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けっしてえっちな妄想をしてはいけない部屋

作者: コロン

いつもありがとうございます


よろしくお願いします。


完全なおふざけ作品です。

★しいなここみ様の『この部屋で○○してはいけない企画』参加作品です。

「これは訓練です。これは訓練です。

 ♪ぽよぽよん…♪ぽよぽよん…地震です。地震です。速やかに外に出てください」


 訓練ですと前置きしてからあの不穏な音が流されて、工場横のグラウンドに集まる避難訓練が始まった。

 皆手を止め、ゾロゾロと出口に向かって歩きだす。



 ここはとあるメーカーの製造工場。社員やパートも含めて千人ほどの人々が働いている。

 昨今の事情から、避難訓練時はとにかく全員が外に出るように決められていた。



「何も真夏にやらなくてもねぇ…」

「ほんとよね、訓練中に倒れたりしそうよ」

「あたしが倒れたら吉田君に運んでもらいたいわぁ」

「やだ、吉田君の腕が折れちゃうわよ」


 ぺちゃくちゃと楽しそうなパートのおばちゃんの声に耳を傾けながら、私も外に出た。


「あら!美和ちゃんもこっちきなさいよ!ここ、木陰になってるから少しはマシよ!」

「ありがとうございます」


 気さくなおばちゃんたち。可愛がってもらっているとは思うけど「悪気はないのよ、許してあげて」というのが罷り通るのが玉に瑕。

「悪気あっていいから2度とやらないで」と言い返したい事が何度あった事か。



「暑い」「暑い」など皆ざわざわしならがも、部署ごとで決められた責任者たちが工場長に必要事項を伝えて避難訓練は終了。



 のはずだった。


 不意に足元が暗くなったと思って空を見上げると、グラウンドよりも大きな宇宙船が頭上に浮かんでいた。


 ダン!ダン!ダン!ダン!!

 悲鳴をあげるより早く、宇宙船から白い壁が落ちてきてグラウンドを丸く囲っていく。

 ダンッ!と、最後の壁が落ち、全員が一つの部屋に閉じ込められてしまった。


 パニックになって叫ぶ人や壁を叩く人もいる中、おばちゃんたちは動じていない。

「びっくりしたわ。一瞬で涼しくなったわね」「ほんとよね。あー涼しい」「あのままあそこにいたら吉田君のお世話になるところだったわ」「あはは!」なんて呑気な事を言って笑っていた。


 ざわつく室内。ポーンと音がしたかと思うと、スルスルと宇宙船から大きなスクリーンが出てきた。

 そこには[これからとある映像、言葉を映し出します。それらの言葉からけっしてえっちな事を連想してはいけません]と表示されていた。


 えっちな?エッチじゃねえか?エロのことか?

 謎の言葉に戸惑うが、どうなるかと心配したり慌てていた人々も「えっちな事を考えなければいいのか。楽勝」と、なんとなくホッとしていた。


 そして…


 ポーン[それでは始めます]


 その合図で、さっきまでのざわつきが嘘のように静まった。






 ポーン[おっぱいアイス]




 表示された瞬間、どっと笑い声が上がったのと同時にBOM!と音がして数人の男性が消えた。

 スクリーンには《−8人》と表示されている。

 主に50才以上のおじさんが消えたようだ。


 えっちな事を考えたら消される。


 システムが分かり「笑ってる場合ではない」と、皆が息を呑む。



「要するに、表示された言葉からエッチな事を想像してはいけないのね」

 おばちゃんが言う。

「難しいわね〜」「何かしら?」「もうそんなことで動じないわよねぇ」「あたしのヌード」「やだ!」あはは!

 なんて楽しそう。


 余裕のおばちゃんたちに対して、明らかに挙動不審な人たちがいる。


「やめろやめろ!こんなのセクハラだろう!」そう言いながら、ずんずんと偉そうな足取りで前に出た人影。

「セクハラだ!!コンプライアンス違反だぞ!!」

 そう大きな声で叫ぶ声の主は、普段からセクハラまがいの事を言っている原田だった。


「コンプライアンス違反なんて宇宙人に関係あるのかしら?」「相手は宇宙人よね」「エッチが平仮名で書かれてるくらいなのよ?コンプライアンスなんて横文字、宇宙人に関係ないんじゃないかしら?」

 おばちゃんたち。疑問はコソコソと小さい声で、しかし相手や周りに聞こえるように話していた。


「チッ!こんなのセクハラだろ!訴えてやる!」さらに大声で叫ぶ原田。


「訴えるってどこにかしら?」「地球防衛軍じゃないの?」「お台場のガンダムとか?」コソコソと話しが止まらないおばちゃん。


 そんな原田やおばちゃんたちにお構いなしに、2問目が表示された。


 ポーン[パンツ]

 BOM !BOM!


 あちこちから爆発音が聞こえた。

「いい加減にしろ!誰があれを止めろ!」

 原田の叫び虚しく次々と表示されるえっちな言葉。


 ポーン[トラック運転手]

 BOM!


 ポーン[あはん]

 BOM! BOM!…


 ポーン[〇山〇〇子]

 と、何故かお局の名前が出たが、誰も消えなかった。

 しかしこれはこれでお局が「なんでよ!あんた1人くらい消えなさいよ!」とか言って、周りにブチ切れてめんどくさかった。



 ポーン[リゲイ〇]

 BOM! BOM!

「スタミナドリンクよ」「24時間闘わせる気だわ」「過酷よねぇ」



 ポーン[○○○ 3文字で埋めよ]

  BOM!BOM!BOM!BOM!!!

 たかが3文字の穴埋めが最大の威力で人々を消していく。


「3文字って何かしら?」「みかんじゃないかしら?」そう言ったおばちゃんの手には、何処から出したのかみかんが握られていた。

 他のおばちゃんたちにみかんを配り「ほら、美和ちゃんもどうぞ」と、私にも一つみかんをくれた。


 次々と人が消えていく中、まだ残っていた原田が顔を真っ赤にして叫ぶ。

「やめろ!誰か止めろ!」


 ポーン[赤ちゃん]


 瞬間、原田が消えた。


 赤ちゃん??と驚く私の横で、ミカンの剥き方で盛り上がっていたおばちゃんたちも驚く。

「あら?今誰が原田君を消したのかしら?」「宇宙防衛軍に聞こえたんじゃないかしら?」「ガンダム?」などと話し、おばちゃんたちの頭から「えっちな事を考えてはいけない」というシステムはすっかり消えているようだった。


「やっぱりガンダム強いわね」「あんたガンダム知ってんの?」「知らない」「ロボットよ」「中に人が入って運転してんの」「やっぱりねー」


 そんな会話が続く。

 ガンダムの中に人が入ってるのがやっぱりとはどういう事だろうと思っていた時、おばちゃんが「ねぇ、宇宙人もえっちな事考えるのかしら?」と言った。

「ないでしょ?だって宇宙人よ?」「だって虫みたいなモノじゃないの?」「宇宙人だってエッチな事考えるでしょ?」「じゃあ当ててみたら?」「何を?」


「宇宙人がエッチだと思う言葉を」


 おばちゃんが言い終わる前にあちこちで声が上がりはじめた。

「可愛い宇宙人の女の子!」「可愛い宇宙人の男の子!」「リモコン!」「羊羹!」「お化け屋敷!」皆が一斉に思いつく限りの言葉を叫ぶ。

 その中には「給料上げろ」「休ませろ」などの日頃の愚痴が含まれていた。


 罵倒のような言葉が飛び交う中、一瞬画面が乱れた。

「今誰かが言った言葉の中に宇宙語でエッチな言葉があった!?」

「でもどれかわからない!」

「今言った言葉もう一度言ってみよう!」


 さっきと同じ言葉を皆が叫ぶ。するとまた画面が乱れた。

 しかし次の瞬間、画面にくるくると回るおなじみの更新中のマークが出た。

「くそっ!更新してるぞ!」「宇宙人の心も乱れなくなるぞ!」

 更新マークが消えた後、同じ言葉を叫んでも画面は乱れなくなってしまった。

「やられた!」「もうダメだ!」「諦めるな!」

 なんとか抵抗しようとする人々。

 しかし中には諦めてゲームを始める人や、YouTubeを観る人がではじめた。

「さすがゼット世代」なんて感心してしまった。


「ねぇ、美和ちゃん何かないかしら?」

 突然おばちゃんに振られる。

「え?何かって?」

「宇宙人がエッチと思う言葉よ」「若いんだから知ってるでしょ?」

「いやいや。いくら私が若くてぴちぴちでも、宇宙人のエッチ事情なんて知らないですよ」

「若いと言えば吉田君もそうよね?」「吉田君どこかしら?」キョロキョロと探すおばちゃんに、私は悲しいお知らせを伝える。

「あの…吉田さんはパンツの時点で消えました」

「まーっ!パンツごときにやられるなんて!今時の子は頼りにならないわね!」

「吉田君を消すなんて許せないわ!美和ちゃん!一言言ってやって!」

「私がですか!?」

「そうよ!吉田君の仇を取ってあげてちょうだい!!」

「えーー…」


 ポーン、ポーンと鳴り続ける音と、休む事なく表示される言葉。そしてその度にBOM! BOM!と消えて行く人を見ながら私は考える。


 こんな時、頭が真っ白になって何も浮かばない。

 焦る気持ちが洒落にならないエッチな言葉を妄想させる。ダメダメこんな言葉を発したら社会的に抹消される!!そう考えてさらに焦る。


「どうしよう!何も浮かばない!!」


 ふと、1人のおばちゃんの胸に輝くブローチが目に入った。

 それはケーキ屋のポイントを集めてもらえる女の子の顔のブローチ。

「ペコ…」そう言いかけた時、ネットで見かけたイラストを思い出した。


 


挿絵(By みてみん)



「…たい焼き君?」



  BOM!!!



 その瞬間、壁と宇宙船が消えた。

 わぁっ!と歓声が上がり、泣いて喜ぶ人々。



「たい焼き君が地球を救った…」



 あのたい焼き君はみんなを笑顔にしたかった。ただそれだけだった。



「願いが叶って良かったね…」



 ゾロゾロと工場内に戻る人混みの中、私はたい焼き君に思いを馳せた。





たい焼きくん追悼作品です。


お読みくださりありがとうございました。

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たい焼き君はこちらから。
ぼくはたい焼き
― 新着の感想 ―
たいやき君で爆発する宇宙人の性癖がヤバいwwwww
古人曰く、所変われば品変わる。 何が性的であるかも、人によって変わってくるのですね。 そうなりますと、たい焼きくんを「えっちだ」と思う宇宙人達がどんな人々だったのかも興味深くなりますね。 彼等の故郷で…
∀・)これはブッ飛んだ個性を持った作品(笑)(笑)(笑) ∀・)楽しませていただきました☆☆☆彡
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