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風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


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第43話 せめてもの小さな世界では二人が結ばれますように

「みなみちゃん?」


『うん。そだよー』


「いきなり電話なんてびっくりしたよ」


『ごめんね。話した方が早いかと思って」


 しばらく沈黙が流れた。


『……あのさ。風見先輩が転校したのって、なんでか知ってる?』


「えっ……」


 とっさに反応ができなかった。私の返答を待たずに、みなみちゃんが続けた。


『あたし、風見先輩のこと親に話したの。ほら、アル中のお父さんがいるって話』


 私は、あの日の夜、ウチのリビングで4人で話をした時のことを思い出した。風見先輩はコーヒーを飲みながら、寂しそうな顔をしていた。


『中学の時、あたしのお母さん、教育委員会長だったじゃん? わおも知ってるでしょ? 正義感が強い親でさ。そういうのはすぐに行動に移した方がいいって。それでさ……』


 みなみちゃんの声は生き生きとしていた。


 私は彼女の話をじっと黙ったまま聞いていた。難しい言葉が含まれていて、すぐには理解できなかった。


 だけど、一つわかったことは、もう風見先輩と学校で会うことはできないことだった。鈍い耳鳴りがした。


 彼女の白い太ももにあった、茶色のアザが頭をかすめた。


『わお。聞いてる? あたし、勇気出して親に言って良かったよ』


 みなみちゃんの声は弾んでいた。私は愛想笑いを返す余裕すらなかった。


 それからの電話は上の空。ぼんやりとした頭に、一つ疑問に思ったことがあった。


「——ねぇ。みなみちゃん。それで今、風見先輩はどこにいるの?」


『あたしも、わからないんだ』


 淡々とした声で言っていたのが印象的だった。私は静かに目を閉じた。





「和央、顔色悪いわよ?」


「……」


 次の日。寝坊してしまった。というか一睡もしていない。

 体がだるくて、思うように動くことができなかった。


 お母さんが部屋まで起こしに来てくれて、おでこに手を当てた。

 熱を計ったら37.5度で、今日は学校を休むことにした。


「和央、だいじょぶ?」


「……」


 友央まで部屋にやってきた。

 いつもだったら、何か言い返すのに、今日はそんな気力がなかった。


 お母さんは仕事があった。微熱程度だったので、看病してもらうほどではない。だから今日は大人しく、私一人、家にいることにした。


「今、そこのコンビニで飲み物やゼリーとか買ってきたから、食べられるもの食べてね」


「うん。ありがとう」


 お母さんと友央は同じタイミングで家を出て行った。

 午前中はずっとベッドに横になっていた。風見先輩の夢を見た気がする。


 もしも、あの夜、この家の窓から彼女を見つけることがなければ——。


 風見先輩は今も青嵐高校に通い続けていたのだろうか。


 でも、そうしたらアル中のお父さんに悩まされる日々は続いていたということになる。それは嫌だった。


 風見先輩の幸せってなんだろう。答えなんて本人に聞かないとわからない。だけど、私はバカな頭でずっとずっと考えていた。


 お昼頃に起きて、スポーツ飲料を飲んだ。食欲も出てきて、ゼリーも食べた。


 少し回復したので、午後からは『ヒロインが5人もいる!?』の全話を見返すことにした。

 ベッドに寝転がりながら、スマホで見た。


「あっ。由夏先輩だ」


 早速、1話を見ていると、年上のヒロインの神宮寺由夏先輩が出てきた。ピンク色の髪がさらさらなびいている。


「……なんか風見先輩と被って見ちゃうんだよなぁ」


 年上だから無理もないのかな?


 でも、これって、風見先輩が私をサトシくんと重ねて見たのと同じことをしてる。……なんてことに気づいてしまった。私は少しだけ笑った。


 ストーリーは一度見たから頭に入っている。


 私は気がつけば、由夏先輩ばかりを目で追っていた。座る仕草も、サトシくんに笑顔を向けるところもかわいい。


「……先輩萌えな体質になっちゃったのかな」


 なんて、一人ごちた。


 結局、そのまま最後までアニメを見た。


 最終話は、サトシくんが幼なじみヒロインの足利寧々ちゃんと、やっぱりくっついたことで物語は終わった。


「由夏先輩と結ばれてほしかったなぁ……」


 そんなことを一人ぼっちの部屋でぽつりと呟いた。


 そしたら私と風見先輩も上手くいっていた気がする。今も二人隣で笑っていられた気がする。


 なんて都合がいい話かな。


 心残りがあるとすれば、風見先輩のおにぎりを食べなかったことだ。


 あの時は口にできずに、結局、友央にあげてしまった。


 だけど、もう食べられないとわかると、この世で一番美味しそうなものに感じてくるから不思議だ。


「自分勝手だよね」


 それから私は、『ヒロインが5人もいる!?』の掲示板に飛んだ。ブックマークには登録済みだ。

 早速、【大風サトシくんが一番かわいい!】のトピックを覗いてみた。


 『気を引き締めて頑張ろう』と"ユキ"が新しいコメントをしていた。


「……」


 私は少し迷ってから、コメント欄を開き、『ファイトです!』と打って返信をした。


 風見先輩のチャットアプリは、いまだに既読がつかない。もしかしたらブロックされているのかもしれない。調べる方法があるとはわかっているけど、実際に調べる勇気はなかった。

 その代わり、私は風見先輩を信じることにした。


「掲示板にコメントを書くくらいは許されるよね」


 私はその後、『ヒロインが5人もいる!?』の公式アニメサイトに飛んだ。メニューの欄から「グッズ」の項目をタップする。そしたら豊富な種類のアニメグッズが表示された。


 缶バッジやクリアファイル、トートバッグもあった。

 私の目を一番に引いたのは、アクリルスタンドだった。

 ヒロイン5人のキャラクターごとのアイテムはもちろん、主人公のサトシくんのアクリルスタンドもあった。


 私は迷わず、サトシくんと由夏先輩のアクリルスタンドを購入した。

 数日後には品物が家に届く。自室の机の上に飾っておこう。


 せめてもの小さな世界では二人が結ばれますように。私の祈りからの行動だった。

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