大変だな。道が平らじゃないから余計に体力使うことになる。捕まってた人たちは体力落ちてるから、もっと大変だろうけど……」


周りを見ればほとんどの人がそれなりに疲れた表情をしている。

そんな人たちにミミルが率先して気を配り、声をかけて回っている。話しかけられた人たちはみんな笑顔になって彼女に感謝している。

あのエルフたちでさえ、ミミルを一目おいているようだった。


「グレイさ、塩はどのくらい残ってるだか?みな疲れてっし、少し多めに配りたいんだけんど」


「市場で大量にまとめ買いしてあるから大丈夫だ。もっていってくれ」


大きな塊で渡せば、満面の笑顔でお礼を言ってくる。

それをハンマーとノミできれいにカットして、それぞれに手渡していく。あの気遣いと手際はマネできない。


彼らの世話はミミルに任せて、先頭でヒマそうにしているフィーに声をかけた。


「ねえグレイ、ちっともモンスターが来ないのはなんでですか?ただ歩いてるだけで、(わたくし)退屈です」


「そりゃあ、ブリセイダたちが近くのモンスターを追い払ってるからだろ。戦闘になったらのんきに歩いてるわけにはいかないし、怪我人が出るからな」


「ええー、それなら私もそっちの方がよかったです。今から行ってもいいですか?」


「ダメだよフィー。キミはブリセイダたちと連携できないだろ?それにキミとパドマがいるから、ブリセイダたちは周囲の警戒に集中できるんだ。みんなを近くで見守るのも立派な仕事だぞ」


「むー、せっかくパドマさんとの訓練の成果を披露できると思ったのに。分かりました」


納得していなさそうだが、我慢してくれるようだ。


「オレだって戦えるぜ。捕まってからもずっとトレーニングを続けていたからな。この筋肉がその証拠だ!」


元奴隷の青年ドラゴニュート、イシャンがポージングをしながら言った。筋肉質ではあるが若くてたくましい、海の男という感じだ。

最初にエルフたちに助けられた後、商人の護衛から奪った武器で奴隷解放に協力していたらしい。

護衛係としてついてきてもらっているが、先頭を歩いて道を広げてくれたりもする頼りになるやつだ。

ただ、声が大きく話が止まらないのが難点だ。今も自分のトレーニングの方法を聞いていもいないのに話し続けている。


フィーがそれを興味深そうに聞いているのも問題だ。こんなのに感化されて欲しくない。

思っていたら、イシャンの声を聞きつけたパドマがやってくるのが見えた。


「イシャン、周囲の警戒はどうしました?あなたが自分からやると言ったのですから、すぐに持ち場につきなさい」


「はいっ、すいませんパドマさん。すぐに向かいます!」


イシャンはパドマに会ってすぐに勝負を挑んで負け、いつの間にか舎弟になっていた。俺は見てなかったが、手も足も出なかったらしい。


「力はありますが、使い方がなってないですね。仕込めばすぐに強くなれるでしょう」


フィーの件もあり、最近のパドマはお姉さん風な雰囲気を出している。


「グレイ殿、どうしました?何か気になることでもありましたか」


「パドマも変わってきたなと思ってな。もちろんいい変化だ。これからもよろしく頼むぞ」


「もちろんです。ですが、そんなにワタシ、変わりましたか?」


パドマの隣で、フィーも首をかしげている。その姿がとても微笑ましかった。





「グレイ殿、貴殿のパーティーは、なかなかバランスがとれているのだな」


ブリセイダが戻って来たので声をかけたら、感心したように言った。


「いきなり何を言うんだ」


「実は、少し前から近くで様子を見ていたのだ。監視していたわけではないぞ。ただ、少し気がかりがあったからなのだが」


「気がかり?」


「うむ、あの場所から移動して初めて気付いたのだが、あの場所には妙なニオイがついていたようなのだ。移動してからは薄れているので、どうやら助けた彼らの服についていたと推測される。彼らが再びそのニオイを発することもないようなので、こうして出てきた次第だ」


「服に付いていたニオイが何だって言うんだよ。俺のアイテムボックスにしまってあるけど、確認するか?」


「いいや、出さない方がよいだろう。普通ならそこまで警戒する必要はない。ただ少し気になっただけなのだ」


「警戒する必要ないけど、気になるってどういう……」


その時、急にブリセイダが森の奥をにらみつけた。

つられてそちらを見れば、数人のエルフがこっちへ向かってくるのが見える。その中にザラがいて、こちらを見つけて駆け寄ってきたた。


「グレイ、モンスターの群がここに近づいてきているわ!」

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