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風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


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第27話 デートでしょ?





 待ちに待った土曜日。私は朝6時に目を覚ましてしまった。まるで遠足を待ち侘びている子どものようだった。実はというと、昨日もあまり眠れなかった。


 風見先輩と土管で別れたあの日から、今日まで一切会っていなかった。


 リビングに顔を出したら、お母さんがキッチンに立っていた。エプロンをつけて、漬物を作っていた。


「おはよう。和央。眠そうだね。まだベッドにいたら?」


「ううん。いい」


 冷蔵庫を開けて、牛乳を取ってコップに注ぐ。

 喉を鳴らすようにして、一気飲みをした。


「私、今日、出かけるから」


「あら。みなみちゃんと? あんた達本当に仲良いわね」


 お母さんは、私にみなみちゃんしか友達がいないように思っている。心外だ。事実だから何も言い返せないんだけど。


 私はあえて否定も肯定もしなかった。


 お母さんは鼻歌をうたいながら、きゅうりを揉む手に力が加わっていた。


「和央?」


「へっ?」


「ぼーっとしてるけど大丈夫?」


「うわぁ!」


 私の目の前に壁があった。風見先輩のことを考えていたら、現実が見えなくなっていた。お母さんに言われるまで、障害物があることに気づかなかった。


「気をつけなさいよ」


「う、うん」


「——っていうか、和央。みなみちゃんと遊ぶんじゃないでしょ?」


 思わずお母さんの顔を見た。口の端を上げて、したり顔をしている。


「なんでわかったのっていう顔してるわね。長年の勘よ! デートでしょ?」


「……」


 お母さんは両手を使って本腰できゅうりを揉んでいた。ぎゅっぎゅっという音が私たちの間に気まずそうに広がった。


「和央はわかりやすいからね」


「デートじゃないよ……」


 きっと、多分。

 自分でも自信なさげな声に聞こえた。


「はいはい」


 お母さんは揉み込んだ漬物の袋の空気を抜いていた。その後、冷蔵庫に入れてから、手を洗う。

 何か突っ込まれるかと思ったら、そのままリビングから出ていってしまった。……さすがバツ3の母だ。肝が据わっている。


「……和央、デートなん?」


「うわっ。びっくりしたー! お兄ちゃんいたの!?!?」


 声のした方を見ると、ソファーに寝そべっている友央の姿があった。寝癖がついていて、体には簡易的な毛布が被せられていた。

 きっと夜遅くに家に帰ってきて、自分の部屋に戻らず、ここで寝てしまったのだろう。毛布をかけたのはきっとお母さんだ。


「なぁ。彼氏できたん?」


「できてないよ! 盗み聞きしないでよ!」


「っていうか、二人が話す声で起きたんだけど……」


 友央がソファーから起き上がった。ボリボリと背中をかきながら、私の方をじっと見ている。


 あらためて友央を見ると、私と似ていると心から思った。さすが同じ遺伝子。目も鼻も口もそっくりだ。瓜二つというやつかもしれない。双子と言われてもおかしくない。


「変な男には引っかかるなよ」


「どっちが! お兄ちゃんだって、前つつもたせみたいな人と付き合ってたじゃん」


「おーい! 傷は癒えてないんだからさ。えぐるなよ」


 友央は大学に入ってすぐ、美人な彼女ができていた。写真を見せてもらって驚いた。本当に芸能人のようだったからだ。正直、お兄ちゃんなんかにもったいないと思ったものだ。


 しかし後に、お金目当てで付き合っていたことがわかった。案の定、お兄ちゃんは結構貢いでいたようだった。結局、別れて、今は男友達と騒いでいる方が楽しいと言っていた。


「彼氏の写真あるなら見せて」


「だからいないって!」


「嘘つくなよ。顔がニヤニヤしていて、どっからどう見ても、恋したての乙女って感じだけど」


「ええっ!?」


 自分の顔をペタペタと触ってみたけどわからなかった。スマホのカメラを起動させて自分を映してみるけど、特ににやけている様子はない。


 友央は吹き出した。


「わかりやすいなー。そんなんしたら、彼氏がいるって言っているようなもんじゃん」


「うるさい……」


 今の行動って、よくなかったんだ。反省。

 安易な行動は取らないように気をつけないと。


 っていうかお兄ちゃんの反応がウザい!

 私はため息をついた後、リビングから出ようとした。


「ちょ、待てよ」


「どこかの俳優みたいな返ししないでよ!」


「……。俺らの家系はさ、異性運が悪いって知ってる?」


 友央は唐突に言った。


「何それ」


 興味深そうな話題だったので、私は完全に足が止まってしまった。


「お母さんってさ、バツ3じゃん?」


「うん。この前、富永(とみなが)さんと別れたばかりだよね」


 お母さんは、ああ見えて3回の結婚経験があるからビビる。そして3回とも別れているのもビビる。


「この前の離婚の原因は、富永さんの浮気だったじゃん? その前の理由はモラハラ。1番初めの——俺らの本当のお父さんはギャンブル癖がヤバかったし」


「うん。そうだったね。あらためて言葉にすると悲しくなるものがあるね」


「だけどさ、お母さん自身が原因ってことはないじゃん? まぁ。二人にしかわからない何かがあったのかもしれないけど。今はそういうのは置いておくけど。お母さんはむしろダメ男を引き寄せているイメージがあると俺は言いたい」


「確かに」


 友央に言われてみると確かにそうだと思えた。

 お母さんのパートナーも第一印象が良くても、一緒に住むほど「ん?」と感じる違和感を覚えていったのも事実だ。


「俺も付き合った女の子とは、悲惨な別れ方をすることが多いしさー」


 私が知る限り、お兄ちゃんは浮気癖がある子と付き合うことが多かった。


「だからさ心配なんだよな。和央が変な男に騙されていないかとか。第一、わかりやすすぎるじゃん? つけ込まれて、良いようにされそう」


「……」


 私は俯いた。自分のつま先が目に入り、親指をウニョウニョと動かしてみた。なんだか変な生き物のように見えた。


 そういえば風見先輩との出会いも、サトシくんに似ているからという理由だったなぁ。これも隙につけ込まれたことになるのかな?

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