今まで娘がいたからこそ
ある有名なエロゲーで主人公とメインヒロインが結婚するルートがあるのだが、
主人公は私と同じ状況、つまり妻が出産してすぐに亡くなることになる。結局主
人公は鬱になり娘を実家に残して、自殺を図るのだが、失敗に終わり、周りに助
けられうつ病から脱出するが、それは私とよく重なるのだ。ここからは私の体験
記であることを了承していただきたい。
二十年前、娘が産まれた。妻は元から病弱であったが、出産した時は意外と健康
だった。もちろん幸せだった。しかし、世の中は残酷なのは事実のようで・・・
。妻はある進行性の病で余命1年と宣告された。娘が一歳の時だった。妻が亡くな
る前に三人で思い出作ろうとして、いろんな所へ旅をしたが、進行は思ったより
早く、姪が産まれた頃に倒れ、そのまま天国に行ってしまった。娘は20カ月だっ
た。
そのあとしばらくは地獄だった。現実逃避的に恋愛ゲームに浸かる日々を過ごし
た。もちろん、恋愛ゲームに浸かってるのだから、育児はしない。いわゆるネグ
レクトである。ここで中学までの暗い性格の娘を作ってしまっただろう。まだ恋
愛ゲームをしているうちは良かったのだが、ついにうつ病になってしまい、恋愛
ゲームもする気もなくなり、ついには自殺を図った。娘が二歳の誕生日の頃だっ
た。幸運にもその日は妹が来る日だったから発見が早く、死なずにすんだ。
その後、私は入院し、娘は妹のところへ預けられた。うつ病と診断され、自殺防
止で凶器になりうるものは全て排除された。
一年後、私は退院して娘と再び過ごすことになった。そして、娘は保育所へ通う
ことになった。娘は気づいてしまったのだろう、「お母さん」がいないことを。
迎えに来るのは周りは女性ばかりだから、娘は、私のママはどこなの、という感
じの質問を受けてしまった。私は、ありきたりのごまかし方で亡くなってること
を言わなかったが、いつまでごまかせるか心配であったのは事実だ。
さらに二年が経ち、私は娘に妻に対する真実を言うことにした。娘はショックで
あっただろうが、いつかは伝えなくてはならないこと。しかし、その頃から娘の
性格に変化が起こったことは否めない。
娘が小学生の時に、担任の先生に「娘さんは、環境に馴染めてないようです」の
主旨は何回聞いたことだろうか。確かに他の女の子と比べて引っ込み思案だった
。
そして高学年ぐらいから私の影響を受けてか、サブカルチャーの世界に入りはじ
めて、さらに学校では孤独になったようだ。
中学になってやっと、サブカルチャーを知る友人を作ったようだが、その友人以
外とは遊ばないらしく、まだ性格も暗い感じなのは変わらなかった。
高校に入学してやっと今の明るさがある性格になった気がする。
娘が高校1年のとき、その娘の性格を変えてくれた、双子とナイスバディに会った
が、みんないい子で・・・。とにかくあの三人と話してる時は今までの性格が嘘
のように明るかった。自重はしてなかったけれども。
でも本当に変えてくれたのは娘の彼氏だろう。悔しいが、彼はすごいやつだ、親
の私でさえ、直せなかったその性格を変えてくれたのだから。
彼は言っていた、娘さんは、暗いのではない、自分の世界から脱出出来なかった
のだ、と。
娘はそれから、明るくなりクラスに溶け込めるようになったようだ。
話が長くなってしまったが、私は娘なしでは生きてこれなかったのは確かだ。娘
を放置すれば、私がダメになる。
高校の時仲良くなった四方には真に感謝している。そして、二十年間ずっと一緒
にいた娘には感謝しきれない。本当にありがとう。