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風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


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第24話 誰と結ばれる?

 世界に風見先輩と私。二人ぼっちになったみたいだった。

 地球から少し離れた場所で、揺蕩っている。

 そんな空想をしてしまうほど、私はリラックスしていた。ネットカフェと環境が似ているからかな? なんて。

 土管の中は、宇宙に放り出されたような自由さがあった。


「これ。あげる」


「ありがとうございます」


 風見先輩は缶に入ったリアルゴールドを渡してくれた。未開封だった。


「風見先輩って本当に、これが好きなんですね」


「バレた?」


 彼女は舌を出しておどけてみせた。


 早速飲んでみると、少しぬるかった。もしかして、土管の中にずっと置いていたものなのかもしれない。

 だけど、風見先輩が渡してくれたものだから、ばっちいという感覚はなかった。


「あと、これ。おせんべい」


「ありがとうございます」


 風見先輩は、小袋の海苔が巻いてあるせんべいを渡してきた。

 後で食べることにしよう。


「ねぇ。わたしのスマホでヒロ5の5話を観ようよ!」


「わかりました」


 風見先輩は、カバンから有線イヤホンを取り出した。

 紐で繋がれているタイプのもので、最近では使っている人をあまり見かけなかった。


 これは近くに寄らないと、一緒に使うことができないわけで……。


「和央ちゃん、おいで」


「し、失礼します」


 風見先輩から肩をギュッと抱き寄せられてしまった。ネットカフェにいるよりもぎゅうぎゅうで距離が近い。


 そういえば、今日風見先輩とキスしちゃったんだよなぁ。

 ふとお昼休みの記憶がよみがえる。無意識に先輩の唇を見たら、


「ん?」


 と、首を傾げられてしまった。


「な、なんでもありません!」


「そう? 早速観よっか♪」


 風見先輩が慣れた手つきでスマホを操作していく。私はイヤホンの片割れを耳に押し込んだ。


 ヒロ5の5話は、トゥインクル学院の隣に住む、サトシくんと同い年の女の子にスポットライトが当たる回だった。彼女の名前は鹿島(かしま)じゅか。茶髪で、前髪がぱっつんのヒロインだ。


 じゅかちゃんはトゥインクル学院に受験をしたけど落ちてしまい、別の学校に通っていた。最近は不登校気味だという。

 サトシくんとはひょんなことから知り合い、今では家に遊びに来るような仲になっていた。


『ねぇ。私もサトくんと一緒の学校だと良かったな。一緒に修学旅行の沖縄にも行けたりするんでしょ?』


『うん。でも、鹿島とは放課後こうして遊ぶことができているし。今でも十分楽しいけどな』


『……思わせぶりはやめてよ! サトくんが、いろんな女の子と仲良いこと私知ってるよっ』


 じゅかちゃんがそっぽを向く。サトシくんが頭をかいた。


『——ねぇ。今、二人きりだよ?』


 サトシくんは、じゅかちゃんの家にお呼ばれしていた。


『それがどうしたんだ?』


『ねぇ。えっちしようよ』


 卑猥な単語が耳に届き、背筋がピンとなる。思わず唾をごくりと飲む。

 風見先輩を横目で見るけど、微動だにしていない。こうしている間にも、アニメのストーリーは進んでいく。


『鹿島。おかしいぞ。一体どうしたんだ?』


『……ずっと前から興味あったんだもん。ねぇ。サトくんがしてくれたらさ、きっと前向きにもなれると思うから。学校にだって行けると思う! ねぇ。駄目?』


 じゅかちゃんは上目遣いでサトシくんを誘った。すぐ側にはベッドがあった。

 彼女にとって彼と過ごす時間が何よりの癒しになっていた。


 サービスシーンのようなものが画面に流れる。えっ。これって。

 本当にしてるってことは……ないよね?


 土管の中には、気まずい雰囲気が漂った。


「えっ……」


 重要な場面は見せなかったけど、描写的にじゅかちゃんとサトシくんが深い関係になったことがわかった。


 ヒロ5の5話は、二人が手を握り合うシーンで終わっていた。


「いやー、感動したねー」


「どこがですか!?」


 後半、えっちなシーンしかなかった気がするんだけど……。


「サトシくんの優しさに溢れていたよー」


 そうかな?

 情に流されて、しちゃっただけだと思うけど……。


 でも、続きが見たくなる終わり方ではあった!


 私たちは有線イヤホンを、そっと外した。


「——ヒロ5のヒロインって、これまで見た5人で合ってますよね?」


「うん。そうだよ」


 私は一つ気になったことがあった。


「この中の誰かが、サトシくんと結ばれるってことですよね?」


「ご明答! 和央ちゃんはさ、最後どのヒロインと結ばれると思う?」


 そう聞くということは、風見先輩はヒロ5のラストを知っているということだった。


 うーん。


 頭がごちゃついている。とりあえず一旦整理してみよう。


 1人目のヒロインは、サトシくんより年上の神宮寺由夏先輩だ。

 ヤンキーに絡まれているところを彼が勇敢に助けたのが印象的だった。


 2人目のヒロインは、サトシくんの幼馴染で同級生の足利寧々ちゃんだ。

 黒髪ロングのツンデレ。正統派ヒロインとも言える。


 3人目のヒロインは、後輩の門真はるかちゃんだ。頭がいいのに、天然な性格をしている。

 サトシくんとは、机の下に入って見つめ合うシーンが印象的だった。


 4人目のヒロインは、転校生でミステリアスな氷兎エレン。

 突然サトシくんの唇を奪った、圧倒的なヒロイン力がある女の子だ。


 5人目のヒロインは、今見た通りトゥインクル学院の隣に住む、鹿島じゅかちゃん。

 サトシくんに猛烈アタックをして、体の関係を持った。ある意味、一番サトシくんに近い存在とも言える。


 私はしばらく考え込んだ。


「えっと、最後に結ばれるのは足利寧々ちゃんですかね?」


「……どうしてそう思うの?」


「だって、黒髪ロングだから!」


「ええー!?」


 風見先輩は目を丸くした。


「なんかそれだけで勝ちそうなオーラがあるじゃないですか!」


「そうかなー? ……でも、残念! ハズレ!」


 なーんだ。がっかり。

 結構、本気だったんだけどな。


 私には目利きの才能がないのかもしれない。


 それならば——。

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