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2話 エース

どうもです!キタキツネです!

こんなに投稿が遅くれた理由はですね、学校がいろいろ忙しかったからです()

2週間開かないこともあり、けっこうグダグダ続けてましたw

そんなわけで、始まります!

 しばらくそのまま寝ていた。気が付いたら日は落ちていて、藍色の空が、オレンジ色の雲を包み込んでいた。青葉は、まだ寝ている。気持ちよさそうに。一瞬に命を懸けているなんて、想像のつかない顔で

 夕食は、食堂で食べるのが決まり。まぁ、ここ以外で食べれるところなんて知らないから、俺からすれば唯一の食糧供給源だ。

 青葉を起こして、一緒に食堂で食べた。そこそこおいしかった。

 その後は、しばらく青葉とコーヒーを飲みながら話した。青葉や、ほかの同期たちと食後に話すのは、兵学校時代からの日課で、ほとんど欠かしたことがない

 俺の出撃初日は、そんな感じで、結構色濃く印象に残っている。

 次の日、俺は6時ごろに起きた。もうそろそろ夏だから、空は結構明るい。蒼燕を見に行くついでに、ランニングをしようと思い、着替える。運動用の、動きやすくて、軽くて、涼しいやつ。

 靴は軍隊用のブーツと、一足のスニーカーしか持ってない。基本、いつも過ごすときはスニーカー。飛行とか会議とかをするときは、ブーツ。と決めている。

 スニーカーを履いて、外に出る。

 その後は、ぼちぼちのペースで走り、俺の格納庫へ行く。

 格納庫についたころには、汗をかいていた。

 天井が高い。明るすぎるくらいの照明が、床と蒼燕を寂しく、冷たい色で照らしている。

 整備工って、みんなどこか寂しそう。でも、気さくで明るい。きっとメカニックで、本物の心を隠してるんだ。

 その本物の心は、機械にだけ見せる。整備工は、機械と話すための心を持っているだろう。じゃなければ、あんなに綺麗に、正確に機体を修理できない。

 目の前には蒼燕。昨日飛んだばかりなのに、もう恋しいと思う。仲間を失ったのに、また飛びたいと思ってる。死ぬ気があるわけじゃない。死なんてどうでもいいほどに、楽しいんだ。昨日、青葉がそんなことを言ってた。俺は昨日まで気付いてなかったけど、青葉にそう言われてから、ようやく気が付いた。

 蒼燕の翼に手を触れる。金属の優しい冷たさが、伝わってくる。

 「おい!お前、人の機体に勝手に触るな」

 男が大きい声でそう言ってきた。

 「よう、ザワ。機体見に来た」

 俺はかがんで、機体の下から言った。

 「おぉ刹那だったか。悪かった」

 「いいよ、全然。で、蒼燕の調子は?」

 「調子は、と言われてもな…」

 一瞬の沈黙。

 「あぁ、一つある」

 思い出したような口調で、男はそういった。

 「高速域であんまり動き回るなよ。コブラはいいが、インメルマンをしたら翼が飛ぶぞ」

 「こいつガル翼だぞ?その辺の耐久性はあるんじゃないか?」

 ガル翼は直線翼と違って、かなり丈夫だ。

 「いや、あの耐久性は、あくまで『通常機での高速域』の話だ。こいつは通常機じゃない。馬力も、積んでるエンジンも、武装も、プロペラも、すべてが特別だ。」

 こいつは、天沢大和。俺の機体の整備工だ。俺が兵学校にいた頃、俺の訓練用の若葉の整備をやってた。そこそこ付き合いは長い。多分、俺よりも10ほど上だ。

 「わかってるよ」

 天沢は、俺が当然分かっているようなことを、改めて言った。きっと、「注意しろよ」という、彼なりのお節介だ。

 「あぁ。お前が蒼燕のことを一番よく知ってるのは分かってるさ。でも、お前はきっと無茶をする。そういうのが必要な場面になったら、絶対だ」

 予想的中。彼が言っていることは、もっともだ。多分、俺の知ってるやつで、仲が良かったら、迷わず助けに行く。なんでかは分からないし、確証も、実際にあったわけでもないけれど、そんな感じがする。

 「で、隣の飛行機は?」

 前々から気になっていた。格納庫で、蒼燕の隣にあるエンテ翼機が。まだ、ここにきて二日三日しかたっていないが、こいつが動いているところは、少なくとも俺は見たことがない。

 それにしても、重そうなエンテ翼機だった。軽爆撃機と言われても、違和感はない。むしろ、戦闘機と言われる方が、違和感がある。

 「伊織さんのだ。専用機だよ。名前は遥光」

 「伊織?専用機パイロットが、俺の他にいたんだな」

 正直驚いた。この前墜ちた隊長と、俺だけだと思ってたから。

 「あぁ。この前墜ちた永人さんを入れると、この基地には三人の専用機パイロットがいたな」

 「ふ~ん。激戦区でもないのに多いね」

 しばし沈黙。

 蒼燕を見上げる。

 永人。隊長の名前だ。名が知れていて、専用機パイロットの中でも一味違う人だった。この前墜ちたけれど、あれはしょうがなかった。きっと、三機に囲まれたんだ。波雲に乗ってた人が最初に墜ちて、その人を墜とした奴が、永人さんのところに加わった。

 永人さんは、初めから三機を相手取っていたら勝てたと思う。でも、多分不意打ちだったろう。

 「卑怯者」なんて言わないさ、俺達だって乱戦になったら、きっとそうする。仲間の命が一番だから。

 後ろから足音が聞こえた。重い、ブーツの音。パイロットだ。

 「おぉ。これは、これは、あの雲居刹那じゃないか」

 少し低めの声で、俺と同じくらいの身長、銀髪の男が言う。年は20代後半くらい。誰だ。パイロットか?

 「伊織さん。機体の整備終わってますよ。午後のフライトいけます」

 「伊織?あんたが専用機パイロットか?」

 「そうだが、何か不満でもあるか?」

 「いや、別に何も。俺はお前に興味ない」

 「ちょっ。お前やめろって。すいません伊織さん」

 天沢が焦って伊織に謝罪した。俺が言ったのに、なんでこいつが謝るんだ?まぁこれも大人の世界ってやつなのか。

 「アッハッハッハ!そういう奴嫌いじゃないよ。むしろ好きな性格だ。パイロットに向いてる」

 伊織はひとしきり笑って、元の顔に戻った。

 「全く関係ないが、一つ質問がある。お前はなぜ飛んでいる?」

 少し驚いてしまった。なぜ今そんな質問をするのかというのが、一番の疑問。「軍のため」とか「人の役に立ちたい」と言うべきだろうか。お世辞にも、俺はいいやつとは言えない。むしろ、飛び続けたいがために、空で人を殺してる。

 悩む。

 でも、自分にうそをついてまで、他人から一方的に好かれたいとは思わない。好かれたところで、俺には何の利益もないわけだ。俺自身の性格が変わるわけでも、目標が生まれるわけでもない。

 「空が…好きだから」

 「ほう。では、なぜ空軍を選んだ?ほかにも、空を飛ぶ選択肢は、いろいろあったはずだ」

 伊織が腰に手を当て、近づく。多少怒っていたかもしれない。

 「自由に飛びたかった。ただそれだけだよ。『人の役に立ちたい』とか、そんな偽善者みたいなことは、俺の口からは出ないよ。」

 「いい回答だ。増々気に入った。今日の偵察任務、楽しみにしてるぞ」

 伊織はそういうと、後ろを向いて歩いていき、十メートルほど進んだところで、片手を挙げ、格納庫の外へ出て行った。

 あれがいい回答なのだろうか?

 まもなく、俺も外に出た。もう八時頃だろうか。朝食を食べに行こう。

 空には薄い雲がかかっていた。色がはっきりとしていない。どこかぼやけていて、本当の色を失っている。

 食堂は、いつもどおりだった。この基地に駐屯している兵士たちが、にぎやかに話している。「なにをそんなに話すことがあるのか」と思うけれど、彼らの身の上のことや、好きな物のこと、兵器のことなど、それぞれに何か言わないと気が済まないことがあるのだろう。

 皿をトレイに乗せ、カウンターの前に行く。カウンターには若い女の人が立っていた。整っているが、いたって普通の顔。特別な何かがあるわけではない。

 「なににします?」

 「なんでもいいよ。みんなが食べてるやつで」

 そう言うと、すぐに、目玉焼きとトースト、コーヒーが出てきた。まるで、俺が頼むのを分かっていたかのように。

 「ありがとう」

 作った笑みを見せ、机の方へ向かう。「我ながらいい笑みだった」と思い、顔がにやけた。

 作り笑顔なんていつぶりだろう。病院にいた頃は、よく看護師に向けてしたものだと思い出した。俺からすれば、思い出したくもない過去だけど、たまにそういうことを思い出すと、「俺は今自由なんだ」って再確認できる。過去の闇って、今を実感するためにあるのかもしれない。

 席に座って、黙々と食べる。うまくもなく、まずくもない。

 ところで、「非戦闘員」つまりは、一般人。そいつらは、俺たち戦闘要員を「特別」な目で見る。手の届かない人を見るような目。人殺しを生業としている人だと、忌み嫌う目。過去を思い出して、怯える目。確かに人を殺し、殺されている。しかし、それは「かわいそう」でも「哀れ」でもない。「尊い」ことだ。

 これまでの歴史で、人同士が争い、戦が起きた時には、必ず「正義」もぶつかっている。「正義の反対は、違う正義」というけど、まさしくその通りだ。命を削り、正義と名誉のために戦う。それが兵士だ。人だ。

 そんなことを考えていると、目の前にトレイが置かれた。

 「おはよう。悩み事?」

 高くて、澄み渡った青葉の声。

 「おはよう。いや別に。なんで?」

 落ち着いた声で答える。

 「眉間にしわ寄せてたから。ところで、今日の偵察任務の内容聞いた?」

 「いや、多分この後呼ばれる」

 しばしの沈黙。二人とも黙々と朝食を食べる。食堂で、他のパイロットたち談笑が響き、青葉との間の静寂を、より深く、短くする。

 再び話し始めたのは、朝食を食べ終わった時だった。

 「この基地の専用機パイロットって何人いると思う?」

 少々浮かれ、弾んでいる声。

 「なんで急にそんなこと?」

 「いや、ただ単に知ってるのかなって。気になったから」

 頬杖をついて、そう言う。少し口角が上がっているように見えた。

 「三人いた。でも今は、俺含め二人」

 「ふーん。」

 彼女は、鼻でそう言った。

 その後は、「親は元気かな」とか「病気はどう?」とか、どうでもいいような話ばかりをした。でも、これが楽しい。人って、どうでもいいことを楽しむために生まれてきたんだろう。どうでもいいことをいっぱいして、人生を、人間を深めていく。それが人なのだろう。

 朝食が終わり、トレイを持とうとしたとき、俺のところに指揮官が来た。「あとで部屋に来るように」それだけを言って去って行った。「ここで言えばいいのに」と、つい喉から言葉が漏れだしそうになるが、抑える。

 トレイと食器を片付け、食堂から延びる長い廊下を渡り、ロビーへ出る。そこで青葉とは別れた。

 外は眩しい。朝よりも高く上がった太陽が、痛いくらいの光を浴びせてくる。風は涼しかった。日の光は暑く、風は涼しい。それが、とても不思議に感じられた。

 事務棟につき、司令官の部屋を訪ねて、今日の任務について聞いた。前回失敗した偵察任務の続きらしい。目標は、軍港。俺たちの基地から、海を挟んで反対側にあり、約二百㎞離れている。

 最近敵の軍事力が上がってきており、軍人の質も上がってきている。実際永人さんが、エースパイロットでない人たちに、落とされた。多対一だったが、これは異常なことである。我が国の専用機パイロットは、敵国や、西側諸国のパイロットたちと比べ物にならないほどの技量であるとされてきた。しかし、今は我が国の軍人の技量が落ちてきている。

 任務に戻るが、今日の午後出発らしい。

 戦闘機三機、偵察用波雲一機の四機編成で飛ぶ。高度六千で飛び、敵軍港が見えてきたら高度を落として、五百で飛ぶ。

 三機は、俺の蒼燕、伊織の遥光、青葉の若葉だ。

 指揮官の部屋を出て、廊下を歩く。たまに横を通り過ぎる窓から、天気を確認する。いい天気だった。空の色が、多少薄れているが、綺麗に降りてきている。空の本当の色に近い。

 事務棟から出て、宿舎に行き、出撃まで寝ることにした。

 ベッドで横になり、窓の外を眺めていると、真っ白で不純物のない雲が、一つ見えた。それを眺めていると眠くなって、いつの間にか寝ていた。

 「…い。おーい、刹那。起きろー」

 青葉の声。目を開ける。窓の外に、さっきの雲はなかった。ずいぶん時間がたったみたいで、出撃時間の一時間ほど前だろうか。青葉はもうパイロットスーツに着替えていた。

 「今何時?」

 「二時。もうそろそろ出撃だよ」

 ベッドから起き上がる。体が軽くて、今にも飛び上がれそうだった。

 青葉は、部屋の外に出て、俺の着替えを待っていた。戦闘機や、他の軍用機に乗る際は、パイロットスーツでないとならないという、軍のルールがある。

 着替えるのが面倒くさかった。ツナギだが、ベルトなどの装備をつけなくてはいけないから、そこが面倒くさい。しかも、重いから、着替えると動くのも億劫になる。私服で乗りたい。

 着替え終わり、扉を開けて外に出た。鍵をかけて、青葉と一緒に宿舎の廊下を歩く。

 「ほら、吸う?」

 青葉が。俺の目の前に煙草の箱を出してきて、「一本取れ」と言わんばかりに振っている。

 「フライト前だぞ?」

 「いいの。まだ一時間もあるんだから」

 彼女は、もう咥えていた。俺も一本とり、咥えて、ポケットからライターを出し、火をつけた。すると、青葉は「火」と、咥えている煙草を突き出した。

 火をつけると、彼女は顔を引っ込めた。

 煙を吸い、虚空に吐き出すと、パイロットスーツへのイラつきも、少しは納まる気がした。

 宿舎を出て、それぞれ格納庫の方へ向かった。まだ煙草は半分ほど残っている。

 格納庫へ続く道は、遠く感じられた。


いかがでしたでしょうか?まだまだ拙いですが、どうぞよろしくおねがいします!

次回はいよいよ2回目のフライトです。そして青葉は初フライトです!

どうぞお楽しみに

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