表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/50

第26話 ホテルに行く約束

「きゃあ!」


「わぁ!」


「か、風見先輩、濡れちゃう! 早く土管から出ましょう!」 


 私たちは、いそいそと左方向に進んで土管から出た。缶ジュースの中身は残り少なかったので、大きな被害はなかった。


 日が傾いてだいぶ暗くなりかけている。遠くの方ではカラスが呑気に鳴く声がした。


「……」


「……」


 髪は乱れていて、制服もシワが寄っていた。まるで事後のようだった。

 二人で空き地に取り残されたように、しばらく突っ立っていた。


「……風見先輩すいません。私がしっかりしていないだけに。土管の中も、めちゃくちゃにしちゃって。明日まで乾いているかどうか」


「いや、大丈夫だよ! 和央ちゃん。土管の中、狭かったでしょ。むしろ、一緒に入ってくれてありがとうね」


 風見先輩が優しく笑ってくれたからホッとした。

 先ほどまで深いキスをしていたとは思えないような雰囲気だった。


「あっ。そういえば」


 私は一つ思い至ったことがあった。


「どうしたの?」


「今まで風見先輩とは、ヒロ5であった展開をなぞってきたじゃないですか。ま、まぁ。今のキスは想定外とは言えますけど。ゴニョゴニョ」


「うん?」


「——風見先輩! サトシくんとじゅかちゃんがしたことは、さすがにしないですよね?」


 二人は体の関係を持っていた。私と風見先輩は付き合ってもいないのに、最後の一線を越えることは厳しいなと思った。


「……うん」


 ほら、やっぱり。心の中で私は安堵の声を漏らした。だけど、少し残念な自分もいた。……気がした。


「——だけど、和央ちゃんが良かったらさ、添い寝はしてみたいかも」


「ええっ!?」


「気持ち悪いかな? 駄目?」


 確かに、サトシくんとじゅかちゃんはベッドの上にいた。

 ある意味、添い寝はしていたとは言えるけど——。いや、言えるのか?


「お願い! お金はわたしが出すから!」


 風見先輩が突然、頭を下げた。


「ちょっ。や、やめてくださいよ!」


 お金というワードが出ると、一気に怪しい雰囲気が醸し出る。これって何の取引なの!?


「べ、別にいいですよ。添い寝くらい!」


 私はついそんなことを言っていた。勢いに押し切られてしまっていた。

 だって、ネットカフェで添い寝をするってことでしょ?


「本当!? やったー!!」


 風見先輩は踊り出しそうなくらいウキウキしていた。そ、そんなに嬉しいのかな……。


「じゃあさ、今度の土曜日はどう? 空いてる?」


「はい。大丈夫ですよ」


 平日じゃないのが意外だった。


「良かった。じゃあホテルに行こうよ!」


「えっ。ほ……!?」


「いけない。もうこんな時間だ。そろそろ帰らなくちゃ。和央ちゃん、ここから自分の家までの帰り方わかる?」


「あ……は、はい」


「良かった。今日はここで解散でいいかな? 気をつけて帰ってね!」


 風見先輩が私の返答を聞くや否や、かけ出していってしまった。彼女は薄暗い夜に溶けて消えていった。


 い、今、なんて言った!?

 風見先輩。ホテルって言わなかった!?


 ああいうところって大人のひとが行くんじゃないの!?

 高校生でも行けるのかな!?


 私の頭の中には、ピンクの映像が浮かんでいた。くらくらと、めまいがしそうになった。


 もしかして、私、すごい約束をしちゃったんじゃないかな……。


 足元がおぼつかない中、なんとか自宅に帰ることができた。頭の中は風見先輩でいっぱいだったのは言うまでもない。





 昨日は眠れなかった。遅刻寸前で学校についたら、下駄箱に手紙が入れられていることに気付いた。思わずキョロキョロと辺りを見回す。誰もいない。当然だ。


 深呼吸をしてから手紙を取った。


 それはルーズリーフを小さく切って四つ折りにしたものだった。なんで? 告白?


 もしかして私の魅力に気づいた人がいるってこと!?

 で、でも私には好きな人が……。


 はやる気持ちを抑えながら、手紙を開いた。


 1行目には『和央ちゃんへ』と書いてあった。


『土曜日の予定についてです。


T駅に11時30分まで来てください。


服装は、動きやすい格好がおすすめかも!


それじゃあ。楽しみに待ってるね。』


 差出人が書いていなかった。だけど、誰が手紙を出したか私は本能的にわかってしまった。……風見先輩だ。


 T駅は、学校から少し離れた場所にある駅だった。大きな駅であるのに、私はこれまで1回しか降りたことがない。


「直接言いに来ればいいのに、なんで手紙なの……」


 わざわざ文章に表して私に伝えてきたことで"ガチ感"が上がった。

 誰にも知られずに約束を実行しようとしているのかな。そんな秘めた空気感があった。


 私は手紙をスカートのポケットの中にしまった。

 きっと風見先輩は今日の放課後は1-Aの教室に来ない気がする。根拠はないけど、そんな予感がした。


「土曜日どうしよう。一応、なんらかの心構えはしていった方がいいよね……」


 一人考え込んでみたものの、遅刻寸前だったことを思い出す。


 いけない、いけない。


 急いで外靴から上履きに履き替えた。

 トントンとつま先をすのこに当てた時、私は少し大人びた気分になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ