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一週間が経った。只今、全身筋肉痛中。
今、戦えと言われたら即殺になりそう・・・。
だけど休むことの不安が、筋肉痛の身体を
無理やり動かす。
ここは異世界なのかも・・・言葉が通じるし
見た限り、同じ人間ばかりだったから
そこまで突拍子の無いことではないはずと
思いながらも、こっそり
「ステータスオープン」
とか言ってみたけど何の反応もなく、さらにパシムに
「何だ?そのすてーととかって」
と突っ込まれ、聞かれた恥ずかしさで悶えた。
地獄耳め!
親は心配してるんだろうか?
理子はどうしてるだろう。学校もこんなに
長く休んで卒業できるんだろうか?
せっかく理子と良い感じだったのに、なんで
こんな目にあってるんだろう。
受験までには戻れるんだろうか?
正直、今の現状に何のメドもついてないのに
考える事じゃないのかもしれないが
身体を動かしてると、嫌なことを考えなくてすむから
トレーニング中は余計な事ばかりを考えていた。
ガチャ
廊下の扉の開く音。
ジャンプしていた足を止め、身体が強張る。
一昨日、パシムが出て行ってた。順番があるのか
分からないけど、俺か?
案の定、俺の部屋の鍵の音。
なんて間が悪いんだろう・・・このくたくたな
筋肉痛の状態でするのか・・・。
一昨日のパシムの後、一日おいて来なかったから
大丈夫なのかと、今日また再開してしまった自分の
浅はかさを呪う。
「ジュン!絶対帰ってこいよ!お前なら大丈夫だ!
勝てる!!」
今日もまた大きな声で叫び、案内人に文句を
言われている。
パシムありがとう。頑張るよ。
武具を選ぶ部屋。
この間の鎧、今日着けられるだろうか。だけど
あれが無かったら、わき腹の一撃で死んでいた。
兜も盾も無いととても不安になる。
結局、この間の格好。
だけど、筋トレをしていた直後の身体には、余計に
辛い重さに感じた。
前の人の祝福が済み、待つ時間が出来る。
少しでも良いから休みたい。
その場にどかっと座り込み目を閉じた。
少しでも休むために。
寝れるものなら5分でも10分でも寝てしまいたい。そう思ったが・・・。
この心臓の動きじゃ寝るなんて無理だな、と
早鐘を打つような心臓に、休むどころが緊張感ばかり
増していった。
対峙した相手は、2mの鉄の塊。
頭から足まで鎧になっている。あんな足につける
鎧なんてあったんだ?
確かに、丈夫そうってだけでこれを着けたが
他は何がなんだか分からなかったから
見てもいなかった。
俺も着けられるようになりたいな、あれ・・・。
って、どうやって倒したらいいんだ?あんなの。
ガァーン!
考えているうちに名前も告げられていたらしい。
始まりだした。
相手がこっちに向かってくる。が、少し動きが遅い?
そりゃそうか、あれだけ鉄の塊なら重いよな。
逃げられるかもという気持ちは、一瞬で終わった。
俺も重かったんだ・・・。
相手の一撃目、大きく振りかぶりからの打ち下ろし!
盾を頭の上に持っていき、力を込めて受け止める
体勢をとった。
ガツン!!
重い!そういえば剣がデカイ!
俺は片手で持つ剣なのに、向こうは両手で持つ
デカイ剣だ!
受け止めた剣の重さと衝撃に、思わず片膝をつき
剣を持つ手でも盾を支える。
こんなの、何回も叩きつけられたら
たまったもんじゃない!
2撃目を出そうと振り上げたのを見て横に
走り出した。
それを見た相手は、振り上げた剣を横に回すように
払って背中を狙う。
動きが緩慢なおかげで、振り向き盾を構えるまでは
間に合った。が、遠心力のついた払い切りの威力に
なぎ倒される。
ものすごい衝撃。
切られないまでも、骨が砕けたかと思うような衝撃。
ゆっくり近づく相手を見上げ、どうしたらいいか
決められずにいた。
三撃目の振り下ろし。横に転がり避ける。
ガツーン!と地面に叩きつけた衝撃音が大きく響く。
このままじゃだめだ・・・叩きつけられ続けたら
身体が持たない。
どうする?
一つだけ案は浮かんでいたが、とても正気では
選べない案。
何とかそれ以外の案を模索する。が、迷ってる時間は
くれそうにない。
続けざまの一撃は、まだ立ち上がり切っていない
俺に対し、地面すれすれを払うような切り。
ゴルフスイングのような一撃を盾で受け止めたが
殺しきれずボールのように転がる。
勢いで転がれたおかげ?で相手と距離が出来た。
立ち上がり相手と対峙。
荒い息づかいが兜の中に響く。
このままじゃ殺される・・・。
近づく相手。どうする?どうする?