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&ファイト  作者: もみじ
13/96

セジア王城に隣接する、白く背の高い塔。

セジア王城に並び、横の大きさもある王城と違い

シンプルに美しく、高くそびえ立つ。

所々に細かな装飾を施す美しい外観は荘厳で

訪れるものに神秘的な雰囲気を印象させる。

各地にある、戦女神アルテアを信仰神とする

寺院の総本山、セジア寺院である。

王城内とは1つの通路で繋がるため、王城を出ることなく

寺院と行き来出来る。

セスは王城での仕事の為、朝からこの通路を渡り

城内に入るのが日課だ。

今朝もまた、いつものように通路を渡っていると

1人通路に佇む人がいた。

セスはその人物に気付くと、後ろを歩いていた

修道士たちに一つ二つ指示を出し、先に行くように

促した。

「こんな所でお待ちいただかなくとも、ご用件があれば

私の方から伺いましたが。」

「ちょっと、誰もいない所で話があって。」

王女シンシアである。

「こんな所で話さなくてはいけない話とは

いったい?」

一呼吸置き、シンシアは意を決した表情をして

話し出した。

「お願いがあるの。私にヒールの魔法を教えて。」

「ヒール、ですか。

それは修道士になりたいとか・・・そういうことでは

ないようですね。理由を伺っても?」

「・・・あの方の治療がしたいの。今のままでは

どんどん厳しくなって、このままでは・・・。

それだけは見たくないから。」

「ですが、治療であればうちの者たちでも

キチンと治し切ってますが。」

「そうだけど!それは分かってるけど・・・

何もしないままでいられないの。

・・・私は、剣技には自信がある。

その辺の闘士にも負けない技量はあると思ってる。

だから・・・。」

なるほど、とセスは納得した。

「治療の際に助言をしようと?」

「・・・それが、良いことなのかは分からないけど。

お願いできないかな。」

そこまで聞くとセスは、はぁ・・・と深くため息を

一つついた。

こちらを真っ直ぐに見つめるエメラルドの瞳。

幼い頃から見続けてきた。

この意思を込めた瞳でいる時の彼女は、何を言っても

曲がらないと分かっている。

きっと、この申し出を断っても何かしらの方法で

彼と接触しようと思案するだろう。それならば

自分が理解してる行動にしてもらえた方が

安心か・・・。

「内緒ですよ?

シンシア様を、1人の男性の為にそんなこと

させたなんて知れたら、王が何を言う事か。」

「もちろん!ありがとうセス!」

「その代わり、一つ条件があります。」

「条件?」

「はい。ずっと王がシンシア様に剣技を教えたく

試技場でご自身の鍛錬の際も、シンシア様が来ないか

待っています。

言葉にはしませんがね。

なので、王と鍛錬をされて下さい。これは、助言を

したいと思ってるシンシア様の為にもなると

思います。」

「分かったわ。必ず行きます。」

「では、今宵寺院の聖堂にいらして下さい。」



昼の鐘がなる。

パシムが昼飯だ!と叫ぶ。

毎日のことだ。

あいつにとって叫ぶのは、必要なことなのだろう。

朝、昼、晩と食事の鐘のたびに叫ぶ。

ふと、家で飼っていた「べにまる」がご飯の時

すごい尻尾をふってワンワン鳴くのを思い出し

パシムもしそうと思ったら、声を出すのを堪えて

笑った。

しばらくして、案内人が昼食を運んできてくれた。

今日は3日に一度、服の入れ替えの日でもある。

3日分の服を持ってきてくれて、着替えた服を

持って行ってくれる。

いつものように扉が開き、入り口脇にあるテーブルに

食事を置いてくれた後、着替えを持って寝台の上に

置きに来る。

と、いきなり案内人がつまづいた。

危ない!と、前のめりに倒れそうになる案内人を

支えるように腕を伸ばす。

予想していたより軽い重さ。支えたその手のひらが

柔らかい何かを掴んだ。

「ん?・・・んん?」

固まる空気。

凄まじい勢いで身を引く案内人。

声にならない、言葉にならない何かを発しながら

凄まじい速度で、着替え済みの服をふんだくって部屋を

出て行った。

それを見送った後も、固まったままの俺。

(え?・・・女の子??

・・・うわー!!やらかしたー!

でも、見た目ローブだし深くフード被るから

顔見えないしほとんど喋らないし

分からなかったんだよー!

不可抗力だー!!)

おそらく隣で、パシムの昼食の準備をしてるだろうから

叫びそうになるのを堪え、心の中で言い訳を

叫びまくりながら悶えまくる。

しばらく寝台の上をゴロゴロ転がり、やっと

落ち着いてきた。

ふと、感触を思い出し、手のひらを見つめる。

ふんわり温かなものが、手のひらに収まる感触を

思い返し、また悶えた。


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