表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/4

第4話 キスしたり

「——やっぱり似ている! 大風(おおかぜ)サトシくんに!」


「えっ!?」


 風見先輩がはしゃいだ。私は反射的にバチっと目を開けた。


「うんうん。ずーっと顔と雰囲気が似ていると思ってたんだぁ。和央ちゃんは、『ヒロインが5人もいる!?』の主人公の大風サトシくんにそっくり!」


「な、なんですかそれは!?」


 腰を抜かしそうだった。


「びっくりしたよね。一から教えるね」


 風見先輩は私から離れると、黒い椅子に座り直した。

 ならって私も背筋を伸ばした。ふと下を見るとスカートがはだけていたので、サッと直す。


 風見先輩の話を聞くとこうだった。


 私はアニメ『ヒロインが5人もいる!?』の主人公の大風サトシくんにそっくりらしい。高校2年生の彼は、親の都合で転校したトゥインクル学院で、5人の女の子と知り合い、関係を築くんだとか。笑いあり、涙ありの青春ラブコメティ。そして最終的には、誰か一人のヒロインと結ばれるらしい。


 風見先輩は、そのアニメの大ファンだということだった。その中でも主人公の大風サトシくんに首ったけ。


 彼は勉強も普通、運動も普通、面白さも普通。正直、ファンからも、あまり人気はないということだった。


 だけど、アニメを見ていくうちに、努力家なところを知って、気付いたら好きになっていたということだった。


 その大風サトシくんは男性で、性別すら違う私。風見先輩いわく、それでも心底似ているらしい。本当か?


「うーん……」


 正直、複雑だった。


 風見先輩から好かれていることには変わりないけど、"最推し"がいてこその、好きだ。手放しでは喜べない。


「ほら。見てみて」


 彼女が目の前にあるパソコンを触った。程なくして、画面には男性のキャラクターが現れた。


「これがサトシくん!」


 どれどれと見てみると、紫色の髪の毛をした、真面目で優しそうな男子がそこにはいた。

 ……私に似ているかな?


「あはっ。和央ちゃん、自分の顔をペタペタ触って、どうしたの〜」


「そっくりですか?」


「うん。とっても♪」


 風見先輩は体育座りをして、うっとりするような表情で私を見ていた。まるで、恋する乙女だ。


 そんな熱っぽい目を向けられたら、きっと誰だって恋に落ちてしまうだろう。


 いけない、いけない。

 私はブンブンと首を振った。しっかりしないと!


「学校の廊下でね。和央ちゃんを初めて見た時、驚いちゃった。二次元のアニメの中から、ついに現実に現れてくれたと思ったんだから」


「……」


「和央ちゃんに会いたくてさ。何度も一年生の廊下の前を通っちゃったんだぁ」


 風見先輩はずるい。ずるすぎる。


「ねぇ。和央ちゃん。お願いがあるの」


「な、なんですか?」


 風見先輩は再び両手をギュッと握ってきた。二度目であるにもかかわらず、全然慣れない。


 どこにも行かせないように、私を封じ込める魔法だ。


 隣のブースからはカチカチっとマウスをクリックする音がした。私は唾をごくりと飲む。


「付き合ってほしいの」


「えっ。へっ。はぇ?」


 完全にデジャヴだ。私は風見先輩に告白を受けた。

 先ほどの教室での群青劇を丁寧になぞっているかのようだった。握られて手はじっとりと汗ばんでいた。


「和央ちゃんと、サトシくんとしたかったことをしてみたいの」


 えっ。


「どうか、わたしのわがままに付き合ってくれませんか」


 これは告白じゃ……ない!?


 風見先輩は私から手を離すと、深々とお辞儀をした。つむじがちょこんとしていて、かわいいななんて場にそぐわないことを思ってしまった。


「ええと」


 私はとてつもなく混乱していた。


 気持ちが全然追いつかない。みんなが憧れるような風見先輩に、今、全身全霊でお願いをされているなんて。


 彼女は涙目をして、私をじっと見つめていた。くぅ。顔がいいって罪なんだね。逆らえる気がしない。


「……風見先輩は、例えば私とどんなことがしたいんですか?」


「一緒に帰ったり、おしゃべりしたり」


 あぁ。そういうことでいいんだ! それなら別に断る道理はないかも。


「それと、キスしたり……」


「き、き、キスぅ!?」


 私は衝撃のあまり、目を見開いた。


「わ、和央ちゃん、声大きいって!」


 風見先輩の手で口を塞がれた。だって、キスなんて言うから!


 うーうーと、抗議の声を手の隙間から漏らしたら、そっと離してくれた。


「そ、それは冗談。冗談だよ! 後輩ちゃんに、そんなことさせられないよ」


 風見先輩の目は完全に泳いでいた。あやしい。


 後輩であることが理由だったら、私たちが同い年の場合、キスをお願いしていたのかな。なんて妄想が膨らんだ。


「——で、どうかな?」


 風見先輩は懲りていない。俄然、希望に満ちた目を向けてくる。


「か、考えさせてください」


 一緒に帰ったり、おしゃべりしたりくらいなら、別にいいかなとも思ったけど。


 急にキスなんてワードを出されたから、即答できなかった。念入りに考えたい。風見先輩は冗談だと言ったけど……。ドキドキしている私は、どうやら軽く受け流すことができないようだった。


「むぅ」


 彼女は唇を噛み締めた。下がり眉になって残念そうだ。


 そんなにがっかりされてしまうと、罪悪感が芽生えてしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ