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風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


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第34話 嘘





「和央ちゃん、起きて!」


「えっ……」


 目を開けると、部屋の中が薄暗かった。どうやら眠っていたようだった。

 添い寝をするはずが、結局"一人寝"になってしまった。


 時間も時間だったので、私たちは急いでホテルをチェックアウトした。


「今日は楽しかった。またね、和央ちゃん!」


「はい。風見先輩、ありがとうございました……」


 彼女とはホテルの前で別れた。風見先輩の後ろ姿が小さくなるまで私はずっと見守った。


 なんで、私寝ちゃったのーー!?


 昨日、なかなか眠れなかったフラグが、今ここで回収された気がした。


 風見先輩の家ってどの辺なんだろう。そういうところも、聞きそびれちゃったなぁ。


 だけど今日、彼女と進展できた良い日だと思った。

 サトシくんより、私自身を見てくれた気がした。……すごく嬉しかった。等身大で向き合ってもらえると安心する。


「私、風見先輩のこと、もっと知りたいかも」


 私たちの関係はまだ始まったばかりだ。


「まず、ヒロ5の続きを全部見ちゃおうかな」


 実は続きの展開が気になっていた。アニメは全12話ということだから、残りは7話。一気に結末まで見てしまおう。


 風見先輩と一緒に見ることも考えた。だけど今日彼女に、サトシくんと私を離して見てもらうことができた。嬉しかったけど、自信はまだない。

 サトシくんが出るヒロ5は、私自身で向き合いたかった。


「よしっ!」


 私は鼻歌なんかをうたいながら、帰りを急いだ。夕日がいつもよりもきれいに見えた。





「お兄ちゃん。お土産。風見先輩が握ったおにぎり。はいどうぞ」


「はっ? 何それ。俺が貰っていいの?」


「うん。私、食べられないから」


 家に帰ったら、リビングのソファに友央が寝そべっていた。風見先輩のおにぎりを渡したら、急いで飛び起きた。バッタみたいで面白かった。


「うわー。うめー! 女子が握ったおにぎり最高ー!」


 友央は勢いよく、ガブりついている。


「……」


 私は少しだけ引いた。


「ってか、和央にあんな美人の友達がいたなんて知らなかった。あの子、彼氏とかいるん?」


「いないって言ってたけど……」


「そっか。じゃあ、俺が立候補してもいい?」


 友央は口元にご飯粒をつけていた。瞳がキラキラと輝いている。


「駄目!!!!!! やめて!!!!!!!」


 思わず、大きな声を出していた。お兄ちゃんは口の中に残ったおにぎりを飲み込むように一瞬だけ黙った。


「ごめんて」


「……」


「兄が妹の友達狙うのって確かにキモいよな」


「キモくはないと思うけど……。風見先輩だけはやめてほしい」


「おう」


 友央は再び、おにぎりを食べ始めた。今度は何も喋らなかった。


 私はじっとお兄ちゃんの顔を見つめた。やっぱり似ている。双子でもないのに不思議。


 今日、風見先輩と友央はテレビ通話越しに顔を合わせた。彼女の方は何とも思っていないようでホッとしたけど。


 友央の方は、風見先輩のことを気に入ったみたいだ。あぁ。もう……。上手くいかない。


 私は深く息を吸った。


「あのさ、お兄ちゃん」


「何?」


「私、風見先輩のこと好きなの。だから、狙わないでほしい」


 ついに言ってしまった。

 友央に風見先輩を取られるくらいなら、先手を打ちたかった。


 ……そっか。私って風見先輩のことが好きだったんだ。

 初めて心から認められた気がした。


 頬が熱くなるのが自分でもわかった。


「和央……マジか」


「何その感想」


「いや。意外だなと思って」


 私が女の子を好きなことに対して言っているのだろう。


「わ、悪い?」


「別に」


 友央はラップを丸めてゴミ箱に捨てた。


「さっきも言ったけど、俺らの家系は同性のほうが合うかもって話したじゃん? 俺あれ、冗談じゃなくて、結構本気だと思うからさ」


「うん」


「だから、応援してる。和央が上手くいったら、俺も考えてみるよ」


「それって、お兄ちゃんが男の人と付き合うってこと!?」


「バカ。声でかいよ」


 私は自分の口を押さえた。


「そういうんじゃないけどさ。まぁ。俺はニューハーフ系の夜のお店から行ってみるかな」


「……」


「じゃ。風呂、入ってくる」


 友央はそんなことを言って、リビングから出ていった。


 ……。


 とりあえず、これでお兄ちゃんと風見先輩のフラグは断ち切った!


 あとは——。


 ふと、みなみちゃんの顔が頭に浮かんだ。なんでだろう?

 うーん……。まぁ。いっか。


 今日は徹夜でヒロ5を見ようかな。そうと決まれば、お菓子を持って、部屋に引きこもってパーティーだ!

 リビングの戸棚を開けると、チョコやポテチが入っていた。

 実はお昼、何も食べてなくてお腹ぺこぺこだったんだ。

 私はお菓子を持ち出すと、足取り軽く、自分の部屋に向かった。





 数時間後。私はついに、『ヒロインが5人もいる!?』を全話視聴した。一言でいうと面白かった。

 主人公のサトシくんを中心に、ドタバタラブコメ劇が繰り広げられていて、一秒たりとも目が離せなかった。


 途中で、ヒロインの門真はるかちゃんが、サトシくんに手作りのお弁当を作って、食べてもらうシーンがあった。あの場面は気まずいと思った。


 自動的に風見先輩のおにぎりが食べられなかったことを思い出した。

 やっぱり彼女と一緒にアニメを見なくて良かったな、なんてことを考えてしまった。


 いや、今はそんなことはいいの!


 一つだけ疑問に思ったことがあった。


 それは、サトシくんが最後に結ばれた相手は——足利寧々ちゃんだったからだ。

 同級生で、幼馴染という過去を持つ、王道のヒロイン。

 最終話で、二人は夕陽が見える丘の上で、想いを伝え合い、両思いになった。ハッピーエンドだった。


 ——神宮寺由夏先輩とは結ばれなかった。


「なんで風見先輩は嘘をついたんだろ……」


 前に彼女は言っていた。

 サトシくんは年上の神宮寺由夏先輩と最後に結ばれると——。

 

 いつかはバレちゃうのに。どうして、そんな嘘をついたんだろう。

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