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風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


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第20話 屋上

 えっと。待って! こ、心の準備が。


「はーーっくしょーーーん」


 その時、隣のブースから、強烈なくしゃみの音が聞こえた。すぐに、壮大な鼻をかむ音も続いた。


 ……。


 聞き耳を立ててみると、結構いろいろ音がするのがわかる。

 ソフトクリームを機械から搾る音、ブースの扉の開閉音など。至る所から人の気配を感じた。


「……」


「……」


 ネットカフェはキスをする場所には向いていない。

 ふと我に返ることができた。


「騒がしいですね」


「うん」


「……」


「ねぇ。和央ちゃん、明日のお昼って空いてる? 一緒に屋上でご飯食べない?」


 風見先輩からの急なお誘いだった。


 屋上かぁ。高校に入学してから一度も行ったことがなかった。

 なんとなく上級生の溜まり場という感じがして、1年の自分は遠慮していたのだ。

 風見先輩が一緒なら、悪目立ちすることはないだろう。


「いいですよ」


 いつもはお昼はみなみちゃんと一緒に食べている。だけど、約束をしているわけではない。


 また、みなみちゃんも、たまに隣のクラスの友達と会って食べている時がある。なら風見先輩と約束してもいいのかな。


「わぁ。やった! 明日、晴れだからさ、ちょうど良かった! ピクニックみたいにしてお弁当食べられるかもね〜」


 風見先輩が屋上に誘ってくれた意図にはすぐに気づくことができた。

 きっと今見た、ヒロ5のエレンちゃんに影響を受けたのだろう……。


 まさかそこでキスされる?


「あの。風見先輩」


「んー?」


「もしかして、屋上でキ……」


「あー。ごめん! 今日、早く家に帰らないといけないんだった。新聞の集金の人が来るんだよねー。和央ちゃん、そろそろネカフェ出られる?」


「はい。すぐに片付けます!」


 テーブルに残ったソフトクリームを急いで食べた。

 風見先輩も、ゴミを捨てたり、コップをまとめたりして忙しない。

 肝心なことを聞きそびれてしまった。まぁ、いっか。


 次に、風見先輩に会えるのは、明日の放課後ではなくて、お昼だ。なんか新鮮かも。

 こっそり彼女を横目で見るけど、感情を読み取ることができなかった。


「んっ?」


 そしたらなんと目が合ってしまった。

 何度視線を交わしても慣れない。


「い、いえ! なんでもないです!」


 今聞かなくてもいいか。どうせ明日になればすべてわかる。


 私は気持ちを切り替えるように、咳払いをした。いつでも帰れるようにと荷物を自分の方に寄せた。


 そしたら隣のブースからまた、くしゃみの音が聞こえてきた。突然のことに肩が跳ねてしまう。

 私は風見先輩と目を合わせて少しだけ笑った。





「——というわけで、今日は風見先輩とお昼ご飯を食べてくるね」


「あたしも行っていい?」


 4時間目が終わった後のことだった。昨日、風見先輩とお昼の約束をしたことを、みなみちゃんに伝えた。


 てっきり「いいよ」「わかった」と言われると思った。だけど、みなみちゃんは予想に反して食い下がる。


「えっと」


「人数、多い方が楽しいよ。絶対!」


 確かに一理ある。一人より二人。二人より三人。

 大勢でご飯を食べるほうが、きっと味も美味しいに違いない。


「ねぇ。いいじゃん。この前、ワッフル屋さんに行った仲じゃん。わおが屋上に行っちゃったら、あたしお昼一人になっちゃうじゃん!」


「ピーちゃんは?」


 私は隣のクラスの女子の名前を挙げた。みなみちゃんの友達で、みなみちゃんは彼女とたまにお昼ご飯を一緒に食べている。


「……ピーちゃんは、多分、今日、お腹空いてないと思うからさー」


「絶対、腹ペコでしょ! この前なんて、カツカレーとサンドイッチとサラスパを、お昼に一緒に食べたって言っているほどの大食いじゃん」


「そ、そうだっけ」


 みなみちゃんらしくない。変な言い訳をしている。


 でも、一人でお昼ご飯を教室で食べるソワソワ感はわかる!

 風見先輩とは急な約束だったし……うん。みなみちゃんも一緒に屋上に来てもらおう。


「いいよ」


「本当!? やったー」


 むしろ、みなみちゃんに来てもらった方が、キスすることを回避できるかもしれない。

 安心したような、残念なような。ここはホッとするべきところなんだよね……。


 とりあえず、風見先輩とは屋上に続く階段の前で待ち合わせをしていた。


 お弁当を持って、みなみちゃんと一緒に急いで向かった。風見先輩は先に待っていた。


「風見先輩!」


「和央ちゃん! ……みなみちゃんもいるね」


「あたしもいいですか? ついてきてから言うのもなんですけど」


「うん。大丈夫だよ」


 風見先輩は人の良さそうな笑みを浮かべた。手には菓子パン2つと、パックジュースを持っていた。


「ありがとうございます!」


 みなみちゃんはお礼を言うと、ギュッと私の腕を掴んできた。えっ。何? 近いよ。それに力も強い。


 風見先輩は、そんな私たちの触れ合いを、じっと見つめていた。


「早速、屋上に行きましょうか」


「なんで、みなみちゃんが仕切っているのさ」


「えへへっ。つい」


 私たちは階段を登って、屋上へと続くドアを開けた。うわぁ。空が近い。開放感がある。


 普段、室内に詰め込まれている私たちにとって、吹き抜ける場所にいるだけで、すごく良いリフレッシュになった。


「まだまだ暑いね」


「でも、風が気持ちいいですね」


 屋上は私たちで貸切……というわけにはいかず、何人かのグループでまとまって座っていた。

 みんな2年生か3年生で、1年生はまったく見当たらなかった。やっぱり見えない縄張り争いとかあるのかな。


「あっちの日陰になっているところで食べようか」


 風見先輩は、一番奥の場所を指差した。


「いいですね」


 特に断る理由もなく、私とみなみちゃんは風見先輩に大人しくついていった。


 既にお弁当を食べているグループを横目にして進んでいく。男子の視線が風見先輩に集まっているのがわかった。脇腹を腕で押されて、顔を真っ赤にしている男子もいた。


 風見先輩って絶対モテるよなぁ。目を惹く華があるもん。

 友達いないって言ってたけど……彼氏はすぐにできそうだ。

 そういえば、私って風見先輩のパーソナルな情報って何も知らないや。


「——風見先輩って、付き合っている人とかいないんですか?」


 ちょうど心の中で考えていたことを、みなみちゃんが聞いた。

 風見先輩が先にコンクリートの上に座ると、私たちもならって腰を下ろした。

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