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風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


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42/50

第42話 掲示板





 今日はあちこち回って疲れた一日だった。とうとう風見先輩の行方を知る手掛かりは何も掴めなかった。


 自室で一人、ごろっとベッドに横になる。


 私はスマホを触って、トークアプリを開いた。風見先輩はまだ既読をつけていなかった。


「はぁ」


 思わず、ため息をついた。


 その後、検索アプリを開く。なんとなく『大風サトシ』というワードを打ってみる。ヒットしたページの目立つ場所に、ヒロイン5人に囲まれた、彼の画像が表示されていた。頬を赤くして、照れているようだった。


「ねぇ。サトシくん。風見先輩がどこに行ったか知らない?」


 私は二次元の彼にまで助けを求めていた。目の前のサトシくんは軽く微笑んだまま何も喋らない。


 ……。


 私は、そのままネットサーフィンをすることにした。たまに寝返りを打ちながら、煌々と光る小さな画面を見つめていた。


「……へぇ。ヒロ5のファンコミュニティなんてものもあるんだ」


 ページを飛びまくっていたら、私は、『ヒロインが5人もいる!?』の魅力を語る掲示板サイトを見つけてしまった。迷わずタップする。


【みんな誰推し?】


【ヒロ5の好きな場面教えて〜】


【鹿島じゅかちゃん好き来て!】


 いろんなタイトルのトピックが目に入った。アクティブユーザーが結構いる。


 ふーん。やっぱり人気アニメなんだなぁ。


 私はゆっくりとページをスクロールした。


 そしたら、【大風サトシくんが一番かわいい!】というタイトルのトピックが目に入った。


 ……。


 世界は広い。風見先輩みたいな主人公ラブな人っているんだなぁ。


 好奇心が湧き、思いがけずトピックを開いてみた。


 すると、


『サトシくん今日も好き!』


『サトシくんおはよう〜』


『サトシくん学校行ってくるね〜』


 など、ざっと100を超えるコメントがトピック内に書いてあった。


 順を追って見る限り、サトシくんを好きな人はたくさんいると思った。


「……ん? IDが同じだ」


 しかし、私は気付いてしまった。


 そのトピックで投稿しているのは、IDを見る限り、一人だった。


 ハンドルネームは、"ユキ"。


 …………。


 えっ。


「……まさか、風見先輩じゃないよね」


 彼女の下の名前は、葉っぱに雪と書いて、葉雪だ。

 カタカナにしたらハユキ。ハを取ったら"ユキ"と呼ぶこともできる。


 …………。


 コメントを遡って見てみると、今年の6月あたりから、ヒロ5のサトシくんにハマり出したのがわかった。


 一つずつ丁寧にコメントを読んでいく。


【サトシくん似の女の子に頑張って声かけちゃった! ネットカフェに一緒に行ってくれて嬉しい〜】


 それは9月5日にコメントされたものだった。


 その日、私は風見先輩に初めて声をかけられた。


 1-Aの教室で、『——付き合ってくれない?』と言われたことが、昨日のことのように思い出された。私は変な声を出して、動揺丸出しだったっけ。恥ずかしいなぁ。


 続きのコメントを読んでいく。


【同級生に絡まれたら、サトシくん似の女の子に助けられちゃった……。キュンとしちゃったなぁ】


 そうだ。風見先輩に絡む男子生徒の前に出たこともあったんだった。懐かしい。


 私はドキドキしながら次のコメントを読んだ。


【好きって言ってくれた。真似してるだけってわかってるけど……どうしよう。すごく嬉しい。何これ。ハマっちゃいそう!】


 風見先輩とネットカフェに2回目行った時に、私はヒロインの足利寧々ちゃんを真似して、彼女に囁いたのを覚えている。

 あの後、同じように風見先輩からも、耳を攻められたっけ……。


 コメントを見れば見るほど風見先輩にしか思えなくなった。


 ごくり。


「もしかして、全部読んだら、転校した理由がわかるかも……」


 私は一つ残らず、コメントを読むことを誓った。


【Wちゃんのこと好きかも。ヤバい】


 そのコメントを見た途端、胸を掴まれた。ぎゅう。


 風見先輩。これって……。

 Wって私のことだったりする?


 Wから始まる名前なんて、他に渡辺くらいしかないよ……。


 スマホを持つ手が震えそうになる。


 あっという間に、最終コメントまで辿り着いてしまった。


【Wちゃん。ごめんね。ありがとう】


 そんな内容で、トピックは終了していた。


「風見先輩……」


 私は宙を見た。いつも通りの自分の部屋。

机の上には、使いっぱなしの付箋が置いてあった。

 床にはボールペンが転がっている。あっ。お気に入りのやつだ。あんなところにあったんだ。後で拾って筆箱の中に入れておこう。


 なんて、どうでもいいことばかりが頭の中に浮かんでは消えた。こんなの現実逃避だ。


 風見先輩のコメントを見て気づいたことがあった。

 彼女は完全に私とお別れすることを視野に入れていた。


 そんなのってないよ。私はベッドに突っ伏した。だけど涙は出てこない。まだ現実感がないからだろうか。胸は張り裂けるように、苦しかった。


 ピコン。


 その時、スマホの通知が鳴った。


 もしかして、風見先輩!?


 すかさず通知を見たら——みなみちゃんからだった。


【ばんわー】


 なんて、気ままなメッセージが送られてきた。肩の力が抜けた。


【わおー】


 連投された。


【どうしたの?】


 今、メッセージのやり取りをする元気がなかった。

 だけど、悲しい気持ちも紛れるかもしれないと思い、みなみちゃんに返事をした。


【今日も早く帰ったねー。一緒に帰りたかったのに!】


 絵文字なしだった。


【ごめんね。ちょっと用事があってさー】


 嘘は言っていない。


【用事って何? もう、風見先輩はいないから、会ってることはないんだよね?】


 みなみちゃんからすぐに返事が来た。


 背中に冷たいものが走る。何で知ってるの?

 嫌な予感がした。


【みなみちゃん。風見先輩が転校したの、もしかして知ってたの?】


 彼女から返事が来る時間が長く感じられた。


 プルルルルルルル。


 ビクッと体が跳ねる。みなみちゃんが電話をかけてきたのがわかった。

 今までずっとメッセージのやり取りをしていたのに……。


 不思議に思ったけど、取らない理由はない。私はすぐに電話に出た。

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